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久遠の神話

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第百八話 最後の戦いその十三

「消えるわ。何処かを旅しながら」
「では暫しの間」
 豊香も言った、このことを。
「私達は待たせてもらいます」
「私を」
「はい、そうさせてもらいます」
「今もそうしてくれるのね」
 セレネーは豊香の言葉、そして女神達の顔も見て述べた。
「この私に」
「お姉様ですから」
 それでだとだ、今度は聡美が答えた。
「当然です」
「私だから」
「はい、お姉様は永遠にお姉様です」
 こうだ、聡美はセレネーの自分の言葉に戸惑う顔を見ながら微笑んで答えた。彼女本来の優しい笑顔になって。
「優しいお姉様ですから」
「だからなのね」
「ずっと待ちますので」
 時を定めずにだ、そうするというのだ。
「また戻って来て下さい」
「・・・・・・有り難う」 
 セレネーはその聡美に銀色の涙を流しながら応えた、そして。  
 女神達にだ、左手の人差し指でその涙を拭いてからこう言った。
「ではそれまでの間」
「はい、暫しの間」
「ご機嫌よう」
「待たせて頂きます」
 四人の女神達はそれぞれ言葉を交えさせた、一時の別れの言葉を。そうしてだった。
 セレネーは彼女達に背を向けてそのうえで宙を歩いていった、そのままその姿を何処かに消した。後には黄金の優しい光を放つ満月だけがあった。
 聡美達はセレネーを見送り終わった後でグラウンドに戻った、そのうえで。
 樹里と共にいる上城にだ、微笑んで言った。
「戦いは完全に終わりました」
「そうですね」
「これで」
「はい、そうです」
 こう上城と樹里に話す、見れば。
 もう上城の手には剣がない、そのことも見てだった。
 聡美は微笑んでだ、彼に言った。
「今まで本当にお疲れ様でした」
「有り難うございます」
「これでもう二度と。貴方達が戦われることはありません」
「生まれ変わってもですね」
「そうです」
 その通りだとだ、聡美は微笑みのまま答えた。
「これで」
「よかったです、けれど」
「お姉様ですね」
「あの方は」
「仕方ないです」
 このことについてはだ、聡美は無理に笑って言った。
「お姉様はこれから一人で旅をされて」
「そうされてですね」
「はい、罪も償われます」
 そうしてくるというのだ。
「ですからご安心下さい、あの方のことは」
「そうですか」
「また会えます」
 このこともだ、聡美は上城に答えた。
「私達は」
「そうお話されていましたね」
「何時か。では貴方は」
「もうこれで、ですね」
「普通の人間として暮らせます」
 剣士ではなくなった、それ故にというのだ。
「そうされて下さい」
「わかりました、それでは」
「今日はこれでお別れですね」
「今日は、ですね」
「私達はしばらくの間は」
 どうするかということもだ、聡美は上城達に話した。
「この街にいますので」
「じゃあこれからも」
「宜しくお願いします」
 こう言うのだった。
「何かと」
「はい、それじゃあ」
「まずはですね」
 樹里もここで聡美に言う。
「明日パーティーしますから」
「そうそう、そうだったね」
 上城も樹里に笑顔になって応えた。
「そういう約束だったね」
「そうでしょ、だから」
「まずは皆でね」
「お祝いしましょう、戦いが終わった」
 それのだというのだ。
「銀月さん達もお呼びして」
「最初からそうした考えだったからね」
「そう、それじゃあ」
 こう話してだった、そして。
 一同はまずは戦いが終わったお祝いのパーティーを開くことにした。そうしてそのうえでだった、今は別れた。戦いは遂に終わり後には満月だけがあった。


第百八話   完


                              2014・5・2 
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