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久遠の神話

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第百七話 決戦の前にその三

「わかった」
「左様ですか」
「三日後の夜の十二時だな」
「場所は」
「あの大学の総合グラウンドだな」
 場所についてはだ、加藤は自分から言った。
「あそこだな」
「そうです、あの場所で」
「懐かしい場所だ」
 加藤はその八条大学の総合グラウンドについてこうも言った。
「あそこはな」
「貴方の出身校の場所だからですね」
「そうだ、だからだ」
「あの場所のことがわかっておられるのなら」
「構わないな」
「後のお話はありません」
 声はこう加藤に答えた。
「それでは」
「そうだな、そして俺の願いだが」
「永遠の戦いですね」
「それでもいいな」
「構いません」
 全く、という声の返事だった。
「その願いで」
「ならいいがな」
「貴方は死ぬまで、ですね」
「戦っていたいからな」
「では次の生まで戦いが続いても」
「望むところだ」
 かえって、とだ。何でもないといった口調で返す加藤だった。
「それならな」
「戦えるのならですね」
「そうだ、次の人生でも戦えるのならな」
「構わない」
 全く、だというのだ。
「俺はな」
「ならいいのですが」
「何度も言うが俺は戦いが好きだ」
「その中での興奮がですか」
「命のやり取り、血、緊張、そうしたものがな」
 戦いの中にあるあらゆるものがというのだ。
「好きだ、だからな」
「貴方は戦われ」
「来世でもそうできればいい」
「左様ですか」
「だからあんたがまだ戦いを続けるのならな」
 来世でもだ、そうすればというのだ。
「俺は構わない」
「そのことを聞いて安心しました」
 声はほっとした様な口調で加藤に述べた。
「それなら」
「そうなのか」
「では戦われて下さい」
「そうさせてもらう、喜んでな」
「あの、ですが」
 帰る直前にだ、声は加藤にあらためて尋ねた。
「若しもですが」
「何だ、今度は」
「はい、貴方が戦いに敗れれば」
「その時はもう決めている」
「既にですか」
「どちらにしても剣士の戦いは終わりだ」
 最後に残っている者同士の戦いだからだ、次の戦いがまさに最後の戦いであることは最早自明の理である。
 加藤もこのことはよく認識している、それで声にもこう答えているのだ。
「それならだ」
「他の戦いにですか」
「生き残っていればな」
「そちらに向かわれますか」
「そして楽しむ」
 そうするというのだ。
「ストリートファイトなり地下世界での戦いもな」
「どちらもですね」
「戦う」
 まさに、というのだ。 
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