原罪
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第二章
「絶対にな」
「そうさ、チャンプになるんだったらな」
「こうしたこともあるよな」
「そうさ、フレンドとのカードもな」
「それでそのカードでもな」
「全力を尽くして戦え、いいな」
「わかってるさ、そしてな」
全力で戦ってだ、それでだった。
「勝ってやるさ」
「試合の四日前になったらな」
そうなったらとだ、ホーナーは試合の具体的な話をしてきた。
「御前のやり方でいいんだな」
「ああ、食うものをな」
「肉を絶ってか」
「パスタとかオートミールにするさ」
「それでいくな」
「動きが速くなるからな」
それでだというのだ。
「それでいくさ」
「タイソンのやり方だな」
「拳も大事さ」
ホーナーも褒めるだ、デービスの最大の武器のそれは言うまでもなかった。だがそれだけではないというのだ。
「けれどな」
「ボクシングは足だな」
「そうだよ、それでな」
だからだちいうのだ。
「炭水化物に切り替えてな」
「レーサーみたいだね」
「動きも速くするさ」
「じゃあ食事も」
「ああ、そうするさ」
こうしてだった、デービスは食事も切り替えてだ。
試合に考えを向けていた、そして遂にそのジョーンズとの試合になった。
ジョーンズとの試合は一進一退の攻防だった、デービスは確かに強い。
しかしジョーンズも強かった、パンチ力はデービスの方が上だが。
フットワークはジョーンズの方が上だった、それでだった。
五ラウンドが終わった時にだ、デービスはセコンドのホーナーにリングでこう言った。
「フットワークも鍛えてよかったがな」
「食べるものも切り替えて」
「ああ、それでもな」
「フットワークは向こうの方が上だね」
「やっぱりあいつは強いぜ」
赤コーナーにいる彼を見つつだ、デービスは不敵な笑みを浮かべてホーナーに言った。
「それも相当にな、けれどな」
「それでもだね」
「それはもうわかってるからな」
だからだというのだ。
「俺だって馬鹿じゃない」
「ジョーンズの研究もしたね」
「ああ、したさ」
「それに彼とは親友だしね」
「あいつの弱点はわかってるさ」
その不敵な笑みでの言葉である。
「あいつの癖はわかってるさ」
「二人でそれを調べたけれど」
「ああ、あれをやるさ」
こうホーナーに話す、セコンドとして二人でジョーンズのことを細かく研究した彼に。
「ここぞって時にな」
「よし、じゃあね」
「勝つのは俺だよ」
確かな顔で言う彼だった。
「絶対にな」
「よし、じゃあ勝って」
「また一歩チャンピオンに近付いてやるさ」
こう言ってだった、そのうえで。
デービスはジョーンズとの試合を続けた、だがジョーンズも強く中々隙を見せない。一進一退のまま試合は進み。
そしてだった、最終ラウンドになった。この時に。
ジョーンズは巧みなフットワークでデービスに迫っていた、しかしここで。
ジョーンズは左に動いた、だが。
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