「銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)」の感想

Mckee
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良い点
始めまして。新しく読者に入れて頂きます。
宜しくお願い致します。

田中芳樹先生の銀英伝っぽさが良く出ていて大変面白いです。
なにより、本当に銀英伝がお好きなのが、作品の隅々から伝わります。
「そう言えば、本編にこんなエピソードあったよなぁ~」とか「よく覚えてるなぁ~」と感心させていただく事が度々あります。

ページの分量や設定、行の区切り方も、読みやすく軽快に展開が追えて一度に10話位ずつ読める点も心地よいです。
また、それぞれの人物が見た状況が展開に応じて語られる点、賛否はあるかと思いますが私は「新しい読み物」の分野という事で良いのではないかと思います。
CGアニメのような感覚で捉えて読ませていただいています。


 
悪い点
軍事に対する点がちょっと「お粗末」な気がします。
銀英伝の魅力の一つに田中先生の軍事史への拘りというか素養の研鑽の結果があるかと思います。
勿論、田中先生の軍事・戦略の基礎知識にも「机上の何とか」的な部分があり趙括将軍や馬謖みたいと思うこともありましたが、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝のエーリッヒの軍略は本当に「強運の将軍」と言う印象です。

一例ですが防衛省や軍務省などの課長は大体が中佐か大佐クラスです。
局長とか外局の長で将官というのが通常です。
尉官(特に中尉)の英訳であるLieutenantは警察武官では警部補という事になります。
軍務省本庁の課長補佐なら、おそらくは少佐とか大尉くらいの筈で、准将なら局長とか局長補佐くらいです。

ヴァンフリート星域の会戦でも、帝国軍は優勢な兵力であり且つ主人公エーリッヒは最弱部隊と敵味方に思われているグリンメルスハウゼン艦隊の中に、銀河最精鋭のラインハルトが居てる事を知っている訳ですから、ここは斜形陣、もしくはこちらも凸陣(魚鱗陣とも言います)を敷きラインハルトの前に重厚な艦隊陣を配置して敵の主力を引き付け、別翼を以って包囲網を完成させるべきです。
(カンネーの戦いのハンニバル将軍の戦法の変形型&ワーテルローの戦いの応用&孫臏の競馬戦略)

それに、軍団の「高速移動」と言うのは非常に難しく精鋭部隊でもなかなか実行しにくい物です。
それを軍内で最弱との評判高いグリンメルスハウゼン艦隊が全軍の三分の一の軍勢を率いて行えば名将のラインハルト勢は順調に展開し、その他の多くはバラバラになって各個撃破される可能性が非常に大です。

ここはヤン・ウェンリーの格言「より費用対効果の効率よく味方を犠牲にするのが軍略のポイント」のままに、グリンメルスハウゼン艦隊の70%を壊滅させるつもりで敵主力翼をここ(自軍最弱翼)に引き付け、敵主力が疲れきったところを天才ラインハルト勢とヴァレンシュタインの旗艦部隊で支えて、その間に全球包囲殲滅作戦にでればカンネーの再現は充分に可能です。
(でも、そうするとこの会戦の同盟軍は90%以上全滅してしまうんですけどね。ラインハルトやヴァレンシュタインがハンニバル並みの用兵の天才だとすれば、ザマの会戦のように逃げ帰れる同盟軍艦船は数隻です。それはそれで困りますよね・・・。因みに史上有名なザマの戦いで天才ハンニバルを打ち破ったスキピオ・アフリカヌス将軍はこのカンネーの会戦の極めて稀な生き残りの一人です。ヤンも逃げ帰れるかな?)

最後に物語の流れとして銀河一の英雄児ラインハルトとヴァレンシュタインが功名を競う形になったのはどうでしょう?
 
コメント
幾分の気にかかる処は、好みの問題と言う事も出来ると思います。
全体としては、銀英伝のパラレルワールドとして面白く且つ巧妙に構築されている作品で楽しく読ませて頂いています。

まだ、四分の一も読みきっていませんが、外伝もあるようでたのしみです。

世界観や人物設定大変なご苦労とおもいますが、がんばって頂けることを心から期待しています。