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素顔は脆く

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第一章


第一章

                      素顔は脆く
 大泉兎は丸めの顔に大きなこれまた丸い二重の目をしている。口は小さく鼻はあまり高くない。美人ではないが可愛い感じの女の子だ。
 髪は黒い髪を腰まで伸ばし左右でツインテールにしている。背はあまり高くない。容姿は全体的に悪くないとも言える。むしろ彼女は容姿よりも性格で人気があった。
 明るく屈託のない性格でそのうえ気配りもできる。誰かが困っているとすぐに後ろからその背中を抱く、そうした優しさを持っているのである。
 だからこそクラスの同性からだけでなく異性からも人気がある。そんな彼女について皆こう言うのだった。
「あいつがいなかったらクラス暗いよな」
「ああ、明るいどころじゃないよな」
「全くよ」
 こう言って笑うのだった。
「勉強はまああれだけれどね」
「そっちはちょっとね」
 しかし勉強が駄目というのも御愛嬌になるのも彼女だった。
「けれどそれでもあの性格はね」
「有り難いよな」
「クラス明るくさせてくれるしね」
「だよね」
 やはりこう言われるのであった。
「あの明るさに救われるよ」
「癒し系っていうかね」
 明るい癒し系だった。今はクラスの授業でバスケをしている。長い髪を今は一つにしてそれで頭の後ろで団子にしてまとめている。青い学校のジャージを着て体育館の中を走っている。
「景子ちゃんはそっち!行って!」
「わかったわ」 
 名前を呼ばれた女の子がそこに向かう。
「あと里香ちゃんはそこで。美優ちゃんもね」
「うん」
「じゃあな」
 今度は二人の女の子が向かう。そして兎がボールを受け取り三人と連携しながら進む。そうして一気に点を入れてしまおうとする。
「兎ちゃん!」
「御願い!」
「ええ!」
 美優はボールを受け取ってそれで思いきり跳んだ。背はあまり高くないがそれでも跳躍力はあった。高々と跳んでボールをゴールに入れたのだった。
「よし!」
「やったわ!」 
 これで点を入れたのだった。一気にだった。皆兎の周りに集まって明るい声をかける。
「やったわね」
「兎ちゃんのおかげよ」
「そんなことないよ」
 にこりと笑ってその皆に応える兎だった。体育館の様々な色のテープで区分されたそのバスケットグラウンドの中で笑顔になっている兎であった。
「全然」
「何言ってるのよ。的確な指示だったじゃない」
「そうそう」
「おかげでできたんだからな」 
 皆その彼女に対してさらに言うのだった。
「これからも御願いね」
「是非ね」
 皆はこう言って兎の周りにいる。その皆はこう思っていた。
「いつも明るいし」
「暗いものなんてないのがいいわよね」
「そうそう」
 兎は底抜けに明るいと思っていたのである。
「きっぷもいいしね」
「まさに男前ってやつ?」
 こんなことまで言われるのだった。
「あの娘はね」
「結構しっかりして気も強いところあるしね」
 とにかくかなりポジティブな性格だと考えているのだった。
「頼りになるわよね」
「そういえばよ」
 ここで誰かが不意に言うのだった。
「兎って彼氏いるのかしら」
「彼氏!?」
「そう、彼氏よ」
 付き合っているかどうかという話である。皆その話を聞いてまずは殆どの人間がその目をしばたかせてしまったのであった。
「あれっ、そういえば」
「今まで考えたことなかったけれど」
「確かに」
 殆どの人間がそうであったのであった。
「いるのかな、どうかな」
「それが問題よね」
「多分いないと思うわ」
 ここでこの言葉が誰かから出て来たのだった。
 
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