第一章
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百万の兵
大谷吉継は羽柴秀吉に見出され彼の家臣となった、秀吉はいつも彼を見てこう言った。
「御主は見事じゃ」
「いえ、それは」
「いや、謙遜することはない」
こう彼にだ、笑顔で言うのだった。
「まことのことじゃからな」
「有り難き御言葉」
「御主ならな」
大谷ならばというのだ。
「大事を任せられる」
「それがしならですか」
「佐吉と御主の二人なら」
石田三成、彼も忘れずに言う秀吉だった。石田もまた彼にとって欠かせぬ者になっていたのである。
「天下を支えられるわ」
「それがしと佐吉で」
「そうじゃ、これからも宜しく頼む」
微笑みだ、大谷に言う秀吉だった。
「天下の為にな」
「畏まりました」
大谷は秀吉のその言葉に応えた、そしてだった。
天下は統一されて暫くしてからだ、秀吉は明を攻めることを宣言した。そうしてまずは大軍を李氏朝鮮に送った。
この際大軍の兵糧と武具が問題になった、それを動かす者にだ。
秀吉は大谷を命じた、これには誰もが驚いた。
「桂松殿をですか」
「あの方に任せるのですか」
「そうじゃ、あ奴にじゃ」
その通りだとだ、秀吉は驚く家臣達に微笑んで答えるのだった。
「軍の兵糧や武具を任せる」
「その後ろをですか」
「全て」
「そうじゃ、あ奴なら出来る」
こうも言う秀吉だった。
「このことがな」
「しかしです」
ここでだ、豊臣家の家臣の一人が秀吉に言った。
「桂松殿は」
「まだ若いというのじゃな」
「はい、ですから」
「いや、あ奴の力ならな」
「それが出来ますか」
「小竹に比するわ」
そうした仕事についてはとだ、秀吉は先に亡くなった己の弟の名前も出した。その時すっと秀吉の目に悲しみも宿った。
「御主達はあ奴が若くしかも病を得ているから言うのじゃな」
「はい、あの病は」
「どうにも」
「業病は厄介じゃ」
秀吉も彼の病のことはわかっている、しかしだった。
大谷の力をわかっているが故にだ、こうも言うのだった。
「しかしあ奴しかおらぬ」
「それで、ですか」
「ここは」
「うむ、あ奴に任せる」
こう言ってだった、秀吉は大谷に大軍の兵糧等を任せるのだった。そうしてだった。
実際にだ、大谷は遠い場所に出陣した大軍の兵糧なり武具なりを全て用意してみせた。海を渡った彼等にだ。
無事に兵糧や武具が届けられ彼等は見事に戦えた、それでだった。
実際に戦う加藤清正もだ、こう言うのだった。
「兵糧の奉行は桂松だったのう」
「はい、あの方です」
「あの方が勤めておられます」
加藤の家臣達がだ、彼にその通りだと答えた。
「それで、です」
「兵糧も武具も届けられています」
「やりおるな」
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