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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第二十二話 エックスのその後

 
前書き
シグマを倒したエックス。
しかしルインやゼロ、多くの仲間を失った彼の心は晴れなかった。
 

 
廃棄された工場地帯にイレギュラーが出現したと聞いたエックスはルインの形見のZXコンポジットを携えて現場に部下と共に急行した。
イレギュラーを発見すると同時にZXセイバーで一瞬で切り捨てる。

「お見事ですエックス隊長。」

腰にまで届く長い金髪を靡かせながらエックスに歩み寄るレプリロイド。

エックス「ディザイア…」

ディザイア「隊長、どうしましたか?」

エックス「いや…」

彼はエックスに剣の扱いを教えてくれたレプリロイドなのだ。
第17番精鋭部隊に新しく配属され、サーベルの扱い長けたA級ハンター。
最初は独学でセイバーの訓練をしていたのだが、やはり1人では限界があるため、部下である彼に頼み、剣の教えを受けている。
隊長であるエックスが部下であるディザイアに教えてもらうなど普通は有り得ないだろうが、エックスはルインの形見のセイバーを1日でも早く使いこなしたかった。
今では基本的な型すら出来てなかったエックスの剣術もZXコンポジットの本来の所有者に匹敵するほどの腕前となっていたのだ。

エックス「ありがとう…君のおかげでこの武器を使いこなすことが出来たよ」

ディザイア「別に構いませんよ。隊長の命令は絶対ですから」

ディザイアは笑みを浮かべながら言うが、エックスは例え社交辞令でも感謝した。
エックスは大破したゼロと共に帰還し、ハンター達から英雄と称えられた。
そしてシグマを倒した功績に第17番部隊の隊長となり、現在は第17番精鋭部隊を率いている。
大破したゼロとルインは今でもケイン博士が必死に復活させようとしている。

エックス「どうやらもうイレギュラーはいないようだ。みんなご苦労様。被害状況の確認が終わり次第撤収!!」

エックスの力強く凛とした声が響き渡る。

【了解!!】

部下達からの返事を受け、エックスはケイン博士のラボに向かう。
親友達に会うために。

「まさか、あの甘ちゃんハンターがあんな立派になるなんてな…」

「馬鹿、聞こえたらどうするんだ…エックス隊長だぞ隊長…。」

「しかし、隊長はあの戦い以来、目つきが鋭くなったよな…」

「ああ、まるであのゼロのように……」

同じ部隊に所属するエックスの同僚達が今のエックスに対して感慨深げに話す。


































エックスはケインのラボに行くと、ゼロとルインの元に向かう。
そこには、メンテナンスベッドに横たわっている大破したゼロとルインの姿があった。
あの日以来から一度も欠かしてはいない2人への報告。

エックス「ゼロ、ルイン…今日もイレギュラーを破壊したよ……イレギュラーによる犯罪は増加する一方で減る気配が全くない…。隊長に就任はしたけど、毎日毎日目が回る思いだよ…。こうして体験してみるとシグマ隊長がいかに凄かったのか分かるよ。それからつい最近のことなんだけど、俺も特A級に昇級したんだ。一応、断ったんだけどね」

































それはエックスがシグマを倒してから数日後の出来事であった。

エックス『…俺が、シグマの代わりに第17番精鋭部隊の隊長にですか?何故です?部隊には確か歴戦のハンターである特A級ハンターのビートブードがいたはず。実力も経験も申し分ない…俺より彼の方が適任では?』

イレギュラーハンター総監から聞かされた言葉に疑問を言うエックス。

『確かに普通ならばハンター歴、ランクからすればビートブードを隊長にすべきだろう。しかし奴は人類に反旗を翻したクワンガーの弟、そのような者を隊長にするわけにはいかん』

エックス『………だから俺を…ですか?』

シグマと数多くの特A級ハンターを倒してきたエックスは今やハンターベースにて英雄視されている。
そんなエックスがイレギュラーハンター最強部隊、第17番精鋭部隊の隊長になれば士気は大きく上がるだろう。
そんな人のいい笑みを浮かべる総監の企みを見抜いたのか、エックスは冷たい目で総監を見つめる。

『そ、それにこれはケイン博士からの推薦でもあるしな』

総監からすればシグマすら倒したエックスの冷たい視線を受けて正直生きた心地がしない。
重い空気が立ち込める中、ケイン博士がエックスの背中を強く叩いた。

ケイン『何イライラしとるんじゃエックス。お主は此度の戦いの最大の功労者じゃぞ。わしに言わせりゃ部隊長どころか新総監に抜擢されても決して可笑しくなど無いわい』

そう言ってエックスの背中を何度も叩くるケイン博士。

エックス『…そんな事ないですよケイン博士。ゼロやルインを初め…皆が俺を支えてくれたからこそです。俺の働きなんて…大したことではありません』

ケイン『謙遜する事はないわい。確かにゼロやルインの協力があったからかもしれんが、お主以外に一体誰があれ程の働きが出来たというのじゃ。わしはお主には幾ら感謝しても足りないくらい感謝しているのじゃぞ』

エックス『っ…ケイン博士…』

ケイン博士の顔は満面の笑みで満たされている。
しかしエックスは今のケイン博士の明るさは全て仮面でしかない事を知っていた。
いくら世界の敵となったシグマでもケイン博士にとっては息子同然。
エックスはシグマの仇なのだ。
そんなエックスに対して思うことがない等断じて有り得ない。
一方でケイン博士もエックスの気持ちを痛い程に理解していた。
エックスが本来戦いなど決して望まない性格である事をよくよく理解している。
その上でエックスはただ世界に平和が戻る事だけを強く願い、望まぬ戦火に自ら飛び込みシグマを初めとする多くのイレギュラーをその手に掛けてきたのだ。
エックスは一体どれだけ傷付いて、人知れず涙を流し続けてきたのだろう。
おまけにゼロやルインは大破してしまい、現在修理中だが、ゼロもルインもケイン博士からすればブラックボックスの塊で、まるで修理が進まない有り様だ。
一見すると輝かしく見えるエックスの功績も本人から見れば非常に不本意極まりなく、親友達を含めて多くの犠牲の果てに得た新たな地位に果たしてエックスはどのくらいの価値を見出しているのだろうか?

エックス『……分かりました。第17番精鋭部隊の隊長となる件…承諾します』

『そうか、分かってくれたか!!エックス、お前のその活躍を思えば余りに過小な評価かも知れんが、これからも第17番精鋭部隊の隊長として人類の平和のため尽力してもらいたい』

エックス『はい』

『それとエックス。お前のハンターランクをB級から特A級に昇級させる。せっかく隊長となるわけだからな』

エックス『お断りします。俺には必要ありません』

シグマとの戦いの最中エックスはゼロやルインを含めた多くの特A級ハンター達と接してきた。
当然その資格に相応しい人格者も多くいたが、特A級という称号を使って傲慢な振る舞いに出る者とて決して少なくない。
そのためエックスは自分を戒めるという意味でも、昇級は必要ないと判断した。
しかし総監も譲れない。
最強部隊の第17番精鋭部隊の隊長がB級のままでは、部隊の内部分裂が起きてしまうのではないかと危惧していた。
何とかエックスを昇級させようとするが、エックスは誰に似たのか頑固だった。
総監が何と言おうと首を縦に振らない。



































しかしケイン博士がエックスを説得することで、知り合いには甘いエックスは本当に渋々とだが、B級から特A級に昇級したのだ。
隊長の地位にある者は当然それに相応しい資格。
少なくとも特A級であるというのが上層部全体の考えとやららしい。
エックスはこの戦いではシグマを初めとする多くの特A級ハンターを倒している。
その功績を以って、エックスは特A級へと昇級したのだ。
エックスはゼロとルインを見つめる。
ルインよりもゼロの方が損傷が酷いために、比較的ゼロの方に手が回されている。
ルインもゼロも頭脳チップが奇跡的に無傷だったためにボディさえあれば復活出来るのだが、2人はブラックボックスの塊でケイン博士ですら解析出来ない部分が多く、2人の復活は今も難航している。

エックス「ルイン…君の武器だけど…今も俺が使っているよ…バスターはともかく最初はセイバーの使い方なんて知らなくて、ケイン博士から書物を借りたりしたけど全くサマにならなくて…恥ずかしいことかもしれないけどディザイアっていう俺の部下に教えてもらったんだ。今は少しだけマシになったと思う」

返事はない。
それはエックスも分かっている。
ただ、言いたかっただけだ。

エックス「俺は待っているからゼロ、ルイン…また一緒に君達と話し合える時が来ることを信じて、俺は戦い続ける。だから…安心して眠っていてくれ。今まで君達に迷惑をかけた分…俺も頑張るから…」

エックスは立ち上がるとハンターベースへと戻っていく。


































そしてハンターベースに戻った直後、オペレーターから通信が届く。

『エックス隊長!!西エリアの15ブロックに大型イレギュラー発生!!ただちに出動してください!!』

エックス「行くぞみんな!!気を抜くな…今回もかなりの強敵だぞ……」

情報によると、イレギュラーは採掘用の大型メカニロイドらしい。
こういうメカニロイドは落石があってもびくともしないように、装甲が頑丈に出来ているのだ。
エックスはZXコンポジットを握り締め、現場へ急行する。

エックス「俺は、どんな敵にも立ち向かっていける。ゼロとルインへの誓いがある限り…そしてこれがある限り…」

今日もエックスはルインの武器と共に、イレギュラー達と戦うのだった。 
 

 
後書き
エックスが剣術を習得。
後にこれはアルティメットアーマーやX6にも影響が出ます。
オリキャラ登場。
ディザイアはロクゼロのエルピスをモデルにしました。 
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