万華鏡
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第八十三話 卒業式に向けてその四
その授業の午前が終わってからだ、琴乃は昼食の時間にいつものメンバーと集まってそこでこう言うのだった。
「バンドとアイドルってね」
「また急にどうしたの?」
景子が琴乃に問う。
「一体」
「いや、クラスで話してたけれど」
「それでなの」
「そう、バンドってアイドルになるのかどうか」
「そうしたことを話してたの」
「なるのかしら」
首を傾げさせてだ、琴乃は述べた。
「そこは」
「そう言われると」
景子はうどんをすすりながら琴乃のその言葉に応えた。
「ちょっとね」
「わからないのね」
「どうなのかしら」
景子もだ、わからないといった顔と言葉だった。うどんの中に入れた唐辛子の辛さを味わいながらの言葉である。
「実際ね」
「そのことは曖昧よね」
「どうにもね」
そうだとだ、琴乃に言うのだった。
「私もわからないわ」
「バンドはバンド、いや」
美優も言ってから疑問形になってしまった。
「そう言うにはな」
「ちょっと、よね」
「はっきりしないよな」
「ゾーンとかね」
「そうそう、ゾーンな」
美優もこのバンドの名前に応える。
「あのグループもあるしな」
「ジャニーズだってバンドやるし」
「あそこだってな」
「アイドルがバンドやってもね」
「別にいいしな」
「それでいい演奏だったらね」
「問題なしだよ」
美優は琴乃にはっきりと答えた、演奏については。
「それでな」
「そうよね、けれど」
「バンドはアイドルか、っていうと」
「難しいところよね」
「あたしもな」
美優びしてもとだ、難しい顔で言う。
「そこんところはな」
「わからないのね」
「ちょっとな」
こう琴乃に言うのだった。
「アイドルがバンドをすることがあって」
「バンドがアイドルになっても」
「特にな」
これといって、というのだ。
「決まりもないしな」
「それじゃあ」
「まあどっちでもいいとかか?」
美優は考えながら述べた。
「やっぱり」
「そうなるの?」
「いや、そうなるかっていうと」
「はっきり言えないのね」
「どうにもな」
そうだというのだ。
「よくわからないよ」
「そうなのね」
「ああ、ちょっとな」
美優はわからないままだった、そして他の面々もだった。彩夏もわからないといった顔でラーメンのナルトを箸で掴みつつ言った。
「私もね」
「彩夏ちゃんもなの」
「どうもね、そう聞かれても」
「わからないのね」
「極論すれば誰でもバンドしていいでしょ」
「ええ、本当に誰でもね」
少なくとも日本ではそうだ。
「北朝鮮ならともかく」
「あそこは何でも歌には絶対将軍様とか入れないといけないらしいしね」
「歌詞もね」
それもだった。
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