DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第7章:過去から未来への歴史
第6話:背水の陣
(エビルマウンテン)
デスピーSIDE
リュカ達一家が盛大な露払いをしてくれた土地を、エビルプリーストに向かい歩む俺達。
完全版の進化の秘法でパワーアップした奴の迫力は、流石の俺にも脅威であり、些かの気後れは否めない。
だが俺の隣には敵として命を狙った勇者の姿が……これ程頼もしい味方は居るまい。
そして俺達と共に力を合わせてくれる仲間が、直ぐ後ろから付いてきてくれる。
一人一人は弱い存在でも、それが集まり協力すれば大いなる力になる。
今の俺になら、その事が良く解る! 共に助け合う事を……助け合える仲間を得た事を……
俺はこの仲間達に感謝している。
この仲間達と親睦を深める手伝いをしてくれたロザリー・ラピスにも。
そして、その切っ掛けを与えてくれたリュカ達にも!
だから俺はリュカの方へ視線を向けた。
一番後ろから付いてくるリュカ一家の方を……だが、エビルプリーストまで30メートルくらいの所で、ビアンカが突然荷物の中からビニールシートを取りだし広げる。
そして、疲れ切って動けずリュカに足を引っ張られ引きずられていたウルフを除くリュカ家全員が、そのビニールシートの上に座り寛ぎだした。(ウルフはシートの端に重石の様に放置)
今朝用意してあったと思われる紅茶の入った魔法瓶から、各々の持つマグカップに注いでもらいながら……
「あ? 何歩みを止めてんだお前等……戦うんだろ!? さっさと行けよ」
「そうよ~、私達は十分に手伝ったんだから、後は貴方達で頑張りなさい。私達は残った携行食を食べながら、みんなの戦いぶりをここで見てるから」
これから最終決戦だというのに、まったり寛ぐ非常識ぶりに固まる俺達……
「はいリュカ」
コイツ等だけピクニックなのかと思うくらい、爽やかな笑顔で携行食を手渡すビアンカ……
「ありがとう。ほら、マリー達も食べろよ。この戦いが終われば、携行食の必要も無くなるんだ。残しても意味がない」
家長が優しく子供達に食事を勧めてる。
つーか、何時の間にかアローも奴等の中に混じっていた!
何ぃ~、この俺達との温度差は!?
「ウルフ君もヘバってないで食べなさい。紅茶も沢山あるんだからね」
「お、俺はいいっす。ここまで引きずられる間、たらふくビアンカさんのセクシーパンツを拝んでたから、もう胸がいっぱいッス!」
何アイツぅ~……立てないほど疲れてるのに、人妻のスカートの中を覗く余裕だけあんじゃん! 別ん所は元気そうじゃん!
「いだだだだっ! やめてリュカさん、マジで止めて!」
妻の下着を覗かれた夫が、怒りにまかせ覗き野郎の足を四の字固めで折檻する。
地面をバンバン叩き悶絶するのはウルフ。
「ギブ、ギブだから! マジでギブだからぁ! ごめんなさい! 忘れる……見た物は忘れるから許して! 俺、物覚えも良いけど、忘れるのも得意だから!」
こっちはこれから生死をかけた戦いが待ってるというのに、本当にふざけた奴等だ。
リュカの四の字固めに苦しみ地面をバンバン叩いて藻掻くウルフの姿に唖然とする。
「ふふっ……うふふふふっ」
しかし奴らの姿を見てミネアが突然笑い出した。
「あははははっ……馬鹿よねぇ」
それにつられてマーニャも笑いだし、ライアンやブライまでも一緒に笑う始末。
そして気付けば、俺もシンと顔を見合わせて笑っていた。
「おのれ……何処までもふざけた連中だ。部下を倒したくらいで勝った気になるな!」
心底リュカ一家のコントに心を奪われていると、エビルプリーストが悔しそうに唸り声を発した。
振り返り奴の姿を正面に捉えると、先程までの畏怖感が嘘の様に無くなっている。
笑いすぎて涙が出てきた目でシンを見ると、やはり笑いすぎの涙目で俺を見返してくる。
そして涙を拭い頷き合うと、お互い剣を抜き放ち歩みを進め出す。
悔しい事だ……リュカには教わる事が多数あるなんて。
デスピーSIDE END
(エビルマウンテン)
シンシアSIDE
私とロザリーはリュカさん一家が寛いでる場所まで退避し、シン達の戦闘を傍観している。
ビアンカさんが私達にも紅茶を注いでくれましたが、とても堪能する気にはなれません。
なんせ直ぐ前ではシンが戦ってるのですから……
戦闘開始直後に、シンが剣を掲げ凍てつく波動をエビちゃんに浴びせる。
これにより何らかの魔法効果は無効になり、後方のマーニャさん等から激しい魔法攻撃が浴びせられた。
その間にクリフトさん等からの補助魔法を受けたシン達前衛は、一斉に駆けだし物理的攻撃を仕掛ける。
しかしエビちゃんも黙って攻撃を受けるわけでは無く、素早く避けたり防御したりして魔法攻撃・物理攻撃のダメージを最小限に抑えてる。
そして素早くスカラを唱えると、近くに居たライアンさんとアリーナさんをその太い腕で弾き飛ばし攻撃した。
弾き飛ばされたライアンさん・アリーナさんの側にホイミンが駆け寄ると、ライアンさんを優先的に回復させ渋々アリーナさんも回復させてました。
でも……ホイミしか使えないのに、凄い回復力だ。
一進一退を繰り返すシン達を見て、その不安感から思わず視線をリュカさんに向けてしまう。
私の視線に気付いたリュカさんは、優しく微笑むと……
「しかし弱いねぇ……どっちも」
唖然とする一言だった。
思わず『アンタが戦え!』と言いそうになったが、それを言ってはシン達を完全否定する事になる。
悔しさを噛み締め私は愛するシンを信じ、彼等の戦いを眺め続けるしか無いのだ。
「だけどさぁ……デスピーは進化の秘法をエスタークに使うつもりだったんだろ? 自分達より強い“闇の帝王”をパワーアップさせて、コントロールが出来なくなったらどうするつもりだったんだろうか? それとも漠然と暴れさせ、全てを無に帰すればそれでOKって作戦だったのかな? それだと愛しのロザリーも殺されちゃうよねぇ……? 馬鹿……って事か、アイツは?」
確かにその通りだが、今言ってどうなる!?
「後で聞いてみれば。『お前は馬鹿か!?』って……」
「マリーさん酷いです。もっと言葉をやんわりにして下さいよ!」
「いや……やんわりにしたって、言いたい事は変わらないわよ」
マリーとロザリーの緩い口論を聞き、彼女の心理状態が気にかかる。
彼が心配じゃないのかしら? 干し肉を挟んだサンドイッチを頬張りながら、落ち着いた雰囲気で話している。
シン達へのハラハラと、リュカさん達へのイライラを抱えながら、状況の推移を伺っていると、戦闘状況に変化が現れた。
なんとエビちゃんの左腕をラピスが切り落とした!
今まで多様な魔法と炎を吐く口に合わせ、左右の腕の連係攻撃で苦戦させられていたが、攻撃方法の一つを失った事により、勝機が見えてきた。
やっぱり力を合わせて戦うシン達の方が、一枚も二枚も上な様だ。
「やっと戦況が動いたけど……大丈夫かねぇ、あの程度の奴に大苦戦してて」
「あ、私も思った。結局お父さんが最後は出張る羽目になるんじゃねーの?」
「お父さんもマリーも厳しい事言うのね。シンは頑張り屋さんだから、多分大丈夫だと私は思うけど……何か不安材料があるの?」
戦う事に対しては素人のリューノちゃんだけど、シンの事を良く評価してくれてて嬉しく感じるわ。
それに引き替えこの親娘は……
不安だったら手伝えってのに!
「リューノは楽観主義者ねぇ……ラスボスってのはね、本気を出し惜しみするキャラなのよ」
「そうそう。きっと『流石にやりおる……だが後悔するがいい! 私の本当の姿を拝む事になるのだから!』とか言って、変身するぜ(笑)」
う、嘘!?
今の状態だって苦労してるのに、変身して更に強くなったら、シン達に勝ち目が無いじゃない!
な、何でこの人達は笑ってられるのよ!?
ちょっと……助けてあげてよ!
シンシアSIDE END
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