徒然なるバカに
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朝の5分は2度寝の5分だッ!!
「つべこべ言ってないでいいから来なさい!」
先日のことに対しての怒り、からであるのはまず間違いないだろう。電話の主、桂雛菊はそう怒鳴りつける。
先日とは、この間の花火、泥棒の件での時のことだ。
あの日、おれは急な用事があるといい、桂に一言も報告もしないで帰路についた。それから2週間ほどの月日が流れ、今日は冬休み明けの始業式だ。
「だから朝っぱらからそう怒鳴るな怒鳴るな。ちゃんと寝起きにはカルシウムを取りなさい」
おれはキーンとうるさい携帯電話に耳を傾けながら、そんな戯言を言う。
「朝っぱらからイライラさせることもを言うのはどこのどなたかしら?」
「そりゃ失敬失敬」
「しかも冬休み中一度も電話にでないし」
「いや、お前からの電話はなんか面倒事の匂いしかしなかったから無視してただけだ」
「あなたがよくそんなこと言えるわね」
呆れて物も言えないわ。と続けていう彼女の表情は本当に呆れているのだろう、電話越しに目に浮かぶ。
「で、要件を言え、要件を」
こいつと世間話に花を咲かせたところでおれにはなんのメリットもありはしないと確信し、ことの要件を聞き出すことに。
「要件?要件って……」
電話越しからは桂の気の抜けた返答が。
「そうだよ、要件。こんな朝早くに電話してきやがって、要件ないなんて大概にせえよ」
と、目覚まし時計に視線を移すが、その短針はまだ数字の6を指したばかりのところ。ちなみに長針は12。
「あら?もう6時じゃない」
「まだ6時だわッ!」
お前は冬になっても朝のラジオ体操に出席するつもりか!それともあれか久々の学校でテンションがあがって寝つきが悪かったとでも言うつもりか!
「だから要件ならさっき言ったじゃない」
ーーあ、おはよう、優人くん。朝7時までには学校に来てね。
「だから行かねえよッ!」
いきなり早朝6時前のモーニングコールでそんなことを言われて、あ、うんわかったよ。なんて言う奴がこの世にいるかッ!
「はぁ!?なんでよっ!」
「なんでもクソもねーよッ!要件って間違ってねえけど!もっと具体的なことをだな!」
単発的に単語を発射してくる彼女の言葉は、寝起きの脳には部が悪く、よく理解できない、というかしたくない。
「なにが!どうして!どこで!いつ!なぜ!どんな!5W1Hを使え!」
「今は6W2Hとも言うわよ?」
「そういうことを言ってるんじゃねえよォォォオ!」
「まあ、とにかく!この間の件で話があるから、7時までには時計塔でね?」
それだけいうと俺の携帯電話からは無機質な機械音が一定のリズムで流れていた。
よく教師や桂に、傍若無人と言われるが、あいつのほうこそこの言葉が当てはまる。本当に。
眠たい目を擦りながら再度目覚まし時計に視線を移す。……やはり時刻はさきほどと10分ぽっちしか変わらない。
本当に勘弁してほしいものだ。学生、社会人、生きている人間に共通して言えることは、朝の5分は至福の5分であって、誰にも邪魔をされたくはない時間帯なのだ。なので今この後の行動は、2度寝をするということで異論はないのだが……。
ーーこの間の件。
花火と泥棒の件で間違いないだろう。前者については、始末書も提出したことだし今更なにも言われる筋合いもないのだけれども。後者、泥棒の件については今だ納得のいく結末に到達していないのだろう。しかも泥棒扱いを受けていたのはおれ自身。
仕方ない、と言えば仕方ないのだ。こと全てと言っていいほどトラブルを起こしては、何食わぬ顔で平然と生活をしているヤツを疑わないほうがおかしい。
周りからしたら普段とたいして変わらない日常の1ピース、なのだが。そんなの周りからしたら、だ。こちらからしたら普段通りにしろ、なににしろ濡れ衣を着せられるのは溜まったものじゃない。
不本意極まりないが、今回はあの桂の肩を持つことにしよう。本当に不本意極まりないが。
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