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IS 〈インフィニット・ストラトス〉 ~運命の先へ~

作者:GASHI
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第3話 「英国代表候補生」

 
前書き
夏休みを心待ちにしているGASHIです。少し遅れましたが第3話投稿します。 

 
俺が教室に戻ってすぐに授業が始まった。
幼い印象しかなかった山田先生も教鞭を振るう姿はまさしく立派な教師そのものだ。教え方も上手いし、思っていたよりもずっと優秀な人なのかもしれない。

「・・・であるからして、ISの基本的な運用には現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ・・・」

それにしても退屈な授業だ。こんなの、高校生が小学1年生の授業に参加しているようなものだ。某名探偵の気持ちがよく分かる。

「・・・何だ?」
「いや、何でもない。」

先程から一夏の視線が煩わしい。あちこち見回しては、俺に視線を向ける。せめてノートをとるくらいの努力をしたらどうだ?・・・俺は良いんだよ、必要ないんだから。

「織斑くん、何か分からないところがありますか?」
「あ、えっと・・・。」
「何でも訊いてくださいね?何せ私は先生ですから。」

流石に一夏の不自然な様子に気づいたのか、山田先生が一夏に尋ねる。言い淀む一夏に胸を張って応対する山田先生。あの服大丈夫なのか・・・?

「えっと、ほとんど全部分かりません・・・。」

・・・おい、今この野郎は何て言った?俺の聞き間違いじゃなければ『全部』っていう衝撃的なワードを口にしたような気がするんだが?

「え、全部、ですか?えっと・・・、この段階で分からないっていう人はどれくらいいますか?」

俺を含め、手を挙げるものはいない。いるわけがない。新入生は俺のような特例以外、全員が入学前に予習用の参考書を配布されているはずなのだ。それとも、一夏は貰っていないのだろうか、あの辞書と見紛うばかりの分厚い参考書を。

「・・・織斑、入学前の参考書は読んだか?」

ここで、今まで事態を静観していた千冬さんが動いた。一夏は相変わらずとぼけた表情で答える。

「えっと、あの分厚いやつですか?」
「そうだ。必読と書いてあっただろう。」
「・・・古い電話帳と間違えて捨てました。」

スパァンッ!!
一夏の言葉が終わると同時に、一夏の脳天を出席簿による強烈な一撃が襲う。何度聞いても爽快な音だ。今ので一夏の脳細胞にどれほどの被害が出たのだろう。御愁傷様。

「後で再発行してやるから一週間以内に覚えろ。良いな?」
「いや、あの量を一週間はちょっと・・・。」
「やれと言っている。」
「・・・はい。」

一夏のささやかな抵抗を眼光一閃で捩じ伏せる千冬さん。どうせ強制するなら、確認なんてしなけりゃ良いものを。

「それから、神裂。」
「はい?」
「織斑の面倒を見てやれ。異論は認めん。」
「・・・了解。」

マジか・・・。正直面倒だが、この人が異論を認めないと言っている以上、どれだけ抵抗したところで徒労に終わるだけだ。従う方が無難だろう。さて、何から教えようか・・・。




「うあぁ、頭痛い・・・。」
「・・・デジャヴだな。」

二時間目の休み時間、俺は一夏の机に歩み寄った。今日の放課後の打ち合わせでもしようと思ったのだが、今にも頭から煙でも出そうな状態の一夏を見ると一気にその気が萎えてしまった。

「ちょっとよろしくて?」
「へ?」
「あ?」

背後からの突然の声に思わず生返事をする俺と一夏。振り返ると、ロールのかかった金髪を靡かせた女子生徒が立っていた。如何にも貴族の令嬢といった感じの彼女はあからさまにこちらに軽蔑の眼差しを向けていた。

「まあ!何ですの、そのお返事?わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではなくて?」

台詞といい、雰囲気といい、女尊男卑を体現したかのような小娘だな。面倒な奴に絡まれたなぁ。一瞬で話す気が失せた俺は心の中で盛大なため息を吐く。

「悪いな。俺たち、君が誰か知らないんだ。」
「知らない!?このセシリア・オルコットを?!イギリス代表候補生にして、入試首席のこのわたくしを!?」

一夏の言葉に声を張り上げるオルコット。一夏、お人好しなのは結構だが言葉を選べ。こんなプライドの塊みたいな奴にそんな馬鹿正直なこと言ったら反発するに決まってるだろうが。

「あ、質問良いか?」

・・・え、何、コイツって空気を読むってことしないの?出来ないの?コイツの周りだけ違う空気でも漂ってんの?ってか何ですか、その強烈に嫌な予感のする前振りは?

「ふん。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ。」
「代表候補生って、何?」

これを聞いていた周囲の女子が、芸人顔負けの超高精度なずっこけを披露する。お前ら、入る学校間違えたんじゃねえの?ってか一夏さんよ・・・、

「お前、マジで言ってんのか?」
「え、俺今変なこと言ったか?」

自覚なしですか、さいですか。俺、コイツに色々教えなきゃいけないのか?冗談じゃねえ、難しいを通り越して無理だろ・・・。

「信じられませんわ!日本の男性とは皆こうなのかしら?常識ですわよ、常識。」
「そうなのか。で、代表候補生って?」

お前のことは嫌いだが、こればかりは同意するぞ、オルコット。・・・仕方ない、最初のお仕事といこうか。耳かっぽじってよーく聞けよ、一夏。

「多くの国に国家代表IS操縦者がいることは知ってるな?代表候補生ってのは、その候補生として選出される人間のことだ。まあ、研修生みたいなもんだな。」
「へえ、なるほどな。」
「つまりは国家に選ばれたエリートなのですわ!」

・・・俺はそこまで言った覚えはないんだが。まあ、復活が早いのは評価する。評価が低いのは変わらないけど。

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とクラスを同じくすることだけでも奇跡・・・、幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」
「そうか、それはラッキーだ。」
「あー、はいはい。」
「・・・馬鹿にしていますの?」

お、それに気づける程度の知能はあるのか。感心、感心。

「大体、あなた方ISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できるというから少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待外れですわね。」

おい、俺まで巻き込むんじゃねえ。俺はコイツと違って第一世代からお前らの知らない技術までISのことを知ってるんだよ。説明すんの面倒だから言わねえけど。

「俺に何かを期待されても、困るんだが・・・。」

まあ、一夏はちゃんと試験をパスして入学した訳じゃないしなぁ。特例だって理由だけで強制入学させられた以上、多少の知識不足は看過すべきだろう。・・・多少かどうかは別としてな。

「ふん。まあ、でも?わたくしは優秀ですから、あなた方のような人間にも優しくしてあげますわよ?ISのことで分からないことがあれば、まあ・・・、泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ?何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから。」

お前は自国に帰ってISより先に道徳でも学んでこい、オルコット。まあ、教官を倒した腕は評価しないでもないが。でもあれ呆れるほど弱かったような・・・。

「あれ?俺も倒したぞ、教官。」
「は・・・?」
「ほう・・・。」

知識なしで教官に勝つとは、案外センスがあるのかもしれない。一夏に対する評価を変える必要があるな。

「倒したっていうか、突っ込んできたのをかわしたら勝手に壁にぶつかって動かなくなっただけだけどな。」

・・・前言撤回。それは倒したとは言わないんだよ。自爆じゃねえか、一体誰が・・・、山田先生だな。それ以外あり得ない。はい、決定。

「零はどうだったんだ?」
「あん?あの雑魚教官なら1分で潰した。」
「マジか・・・。」

あ、若干引いてる。仕方ねえだろ、予想以上に弱かったんだよ。むしろその後の方が面白かったんだが、更に引かれそうだから言わないでおこう。

「わ、わたくしだけと聞きましたが・・・?」
「女子ではってオチじゃないのか?」

余程ショックを受けたらしく、オルコットは前に乗り出して喚きたて始めた。ってか、エリートの証明があの入試の結果しかないとか、語るに落ちたな、代表候補生。

「あ、あなた方も教官を倒したって言うの!?」
「お、落ち着けって。な?」
「これが落ち着いていられ・・・」

キーンコーンカーンコーン。
絶妙すぎて感動すら覚えるタイミングでチャイムが鳴る。話の腰を折られたオルコットはまだ言い足りないようだったが、諦めて一夏をビシッと指差した。

「話の続きはまた改めて。よろしいですわね!」

そう言って返事も聞かずに去っていくオルコット。えー、またアイツの相手しなきゃいけねえの?冗談じゃないっての・・・。  
 

 
後書き
今友人とのコラボ作品の案が浮上しています。ISかは未定ですが近々新しい作品を書くかもしれません。その時はよろしく! 
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