魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Myth9そして時代の針は動きだす~Quo Moriture RuiS~
前書き
Quo moriture ruiS/クゥォー・モリトゥーレ・ルイス/どこに急ぐのだ、死に逝く者よ
†††Sideオーディン†††
戦船ティルピッツをイロウエルで真っ二つにへし折り、残りのデアフリンガーの砲撃が放たれる前に脱出に成功。イロウエルを解除して消滅させた後、デアフリンガーは砲撃を放ってきてティルピッツにトドメを刺しに来た。
衝撃波や爆炎、破片などの物理攻撃で私をどうにかしようと考えたんだろうが無駄な事。空戦形態ヘルモーズを発動し、すぐさま衝撃波や弾け飛んで来る破片の効果範囲より離脱している。デアフリンガーへ向かう前に、シグナム達やクラウスに連絡しておいた方が良いな、カスティタスの事を。
『こちらグラオベン・オルデンのオーディン。アムルを守る巨像は私オーディンの使い魔である。名をアンゲルス・カスティタス。だから警戒せず、各々安心して目の前の敵に集中してほしい』
デアフリンガーより放たれてくる砲撃を回避しながら思念通話を送る。するとクラウスから『アレがあなたの使い魔ですかっ!?』と、心底驚愕しているような声色で返してきた。今のクラウスの顔を想像してしまって小さく笑ってしまうが、コホンと咳払いした後に『ああ。だから攻撃しないように――って、戦船ではないようだから大丈夫か』と返す。クラウスはちゃんと私の要望を聞いてくれたんだな。
――知らしめよ、汝の忠誠――
念のために魔力消費の少ない魔力刃生成術式アブディエルを150m程の長さで発動し、デアフリンガーの艦体側面に並ぶ砲台に向け一閃。障壁ごと砲台を斬り裂き、無力化する。そうする事で私に向けられる砲撃の数が激減した。早々に艦内に侵入し、動力炉から魔力を頂戴しないと。あまり消費したくないからな、これ以上は。
『ええ。オーディンさんの要望ですから。ですが・・・あの巨大な像が使い魔・・・。貴方には本当に驚かされてばかりだ』
『飽きないだろ?・・・・私はこのまま最後の1隻を撃沈させる。地上はグラオベン・オルデンと国境防衛・近衛混合騎士団が頑張って数を減らしてくれているが、まだ増えるし、投降してきた捕虜の見張りや連行にも人員が割かれている。それに――』
『この騎士団を率いている将、ですね』
『そういう事だ。これほどの大騎士団。率いている将はよほどの地位を担っていると見ていい。クラウス、行けるか?』
『もちろんです。元より僕も出陣するつもりでしたから。では戦場で会いましょう』
『ああ。道づくりは任せてくれ』
クラウスとの思念通話が切れる。「我が手に携えしは確かなる幻想」と詠唱。固有魔術より魔力消費の少ない複製術式をスタンバイ。私の周囲13ヶ所に魔力を集束させていく。集束砲、と呼ばれるミッドチルダ式の魔法。
今より使う術式のオリジナルの使い手の名は、高町なのは。術式はもちろん私用にイジってある。ターゲットを確認。3発をデアフリンガーへ。残りは地上。シュトゥラとイリュリアの両騎士団が衝突している最前線に向かって来ているイリュリアの増援へ。
――スターライトブレイカー・エクステンドバースト――
「行けッ!!」
ブレイカーを発射。デアフリンガーの砲撃を粉砕しながら3発が着弾し、デアフリンガーの外壁を爆発破砕。残り10発も増援部隊に着弾。固有魔術よりかは威力は劣るが十二分に効果を発揮し、粉塵が晴れたその場には倒れ伏したイリュリア騎士団が百何十人と。
「・・・・さすがなのはのブレイカー。いつ見ても清々しいほどの威力だな」
さてと。地上の疲弊を少しでも和らげることが出来たはずだし、デアフリンガーへと魔力泥棒に行くか。進路を改めてデアフリンガーへと移し、アギト達グラオベン・オルデンのみに思念通話を繋げる。
†††Sideオーディン⇒ヴィータ†††
あのデッケェのがオーディンの使い魔、か。なんつうか「すげぇ」よな。てかアレって生物か?んわなけねぇよな。どう見ても石像だしな。敵をぶっ倒しながら、空に浮くアンゲルス・カスティタスって奴をチラチラ見る。オーディンかぁ。本当に何者なんだろうな。疑うわけじゃないけど、ここまですごいとなんて言うか・・・気になっちまう。
『アギト、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。すでに見知っていると思うが、闇の書の管制人格を起動した』
ああ、判ってる。さっき空でアイツの魔法、デアボリック・エミッションが発動したのが見えた。それに地上に降りて、敵を張りきってぶっ飛ばしているのが離れていても判る。オーディンから続けて『彼女に名が無いのは君たちから聞いていたからな。だから名付けさせてもらった』って、なんつうか羨ましく思ってしまう事を言われた。
『主オーディンから賜った私の名は、支天の翼シュリエルリート。シュリエルだ、皆、これからよろしく頼む』
アイツからも思念通話。シグナムがまず『そうか。ではよろしく頼む、シュリエル』って挨拶を返して、シャマルも『よろしくね、シュリエル』、ザフィーラも『ああ、頼む。シュリエル』って返す。アギトも『よ、よろしく、シュリエル。アギトです』ってちょっと緊張気味に返した。あたしは・・・・『ふん』つい鼻を鳴らして無視しちまった。
『ヴィータちゃん・・・』
『ヴィータ!』
『よいのだ、烈火の将。これから頼むよ、紅の鉄騎』
アイツの気落ちした声。あたしは今までアイツに八つ当たりばっかしてて。悪いのはアイツじゃないって事くらい昔から理解してる。でもしゃあねぇんだ。今更アイツとどう仲良くすりゃあいいってんだ。もう判らねぇんだ、接し方が。
「クソッ! このまま良いようにやられてたまるかぁぁぁーーーーッッ!!」
あたしに向かってくるイリュリア騎士が数人。鉄球を8つ展開。“アイゼン”をハンマーフォルムに戻して、「どうすりゃいいってんだよッ!」鉄球を“アイゼン”で打つ。
――シュワルベフリーゲン――
魔力を纏わせた鉄球フリーゲンを打ち出して、迫って来ていた奴らに直撃させて甲冑を破壊、衝撃のまま後方に吹っ飛ばす。次の奴ッ。って周囲を見回した時、悪寒が走った。数だけで大したことない奴らばかりかと思ってたけど、今回初めてヤバい感じがした。
あんだけあたしを討とうと躍起になっていた連中が引いて行く。人垣の道が出来て、なんかデカイ狼のような奴が歩いて来たのが見て判る。つうか獣のクセして青白い鎧を纏ってんな。四肢に、背中に、頭に・・・。その狼があたしの目の前、だいたい10m先で立ち止まった。
「我は狂いたる災禍騎士団所属の獣騎士ヤークトフント・ⅩⅩⅥ。我らが騎士団長ウルリケ・デュッセルドルフ・フォン・ブラッディア卿の命により、ヤークトフント隊もこれより参戦致す」
獣が喋りやがった。あたしは「守護獣か?」って訊くと、ⅩⅩⅥは「違う。そのような立派なものではない」って笑った。足元に黒い光を放つベルカ魔法陣を展開したあと、「技術部によって生み出された獣型生体魔導兵器だ」って言い終えると、頭を覆う兜がパカッと開いた。
「な・・っ?」
目を疑う。額には若い男の顔があった。しかも「驚かれたか」って口を開けて喋ってやがる。今まであたしと話してたのは狼の方じゃなくて額の人間の顔の方だったわけだ。
「気持ち悪ぃな。つうか見てて哀れに思えちまうよ、そんな姿で生み出されてな・・・!」
――シュワルベフリーゲン――
心底同情しながらフリーゲンを様子見で4発放つ。ⅩⅩⅥは「哀れ、か。元は人間であった我だが、こうして再び戦場へ立つ事が出来るとなれば姿形などどうでもいい」って狼の方の口を大きく開けた。
――咆哮――
黒い砲撃。横っ跳びで回避。連続で放たれてきたからさらに横っ跳びを繰り返して避け続ける。砲撃は着弾点で大きく炸裂して地面を穿っていく。なるほど。こりゃ連中が退くわけだ。石飛礫を払い除けながら考える。走るんじゃダメだ。狙い撃ちにされる。だから空へと上がる。
「元人間って・・・そんじゃお前は獣と融合されたってのかッ!」
「如何にも。しかし人だった頃、我は戦で負傷し二度と戦えない身体となって眠っているばかりだった。それが今ではどうだ。人間の身体以上に速く動けるこの狼の身体。そしてかつては空を飛べなかった我が、こうして空を翔ける事が出来る」
――翼――
ⅩⅩⅥの背中から黒い翼が生えてきて、羽ばたかせて追撃してきた。そんなんありかよ。空飛ぶ狼はザフィーラだけで十分だっつうの。砲撃を尽かすことなくぶっ放し続けてきやがる。しかも徐々に砲速が上がってるし。負けじとこっちもフリーゲンで多方向からの奇襲を仕掛ける。
「人間捨ててまでやる事かよッ、戦争なんてッ!」
「元より死を待つ身だった。ならば何もせず無駄死にするより戦って少しでも敵騎士を討ち、その果てに戦死した方が国と我が意義の為だッ! オオオオオオオオオッッ!!」
――衝撃波――
強烈な鳴き声。その声の大きさに思わず耳を塞ぐ。フリーゲンは今ので粉砕されちまうし。「貰ったッ!」って、酷い耳鳴りと頭痛の所為で揺れる視界の中に聞こえてきた奴の声。なんとか見据えて奴の姿を捉える。トドメのつもりか高速で突進してくるのが判った。
(くそっ、身体が動かし難い。しゃあねぇな・・・!)
――パンツァーヒンダネス――
手を前に翳して一点集中の防御障壁を展開。ギリギリで奴の突進攻撃の直撃を防ぐことが出来た。奴は「ぬぅ。これほど強固な障壁は初めてだ」って驚嘆しながらもヒンダネスを突破しようって押して来る。膠着状態の今の内に調子を整える。耳鳴りは少し残ってんけど頭痛や視界の揺らぎは収まった。
大きく“アイゼン”を振りかぶってカートリッジを1発ロードした後に・・・・ヒンダネスを緩めてすぐに思いっきり押し返す。と、奴はつんのめった後に障壁の打撃を鼻っ面に食らって弾かれて距離を取らざるを得なくなった。ここでヒンダネスを解除して、振りかぶっていた“アイゼン”を全力で振るう。
――フランメ・シュラーク――
着弾と同時に爆発炎上させる炎熱魔力付加の一撃。奴は咄嗟に前脚で防御姿勢を取った。その直後に直撃して爆発炎上させる。爆風に乗って空へとちょっと上がって「障壁を張らずに身体で防御って・・・もしかして無いのか、防御系の魔導が・・・?」って軽く呆れながら奴を覆い隠す煙幕を見詰める。
――咆哮――
煙幕を吹き飛ばす様に放たれてきた黒い砲撃。距離もあった事で余裕で回避。そん中で奴の姿を視認する。右の前脚が焼け落ちて無い。左の前脚は残ってっけど炭化しているからもう使えないはず。「アイゼン、ラケーテンフォルムっ」もう一度ラケーテンに変えて、
――フェアーテ――
高速移動の魔導を使って砲撃を紙一重で避けていく。砲撃を放ち続けながら突っ込んで来るⅩⅩⅥ。タイミングを見計らってブースターを点火させて「ラケーテン・・・ハンマァァーーーーッッ!!」突撃する。
奴は砲撃を途切れさせてそのまま突っ込んで来た。防御が使えない奴がラケーテンの一撃で無事で済むはずねぇ。決まればこれで決着だ。着弾――というところで、奴は信じられないことに“アイゼン”のヘッドに噛みついて防ぎやがった。
――狼牙――
普通そんな事すれば牙はへし折れるし口も吹っ飛ばされる。だけど奴はよほど運が良かったのか何ともなく止めた。あぁなるほど。魔力で強化されてる牙か。力を込めて振り切ろうとするけどガッチリ牙と牙の間に挟まって動かせねぇ・・・。
「クソっ・・・!」
「ふふふ」
「あ? 何がおかしいんだよ、テメェ」
「我が前脚を焼き潰した事で油断したか?」
「ハッ、んなわけねぇだろ」
「ならば、なぜ気付かんのだろうな」
嘲笑を込めたその言葉に、あたしは苛立ちを覚える前に周囲を確認した。
「あーくそ・・・!」
最悪。いつの間にか別の狼たちに包囲されちまってる。狼は群れで生きる生物。それに、最初からコイツは言っていた。
――ヤークトフント“隊”もこれより参戦致す――
隊っつってんだから、まぁコイツ1頭だけじゃないわな。あたしを包囲してんのは6頭。ソイツら全部が足元に黒い魔法陣を展開して、口を大きく開けた。おい、待てよ。砲撃を撃つつもりか? だってそんなことしたら目の前のコイツも・・・。
「我の代わりならいくらでも在る。が、今この場でお前を討つ事が出来るのは我とアレらだけだ。この身の犠牲でオーディンとその配下であるお前たちを討ち斃し、シュトゥラの戦力を削る事が出来るのであれば、我は喜んでこの身を投げ出し礎となろう」
奴の顔は晴れやかだった。本気でこのままあたしと心中してもいいって面だ。冗談じゃねぇぞ、そんなん。何とかして砲撃が放たれる前に脱出を試みようともがくけどビクともしねぇ。そして、「イリュリアに栄光あれッ!」ってソイツが叫んだ直後に、あたしらに向けて砲撃が六条放たれた。ここでやっと脱出法が思いついた。ギリギリ間に合・・・・わねぇッ。
「アイゼンッ、パンツァーヒンダネ――」
――コード・ケムエル――
脱出は無理と判断して、あまり良い手じゃない防御を選択しようとした時、蒼く輝く小さな円い盾が組み合わさって出来た巨大な盾が、迫って来ていた砲撃を全て防いだ。オーディンの魔導だ。でもオーディンは戦船に向かったはず。じゃあ誰が? その疑問はすぐに解ける。
真下から「はぁぁぁああああああッ!」何かが来る。アイツ――シュリエルリートだった。左脇に“闇の書”を抱え(今のはオーディンから蒐集した時に覚えた魔導だったんだ)、右拳に黒い魔力を纏わせてる。
――シュヴァルツェ・ヴィルクング――
「おごぉッ!?」
アイツの強烈な拳打を腹に受けたⅩⅩⅥがくの字に腹を折って落下し始める。あたしはと言えば、奴が口を大きく開けた事でやっと解放された。そして、アイツは周囲に深紫色の魔力球が5つ設置、「私の仲間に手を出す事は許さん・・・!」ってあたしを庇うような位置に来てからそう言って、
――ナイトメアハウル――
あたしらを包囲してる狼と同じ数の砲撃を放った。回避していく狼たちを追撃するためにまた別の魔導を発動する。あたしは「余計なマネをしやがって」ってそっぽを向いて鼻を鳴らした。素直じゃねぇよなあたしって、ホント。アイツは「すまない、紅の鉄騎。黙って見ている事が出来なかったんだ」そう謝った後、
――ブルーティガー・ドルヒ――
血色の短剣が十数基と展開されて、一斉に放たれた。高速射撃だ。デカイ図体の奴らがどれだけ空を飛べても防御が使えないんならただの的だ。次々と直撃していって、奴らは爆煙に包まれる。護られた。お礼を、言わないとなダメだよな、やっぱり。
本当は危なかったんだから。口を開こうとするけど、声が出ない。ただ一言礼を言うだけじゃねぇかよ。“アイゼン”の柄を握る手に力が入る。せっかく今までにない良い奴が主になったんだ。コイツだって楽しめる時間を過ごしたいに決まってんだ。だから・・・・
「まだだッ!!」
ⅩⅩⅥが口を大きく広げて真下から突撃を仕掛けて来た。アイツは6頭の方に意識を向けてるからすぐには対応できない。
「邪魔すんなよ・・・、あたしらとオーディンの時間を・・・!」
≪Explosion≫
カートリッジを2発ロードして、ギガントフォルムへと変形させる。
――ギガントハンマー――
単純な振り下ろしの一撃。つっても重量からの物理威力は絶大だ。もう一段階上があるけど、今は使うほどひっ迫してねぇから使わねぇ。鼻っ面に直撃させて、牙やら鼻骨を粉砕してやる。奴は絶叫しながらまた落下していった。追撃のフリーゲンを8発打ち放って着弾させていく。爆煙に包まれて見えないけど、無事じゃねぇはずだ。
――咆哮――
――ナイトメアハウル――
アイツはアイツで6頭の狼と砲撃合戦を繰り広げてる。そんな中「コード・ゼルエル」って言った後にまた砲撃を撃った。今度は相殺されずに粉砕して、直撃させていった。奴らもⅩⅩⅥに爆煙に覆い隠された。
アイツと背中合わせになって警戒。煙幕が晴れて、奴らは姿を現した。もう血塗れだし所々の皮が消し飛んで赤黒い肉を見せている。
「こうなれば・・・!」
足元から聞こえて見てみれば、ⅩⅩⅥが血走った眼で突撃してくる。なんかヤバい。ありゃ昔にも見た事がある眼だ。「アイゼンッ!」魔力球を生成して、フリーゲンを打ち放って奴に着弾させていくけど、怯みもせずに突撃を止めようともしねぇ。
間違いない。やっぱり捨て身の特攻だ。「連中も同じ手のようだな・・・!」アイツが漏らす。見れば他のもアイツの攻撃を受けながらも突っ込んで来ている。「紅の鉄騎。手伝ってくれないか?」って言われて、今だ、って考える。
生唾を呑んで、心の内で決意を固めてコイツの名前を呼ぶ練習をしてから、「しゃあねぇな、シュ、シュリエル」って答える。ああもう、どもっちまった。気恥ずかしさでシュリエルの顔が見れねぇ。
「紅の鉄騎・・・」
「うっせぇよっ。ほら、奴らにだけ時間ばかり使ってられねぇだろっ。とっととやっちまうぞッ!」
喜色の声で「ああッ。行こうッ」シュリエルが奴らを見据えるのを横目で見る。あたしに名前を呼ばれたのがそんなに嬉しいのか顔が緩みまくってる。こっちまで頬が緩みそうになっちまう。けど今は・・・。消費しきったカートリッジを装填。
「むっ・・・?」「――おっと!?」
と、いきなりの大爆音。衝撃波がここまで来て、吹き飛ばされそうになるのをシュリエルが手を取ってくれたから事なきを得た。「すまねぇ」って礼を言うと、「助け合うのが、家族だ」ってシュリエルは微笑む。
礼もそうだけど、今の今までお前に当たり散らしたことへの謝罪も含めたの、すまねぇ、だ。今までの謝罪としてのすまねぇはまだ面と向かって口に出すのはちょっと出来ないけど、いつかちゃんとシュリエルに言えたら・・・いいな。
奴らも今の衝撃波でよろけていて突撃を止めてた。狼の1頭が「デアフリンガーまでもが墜とされたか」って戦慄。さっきの爆音と衝撃波は、戦船が轟沈して爆発したのが発生原因だった。その直後、イリュリア方面から緑色の閃光が上がって空で炸裂した。
「退却の信号弾だと・・・!?」
ⅩⅩⅥが憎々しげに漏らす。シュリエルが「賢明な判断だな」って言う。戦船はオーディンの動きを制するためのものだって事くらいは判ってる。オーディンが空で戦船に撃墜――最低でも苦戦を強いられているその間に、圧倒的な数を誇る騎士団で押し切ろうって考えたんだろうが・・・。
ザマァ見ろ、当てが外れな。オーディンは戦船を単独で墜とすだけの火力を持っていて、その上あんな馬鹿デカイ使い魔を有してる。そして戦船を全隻撃沈したオーディンが地上へ降りてくるとなれば、連中はもう終わりだ。
「どうすんだ? 地上の騎士どもは退却を始めてんぞ」
「退くならば退け。逃げる者の背中を撃つ趣味は我らにはない。そうだな、紅の鉄騎」
「おうよ。そんな汚い真似はしねぇ。テメェらの仲間とは違ってな。正々堂々真ん前からブッ潰す」
“アイゼン”を奴らに向かって突きつけると、奴らが牙を剥いて唸りを上げる。少し膠着。そして唸るのをやめてイリュリアへ目を向けた。撤退を決めたんだな。シュトゥラ側からも緑色の閃光が上がって炸裂した。こっちも終戦連絡か。“アイゼン”を降ろそうとした時、奴らは一斉にまた目を向けてきた。
「なんだ? 目の色が変わって・・・?」
シュリエルが身構え直した。あたしも“アイゼン”を構え直す。奴らの雰囲気がガラリと変わった。また唸り声を上げながら「殺せ。殺せ。殺せ」と大合唱。
「新たにオペラツィオーン・オプファーを受諾。グラオベン・オルデンの騎士を殺害せよ。オオオオオオオッッ!!」
「「「「「「オオオオオオオッッ!!」」」」」」
奴らは雄叫びを上げて突撃してきた。本気かよ。もうボロボロじゃねぇか。また捨て身で突っ込んでくるつもりか。“生け贄”作戦って言うくらいだからな。あたしはフリーゲン、シュリエルはドルヒで迎撃開始。面白いほどに直撃していく。あ~あ、本当に自滅行為じゃねぇかよ。けど、それでも奴らは突っ込んで来る。
――自爆――
「危ないッ!」
――パンツァーシルト――
目の前に迫って来ていた奴が突然爆発した。ギリギリでシュリエルがあたしを庇って障壁を張ってくれたから何とか巻き込まれずに済んだけど・・・。コイツ「自爆しやがった!?」戦慄する。生け贄ってそういう事かよ。周囲を見回す。コイツら全員、自爆する気だ。
もう1頭が自爆した。これ以上シュリエルに負担はかけられねぇ。「お前は自分の防御に専念しろッ」って言って、全身を囲うパンツァーヒンダネスを展開、シュリエルもパンツァーガイストを発動。何とか防御に成功。2頭目の自爆。あたし自慢の障壁がたったの1発でヒビが入った。嘘だろ、おい。たった2発でもう窮地じゃねぇか、あたし。
「殺せ、殺せ、殺せ、殺せ」
さっきまであたしが相手していたⅩⅩⅥの声がすぐ近くで聞こえた。「お前・・・本当に、可哀想な奴だよな」って告げる。でもやっぱりもう理性が無いようで「殺せ」を連呼する。そして奴も、あたしの目の前で自爆した。クソが。戦って死にてぇって奴が自爆させられるって何だよ。でも、最期の攻撃であたしの障壁を破壊した。功績は生まれたけど、それが死んでからってのが愚か過ぎるぞ。
(つうかホントにヤバい。すぐに別の狼が自爆体勢に入ってやがる・・・!)
シュリエルは爆風に煽られて離れてる。ならあたし1人で防ぐ事が出来る別の防御魔法を発動しないと、消し飛ばされる。その狼から強烈な魔力が放たれる。臨界点だ。パンツァーヒンダネス以上の防御力を持つ魔導をすぐに・・・・。
(って、そんなの無ぇよッ!)
1秒としない時間での必死な思考。結果は最悪なものだ。ヒンダネスより強固な障壁なんてあたしは持ってない。でも何もしないでいるよりかは・・・そうだ。カートリッジを2発ロード。
――パンツァーシルト・パンツァーガイスト――
魔力で体を覆った上に障壁展開。直後に爆炎と爆風があたしを襲った。シルトは少しだけもって、端から砕けていく。そんな中、煙幕の切れ目から別の狼が自爆体勢に入ってんのが見えた。この状況でその自爆はまずい。馬鹿みたいな威力の自爆。食らったらあたしでも終わる。
『紅の鉄騎!』
焦りに満ちたシュリエルの思念通話に、『自分の心配してろッ!』って返す。アイツだってこんな攻撃を喰らったら無事じゃ済まねぇはずだ。つっても本音じゃ助けてほしいって思う。オーディンの魔導ならきっと耐えきる事が出来る。ま、その前に・・・・
――自爆――
自爆しやがった。その威力が届く前に装填してある最後のカートリッジ1発をロードしてシルトとガイストを強化――したところで、『シュリエルっ、ヴィータっ!』って思念通話。そしてそれは一瞬だった。なにが起きたのかさえも判んなかった。いきなり腹に衝撃が来て、視界が揺れて、気が付けばあたしはオーディンに抱きかかえられてた。
「怪我はないか? ヴィータ、シュリエル」
オーディンが心配そうな顔して訊いてきた。あたしの反対側で抱きかかえられてるシュリエルは「はい。問題ありません」って答えた。2人の視線があたしに向けられる。でも「え、あ、その」言葉に出来ない程混乱してるあたしがいる。状況を確認だ、うん。自爆攻撃を食らいそうになってて、気が付けばさっきよりずっと空の上でオーディンに抱えられている、と。
「ヴィータ?」「紅の鉄騎?」
「あ・・・うん、大丈夫・・・」
自爆の殺傷効果範囲からオーディンに抱えられて逃れる事が出来たんだ・・・。そして足下。奴らが自爆し終えていた。これが・・・これがイリュリアの――プリュンダラー・オルデンとかいう連中のやり方かよ。撤退をし始めているイリュリア騎士団に向かって「ふざけやがって」悪態を吐く。オーディンはあたしとシュリエルの腹に回してた腕を離してあたし達を解放して、改めて地上を見回す。
「ヴィータとシュリエルの無事を確認、っと。『・・・アギト、シグナム、シャマル、ザフィーラ。現状報告』」
『はい、オーディン。私とアギト、そしてザフィーラは前線で警戒しつつ待機しています』
『すごく疲れたよぉ、オーディン。お腹もぺこぺこ』
『私は拠点で負傷者の治療に当たっています。よろしければオーディンさんにもお手伝いをお願いしたいのですが・・・』
「『判った、すぐ行く。シグナム達はそのまま警戒を。アギト。アンナがきっと美味しい料理を作って待っていてくれているはずだ。もう少しの辛抱な』」
オーディンがあたしらに合図するように地上を指差して降下して行った。あたしとシュリエルも頷いて続く。そこには地面に敷かれた布の上に横たわってる数多くの騎士たちが数多く居た。この戦いで傷つき倒れた騎士たちだ。
シャマルを始めとした治癒の魔導が使える術師たち医療団が必至に治療しつつ、「包帯が足りないッ」「薬を持ってこい早くッ」「こっちを手伝ってくれッ」「心停止だッ、マッサージだッ」って声を荒げ続けてる。オーディンは医療団と合流し、すぐに「コード・ラファエル」って治癒術式で治療開始。
「あ、おい、シュリエル?」
シュリエルがオーディンに近づいて行く。そして「オーディン。あなたの魔導を使わせていただければ、私もお手伝いが出来るかと」って“闇の書”を胸の前でギュッと握りしめる。さっき無断で使ってたじゃん障壁の魔導、とは言わない。緊急時だったしさ。オーディンは「許可なんて要らないさ。頼むよ、シュリエル」って治療に戻る。
シュリエルは「はいッ!」って力強く頷いて、すぐにオーディンと同じ魔導で治療を始めた。それをジッと眺める事しか出来ないあたし。ううん、少しでも力になりてぇから・・・「あのっ、あたしに手伝える事あるっ?」近くに居た女の騎士に訊いた。
†††Sideヴィータ⇒シグナム†††
今回の戦の最前線だった地点で、私とアギトとザフィーラとリサ、そしてシュトゥラの王子であるクラウス殿下と側近らしき騎士で、撤退して行くイリュリア騎士団の背を眺める。我々の足元には敵味方の遺体が多く横たわっている。クラウス殿下は自国の騎士らの遺体の前で片膝をついて祈りを捧げている。
「まさかこの度の戦の指導者がバルデュリスとは。大規模侵攻でしたから率いるのはイリュリア騎士団総長グレゴールかと思っていましたが・・・」
「ああ。まさかイリュリアの王子自ら騎士を率いて来るとは思いもしなかったよ」
「殿下。貴方もシュトゥラの王子である事をお忘れなく」
クラウス殿下とその騎士が話し合っている。殿下らと合流した時には既にイリュリア騎士団の将だというイリュリアの王子バルデュリスの姿はなく、オーディンの愛するアムルへと侵攻してきた騎士団の将を見る事は叶わなかった。
「しかし王子自ら戦場に赴くとは、それほどに指揮や武技に自信があるのだろうな」
呟いたところに、私の側に浮遊しているアギトからの思念通話が来た。
『バルデュリア王子は、あんまり称えられるような才があんまり無い人なんだ。だけど妹のテウタ王女は武道も魔導も優れていて、次期皇帝に近いって言われてる』
『そうなのか? ・・・なるほど。それでそのテウタという妹より勝っていると国内に知らしめるためにバルデュリスは侵攻に来た、というわけか』
『たぶん。今までシュトゥラに攻めて来てたのはテウタ派って呼ばれる騎士団ばっかりだったし』
『それで自分が率いる騎士団でオーディンを潰し、株を上げようとしたのだな』
確かに今まで大敗を喫していた元凶であるオーディンを討てば、実力はともかく討ったという事実がバルデュリスが認められる要因になるだろうな。しかしそれは成功するどころかそれ以上に大失敗として終わりを迎えた。バルデュリスはトドメを刺されたのと同義だな。
アギトは『でも失敗しちゃったし、きっともう王様になる事は不可能だよ』と言った後に思念通話を切った。クラウス殿下が歩み寄って来たからだ。もう警戒を解くらしく、拠点へ帰還するとの事だ。クラウス殿下と騎士が先に行き、我々とリサがその後方を歩いている中、「・・・・これからきっと大変になりますよ」リサが深刻そうに言う。
「どういう事だ?」
「イリュリアは、王子バルデュリスと王女テウタの二大派閥に分かれています。勢力としてはバルデュリス・テウタ、現状6:4と言った割合でしょうか。長男が王位を継ぐという古き習わしに則るべきだと訴えるバルデュリス派。実力と頭脳、味方を作る才の有ると言われているテウタを王位に就かせ、このベルカ統一戦争を一気に終わらせようとするテウタ派」
「じゃあテウタが王位に就くと、今まで以上の戦火が・・・?」
「だと思うよ、アギトちゃん。まぁオーディンさんと皆さんがいるから、容易くシュトゥラは落とされないと思う。でもこれまでとは比べられない程に大きな戦がベルカ各地で起こるはず。とは言え、今はまだゲンティウス王が健在ですから、もう少し先のお話ですけど」
リサは最後に我々を安心させるためか笑顔を見せた。しかしその先が訪れるのが無しになったわけではない。私はアギトとリサに「テウタと言う者の実力の程は?」と尋ねてみる。すると2人は表情を重く曇らせた。それだけで理解できる。無口になってしまうほどに強いのだろう。リサが「3年前に一度だけ見かけました。おそらく私では勝てないかと思います」と、私の目をしっかり見つめ告げた。
「あたしはインストールされてる情報でしかテウタの事は知らないけど、あたし達プロトタイプの融合騎は、テウタ専用の完全な融合騎を開発するための実験機なんだ。テウタがどんな魔導と武技を持ってるかの詳細は判んない。でも融合騎に頼らなくたって掛け値なしの実力者なのは確かだよ」
アギトはアギトで心底心配そうな表情を浮かべ、オーディン達の居る拠点の方を見、しかしすぐに「それでも勝たないとね。守りたいものを守るために」と凛とした表情になり強く頷いた。私も「ああ。救いたいものを救うために、な」と言うと、リサが「なんです? それ」と小首を傾げて訊いて来たので、それに対し「マイスターの信念だよ。あたし達グラオベン・オルデンの由縁なんだ♪」アギトが胸を張って答える。
「なるほど。信念の騎士団グラオベン・オルデンとはそういう事だったんですね」
「うんっ。マイスターはすんごく強いけど、でもその力は何かを支配するためじゃなくて、守りたいものを守るため、救いたいものを救うための力を使いたいって言ってた」
「だから我々はオーディンの下で戦うと決めた。あの方の為ならば、我らは命を賭そう。それだけの覚悟はある」
このベルカ統一戦争はもちろん、オーディン自身の目的である“エグリゴリ”救済を手伝うために、我ら守護騎士ヴォルケンリッターは、グラオベン・オルデンの騎士としてオーディンと共に戦う。だからこそ、まずはイリュリアと決着をつけねばな。
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シュトゥラとイリュリアの国境で繰り広げられた今までに無い規模での戦から帰還したバルデュリス王子、そして彼が率いた騎士団。出立時の彼らの人数は総勢6800人。しかし帰還時の今、約半数ほどの3000人強しか居ない。戦死者やシュトゥラへ投降し捕虜となった事による減数。大敗。そう言っても過言ではない被害だった。彼らは市民から向けられる無念そうな眼差しを一身に受けつつ、王城の庭へと辿り着いた。
「殿下っ、大事ですッ!」
庭で部下の様子を見回っていたバルデュリス王子の元に駆け寄って来る初老の男が数人。ゲンティウス王の側近たちだ。血相を変えて走って来るのその側近たちに、何事かと目を向ける騎士たち。その1人がバルデュリスに耳打ちする。と、みるみるバルデュリスの表情が険しくなり、目も大きく開かれていく。そしてすぐに王城内へと駆け出し、側近たちも慌てて続いて行った。
「父上ッ!」
バルデュリスは玉座の間へと一直線に駆け、入口の扉を壊すほどに力強く開けた。壮大なパイプオルガンの前に置かれている玉座に腰かける男、イリュリアの王ゲンティウス。いや、王だったと言うべきか。ゲンティウスの顔は血が通っていないのか青白く、目も口も半開きだ。そう、すでに亡くなっていた。ゲンティウス王は死ぬその時まで玉座に座し続けた。
ゲンティウス王の遺体の前には1人の少女。王女テウタだ。広間に背を向けているため表情は誰にも見えないが、口端は大きく笑みに歪められていた。広間にはイリュリアの政治を担う執政官や軍部の役人がズラリと並び、悲しみに暮れていた。中には悲しむどころか嬉々として喜んでいる――もちろん顔にも態度にも出ないようにしている――者たちもいるようだが。
しばらくの黙祷の後、ゲンティウス王の遺体は、2人の子供を始めとした側近たちに運び出された。そして玉座の間に戻ってきたバルデュリスとテウタは、改めて挨拶を交わす。
「改めて。おかえりなさい、お兄様。御父様はお兄様がお帰りになる少し前に、ここ玉座にて逝去なされました。とても残念です」
「・・・・そうだな」
「お兄様。次期イリュリア王の座、私が貰い受けます」
「ッ! 父上が逝去されてすぐだぞッ。なにもこんなすぐに――」
「こんな状態だからです。お兄様が王座についてもこの統一戦争を戦い抜けるだけの引率力はありません」
妹のテウタに王の能が無いと言われ、バルデュリスも「なんだと」苛立ちを見せる。テウタは続ける。「もう魔神は対人戦では勝てない。理解してますよね?」と諭すように告げる。それには同意のようで、バルデュリスは「解っている。あれはもう人間ではない」と落胆の色を見せた。
「理解して頂いているようでなによりです。ですから私は御父様に提言したのです。エテメンアンキとミナレットの使用を」
「馬鹿なッ! 共に破壊兵器ではないかッ! 戦船の艦載砲なんて目ではないッ。あんなものを使うほど切迫していないぞッ!」
「切迫していますよ。魔神は正しく魔神。アムルを護ったあの巨像も戦力として数えるとなれば、戦船程度ではもう対抗戦力にはなりえません。ですからエテメンアンキとミナレットの使用を提言したのですが、御父様はお許しになりませんでした。自分が王位に就いている間は、決して両兵器の使用は認めない、と」
バルデュリスに背を向けてテウタがそう告げると、バルデュリスの顔が引きつった。まるで怯えるかのようにテウタの背から少しずつ後ずさって行く。
「父上の体調は確かに悪く、おそらく長くはないと思っていた。しかし・・・今朝の様子を見る限りではまだまだご健勝だった・・・」
「本当に。戦時中にも健勝でした。いきなり容体が急変して驚きました」
「父上の死を確認した第一人者は・・・・誰だ・・・?」
テウタが小さく笑い声を漏らした後、クルリと反転して実兄バルデュリスへと向き直る。そして「私ですよ、お兄様」と答えた。目は笑っていないが、口だけは笑みを浮かべている。それで悟った。バルデュリスの顔に憎悪の色が宿る。先程までの怯えから一転。バルデュリスは「統一戦争に勝つために・・・実の親を殺したのか・・・貴様は・・・!」と構えを見せた。
「だって仕方がないではないですか。私たちはイリュリアの王族ですよ? ベルカは――いえ、レーベンヴェルトは元々私たちイリュリアのものでした。この統一戦争は、レーベンヴェルトを取り戻すための戦い。勝たねば意味はありません。ええ。どんな手段を使ってでも。それがレーベンヴェルト時代より王族であったフリーディッヒローゼンバッハ・フォン・レーベンヴェルトが存在意義」
「テウタ・・・それでも、それでもお前が越えた一線は・・・・悪だッ!」
バルデュリスの左手に一振りの刀、右手には鞘が出現する。テウタは「残念です。御父様を喪ってすぐにお兄様を失う事になるなんて」と悲嘆に暮れている・・・つもりなのだろうが口は笑っているままだった。
「テウタぁぁぁーーーーーーッッ!!」
――斬甲一迅旋――
「あぁよく考えればお兄様は居ても居ずとも変わりませんから、どうでもいいですか」
――夢影――
決着は一瞬。この日、この瞬間。テウタはイリュリア王女ではなくイリュリア女王となった。
後書き
ゴーオンダイン。ゴットクヴェルト。
どうやら私は敵対組織内の反逆裏切りが本当に好きなようです。前作も使いましたし、ANSUR時もムスペルヘイムを裏切らせました。
当時は結構辛口コメントが来ましたっけ。ステアとセシリスを敵に回したら許さない~と。回すわけが無い! とまぁ当時の事を思い出しながら、今話を執筆。
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