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ケット=シー 

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第五章

「私にくれるの?」
「よかったら受け取ってくれるかな」
「有り難う、私マシュマロ好きなのよ」
 明るい笑顔での言葉だった。
「受け取らせてもらうわね」
「じゃあ食べてね」
「ええ、本当に有り難う」
 受け取ってからも満面の笑顔で言うベスだった、そして。
 それだけでなくだ、彼はキャンディーや兎のぬいぐるみ、ピンクのハンカチもプレゼントした。それも何度も。
 やはり何気なくを装ってだ、プレゼントしていったのだった。
 そして公園にも出てそこで彼女と偶然を装って会った、公園で遊んでいる子供達とも一緒に遊んだ。勿論アルバイトもベスと一緒に働いた。
 そうしたことを続けていて二ヶ月経った頃だ、何と。
 ベスの方からだ、学校でこう言われた。
 制服姿でだ、ベスは顔を紅くさせて俯いて言ってきた。
「あの、お父さんとお母さんもポールならって言ってるから」
「えっ、まさか」
「私でよかったら」
 紅い顔で俯きながらの言葉だった。
「これから一緒にいてくれるかしら」
「・・・・・・嘘じゃないよね」
 ここまで聞いてだった、ポールは。
 呆然となってだ、こうベスに問うた。
「それって」
「嘘でこんなこと言わないから」
 ベスはまだ俯いている、顔も紅いままだ。
「どうかしら、それで返事は」
「いや、僕の方こそね」
「ポールの方から?」
「うん、よかったら」
 まさかの展開に驚きながらもだ、ポールはベスに返事をした。
「これから宜しくね」
「ええ、それじゃあね」
 こうしてだった、ポールは願いを適えることが出来た。この告白の日にだ、家に帰った彼は満面の笑顔でチャーリーにこう言った。
「全部御前のお陰だよ」
「あっ、まさかと思いますけれど」
「そのまさかだよ」
「ベスさんに告白されたんですか」
「いや、ベスの方から告白してきたんだよ」
 この展開をそのままチャーリーに話した。
「後はわかるよね」
「はい、よかったですね」
「嘘みたいだよ」
 まさに天国にいる笑顔だった。
「僕今最高に幸せだよ」
「それは何よりですね」
「うん、じゃあこれからはね」
「ベスさんとですね」
「二人で明るく楽しくね」
「頑張って下さいね、これからも」
 チャーリーは主の言葉に明るく話した。
「私でよければ色々とお手伝いさせてもらいますから」
「助けてくれるんだ、これからも」
「だって私はこの家の猫ですよ」
 ケット=シーだからだというのだ、それ故に。
「長靴をはいた猫は主の為に頑張るものです」
「そういえばそうだね、童話でも」
「はい、ですから」
 だからだというのだ。
「これから宜しくお願いしますね」
「それじゃあね」
 こう話す彼等だった、そして。
 ポールはベスと幸せな日々を過ごしはじめた、その都度どうすればいいかはチャーリーがアドバイスしていった。
 そのチャーリーにだ、ポールはこう言うのだった。
「しかし猫が喋るなんて」
「ですから僕妖精ですから」
 チャーリーは今も後ろ足で立って話す、前足を人間の手の様に動かして。
「猫は猫でもまた違うんですよ」
「ケット=シーだからか」
「はい、そうです」
 だからだというのだ。
「ですからこれでいいんですよ」
「妖精は本当にいるんだね」
「いますよ、僕が証拠です」
 他ならぬ彼自身の言葉である。妖精の。
「ただそのことに気付いていない人が多いだけですよ」
「僕もずっと気付いてないしね」
「そういうことです。けれどそこに気付くかどうかで」
「変わるんだね、何事も」
 彼の恋路もだった、それもまた。
「そういうことだね」
「そうです、世の中にいるのは人間と動物や植物だけじゃないんですよ」
 こう明るく話すチャーリーだった。彼は今も陽気に笑って主と話すのだった。


ケット=シー   完


                          2014・2・23 
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