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東方変形葉

作者:月の部屋
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全国10カ所の妖気
  東方変形葉45話「終結、少年の過去話」

 
前書き
魔理沙「・・・紫の結界に、これは早苗のスペカか?」
神奈子「おかげでこの黒いのが膨れ上がることも攻撃してくることもないな。」
フラン「今、お兄ちゃんと霊夢がこの中にいる妖怪と戦っているんだよね?」
レミリア「そうね。まあ一人ならともかく二人いるんだしせっせと片づけてくるでしょうね。」
諏訪子「・・・うまくいくといいんだけどねえ。」
 

 
「くっ!!」
「なんてやつなの。」
俺達は今、追い込まれている。
『激変星よ!奴らに爆発を喰らわせよ!』
ぽーんと赤い球が飛んできた。すると、それはとんでもない威力の爆発を起こした。
「『警醒陣』!」
「『金剛結界』!」
爆発を何とか防ぐことはできたが、かなり威力が強かったためか腕がしびれた。
「“神力と大爆発の比例変化”!」

大変化「無と有の境界」

大爆発が連鎖して妖怪を襲う。妖力のガードで防いでいるようだが、こればっかりは通用しない。
『なっ!?なんだと!?』
妖力のガードは瞬く間にひびがいき、そして破られた。
『があああぁあぁあぁああ!!』
悲鳴が響き渡る。
「くっ、やったか!?」
「・・・まだよ!」
煙の中からゆらりと妖怪が現れた。
「きゃっ!!」
「霊夢!」
霊夢が速すぎる体当たりに飛ばされた。どうやら、敵を一人に絞ったようだ。
「このっ!『拡散アミュレット!』」
正方形の御札のようなものが妖怪に向けて放たれる。しかし、それを受けても霊夢に向けて走って行く。
妖怪は霊夢を蹴り飛ばすと、
『彗星よ!紅白の巫女に落ちろ!』
目にとまらぬ速さで霊夢に彗星型の巨大な光弾が落ちた。あんなの喰らったらひとたまりもない。・・・?どういうことだ?さっきから霊夢の気配が感じられない。
煙が晴れると、霊夢が立っていた。妖怪は舌打ちをし、
『流星よ!降り注げ!』
霊夢に流星の豪雨を降らせた。しかし、霊夢には効いていない。攻撃が体をすり抜けていく。あの能力が発動した霊夢にもう誰にも勝つことはできない。
『な、なんだと!?あれだけ喰らって平然として!?』
「あんた、少しうっさいのよ。黙ってなさい。」

「夢想天生」

陰陽玉が7つ霊夢の横に現れ、それが高速でくるくると回りだし、そして爆発したかのように大量の御札を放っている。妖怪はそれをまともに喰らってしまっている。
『がああああぁあぁあああ!』
妖怪は倒れ込んだ。なんだか、前より威力が上がっているような気がする。
妖怪は身動きできないようだ。妖力も根こそぎ無くなっている。空の星々は次々と消えていく。
『がっ・・・ふふ、さすがは博麗の巫女。やはり絶対に負けることはないというのはデマではなかったか。そこの少年も、よくわからないがとんでもない力を持っているな。』
妖怪の体は光に包まれていく。そして、空の星々が全部消えるころ、妖怪は静かに消滅した。
「おわっ・・・た。」
ぐらりと、霊夢の体が傾いていく。それをなんとか受け止めた。顔を覗き込んでみると、霊夢はかわいい寝顔をしてすやすやと眠っていた。
「ふう、仕方ない。」
霊夢を背負い、闇に包まれたこの世界から抜け出した。



「「「「「「おかえり!」」」」」」
闇の空間から抜け出すと、数十人が出迎えた。
「ただいま。それと、霊夢が今疲れ切って寝ているから静かにね。」
そういうと、全員がしまった!みたいな顔をした。そのとき、俺の意識が薄くなり始めた。ぐらっとなってそこからの記憶はなかった。



・・・太陽の光が差してきた。その光は瞼の上からでも眩しく照らし、俺を目覚めさせた。
「ん・・・」
目を開けた。周りがチカチカする。見慣れぬ天井。しかし見覚えのある天井。ここは何処だろう。
「あっ!目を覚ましたんだね!」
可愛らしく、大きな声が響く。声のした方を見ると、姫雪が正座で俺の傍に座っていた。そしてがばっと飛びついてきた。
「俺、何日眠ってたんだ?」
「二週間」
「えっ!?」
「うふふ、嘘。え~っと、ひぃふぅみぃ・・・三日間だよ。」
そういった後鼻にキスをして姫雪は立ち上がり、部屋の外へと走って行った。しばらくすると、何人かががあわてて走ってきた。真っ先に人形たちが俺の懐に飛び込んできた。
「大丈夫なの!?裕海様!」
「だいじょうぶ!?」
「ああ、もう大丈夫だよ。」
「まったく、あなたは疲れに弱いみたいね。何度一日以上寝込めば気が済むのよ。」
紫が半ばあきれたように言った。
「あ、あはは。」
俺は抱きついている姫雪を抱き枕のように抱え、少し苦しげに笑った。
「聞いた話ではまた外の世界に戻って作業をしてから戻ってくるのよね?」
「ああ、そうだね。確認だけだから場合によってはすぐに帰れるかもしれないけどね。」
霊夢が確認をとってきたので答えた。
「外の世界のお土産、楽しみにしてるわよ。」
「はいはい。みんなに良いもの買ってくるよ。」
京都の店ならきっといいものが売っているに違いない。京都の名物ってなんだっけ?八ツ橋とかかな。
「体が回復したらみんなに挨拶して回ってまた行ってくるよ。」
「ねえねえ、裕海様!今日は私たちが裕海様のためにお昼ご飯を作るね!」
「楽しみにしててね!」
人形たちがきゃっきゃとはしゃいだ。
「料理できるの?」
「私が教えましたよ。」
すっと横に咲夜が現れた。唐突に現れるのにはもう慣れた。
「ありがとう、咲夜。あっ!そうだ!2人とも、ちょっと来て。」
「な~に?」
「なになに~?」
人形たちに手を出してもらい、その手を持つ。そしてその手は黄金の光に包まれた。
「能力を元に戻したよ。」
にこやかな笑顔で人形たちは頭に乗った。
「明日にはもう回復するでしょうから、今日は神社に泊ってから挨拶に回りに行きなさい。」
永琳が言った。あ、ここって神社だったのか。
「宴会は裕海がまた帰ってきてからだな!いや~、外の世界の宴会の材料を楽しみにしてるからね!」
「・・・萃香、まさか俺一人にそんな大出費させるわけじゃないよね?」
「え~?人形師って儲かるんじゃないの~?」
「・・・ぼちぼちかな。でも、ちょっとぐらいは払ってもらうからね。でないと、せっかく帰ってきたのに金欠なんていう悲しいことが起きるから。」
心の中ではっきり言おう。実は儲かってる。人形って意外と高く売れるらしく、売上金額の一部だけでも一般の平均年収の3倍ぐらいある。だけどそんなことを言ったらきっと宴会のたびに食費をすべてを任せられてしまうので控える。
「とにかく、今日一日は安静に過ごしなさい。あとこれ。」
「・・・ぶどう酢?」
紫がスキマから一本の瓶を取り出した。そこにはぶどう酢と書かれている。
「これをつかれた時に薄めて飲みなさい。そうすれば疲れが吹っ飛ぶわよ。」
「そーなのかー。ありがとう、紫。」
酢ってことはクエン酸がたくさん含まれているのか。クエン酸が疲れを飛ばすんだっけ?風邪にもよさそうだ。
「さあ早く寝て寝て!」
抱えていた姫雪が体をこちらに向きを変え、さらに人形たちも加わり、3人が強引に布団に押し倒した。すると、すぐに深い眠りの中へともぐりこんだ。



「たまに、あの子が私よりも年下だっていうことを忘れちゃうわね。」
「あら、それは自分の精神年齢の幼さを自覚したいたぁっ!」
私がつぶやくと、なんか紫がおかしなことを言ったので御札で黙らせる。
「いたた・・・。まあ、育ってきた環境がほんの少し違うだけよ。」
「?どういうことよ。」
「教えてあげる。あの子の過去を。」


あるところに、一人の赤ん坊が生まれました。ごく普通な家のその子は、とても元気がよく、すくすくと育って行きました。
あるとき、3歳の幼い少年がおもちゃで遊んでいました。すると、そのおもちゃが原型をとどめないほどに変化してしまいました。その瞬間を偶然、その子の両親が見ていました。幻覚かと2人は思いましたが、同じようなことが何度も起こりました。
両親は、その子をあまり外に出さないようにしました。素直で単純で無垢な幼い少年は両親が自分を少しさけているような感じを受け、とてもショックを受けました。親が見せる優しい笑顔も、実は猫をかぶっているだけだと幼い少年はわかっていたのです。
少年は必死に考えました。とても小さく、そして知識のほとんどない頭で。そして数年後、あることがきっかけにある結論に至りました。
あることとは、少年が幼稚園・・・あ、霊夢には分からないか。幼児の寺子屋みたいなところのことよ。そこに通い始めた数ヶ月後のことです。少年がおもちゃを手に取り、仲良くなった子と遊んでいました。すると、突然そのおもちゃが原型をとどめないほどにぐにゃぐにゃになってしまいました。それに驚いた子たちは、すぐさま少年から遠ざかりました。
このとき、少年は全てが分かったのです。自分には恐ろしい力があるということが。それはいつか人を傷つけてしまうような力が。
そのころから、少年は人とのかかわりをできるだけ避け、友達は作らず、どんなに遊びたいと思っても必死で我慢していました。
ある程度知識を持った少年は、自分がおかしな力を持っていることに気が付かれないように、必要最低限の人との交流を避けていました。少年は表では明るい表情を見せていましたが、裏では心を固く閉ざしていました。
そんな生活が続き、少年は中学・・・比較的難しい内容の寺子屋のことね。そこに入学した次の日のことでした。
少年の両親が、謎の死を迎えてしまったのです。
少年は児童養護施設に入れられることを勧められましたが、少年はそれを拒否し、もともと手先が器用だったために人形を作ってお金を稼ぎ、それに加えて親の遺産を受け継いで一人で暮らしていました。


「―――ということよ。少年は人に甘えることを知らなかった。ここに来るまではね。」
「・・・そうだったの。」
とても残酷な昔話だ。私より年が離れているというのに、そんな苦汁の日々の中を暮らし、しかもその生活に慣れてしまっていたとは。人を傷つけたくないという極めて善良な心を持つ人間がどうしてそのようなつらい経験の中を生きているのか。
「・・・今の話、本当?」
いつの間にか、姫雪が近くにいた。少し目が潤い、今にも涙を流しだしそうな雰囲気を出していた。
「・・・ええ、本当よ。あの子はここに来てからゆっくりと心を開きつつあるけれど、まだ人に甘えるような感情は封印されたままね。だから、私たちがしっかりとあの子の心が完全に開くようにしていかなきゃいけないわ。」
紫が優しい口調で姫雪に言う。今でこそ、能力を使い慣れているようだが、どうやらまだ過去のことが根強く残っているようだ。
裕海が来てからもう五か月になろうとしている。かなり積もった雪は融け始め、時より小春日和が顔を出す。もうすぐ春になるようだ。



人形たちが懸命に作ったご飯を食べた後、また深い眠りについた。そして今、目が覚めた。障子が赤く染まっているのを見て、今は夕方だと無意識にわかった。それにしても、人形たちの料理は美味しかったな。さすが咲夜が教えただけある。
「さてと、水でも飲むかな・・・あれ?」
布団をめくると、姫雪が眠っていた。俺の寝巻の端をギュッとつかみ、離そうとしない。なぜか姫雪の頬は涙が流れた跡があった。怖い夢でも見たのだろうか。そういや、食事の時姫雪はずっと薄暗い顔をしていたな。午前中に見た夢がそれほど怖かったのだろう。そっと抱くと、姫雪は安心したかのような顔を浮かべた。
前まではこんな生活ができるなんて考えもしていなかったな。俺は少しだけ笑いをこぼし、再び眠りの中に入って行った。



続く
 
 

 
後書き
45話です。
裕海の過去を書きました。
次回より秘封倶楽部との活動が再開されますが、話数は短くなると思います。
 
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