絶望と人を喰らう者
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プロローグ
とある地下の建物の中、建物中を響かせているアラームと、人間の悲鳴が辺りに木霊していた。
時折、ぐちゃっという肉を引きちぎったような音や骨を噛み砕いたかのような音が混じっている。
音の中心は、人間一人が余裕で入れるような大きな割れたカプセルがある部屋だった。
その部屋には壊れたテーブルや、地面に散らばっている書類のような物の他に、先程までまだ生きていたであろう人のような物の肉塊が大量の血と共に部屋中にあちらこちらと散らかっていた。
そんな凄惨な部屋の中に一匹、人間とは違う生物が居る。
頭部は前後に細長い形状をしておりエリマキトカゲみたいな傘が付いており、目は無い。口には大量の牙が生えていて、地面に転がっている内蔵を鋭い牙で貪っている。身体は爬虫類を思わせ、四足で地面に立っていた。
そして、その身体を覆っている外皮は黒色で硬質、尻尾の先端は刃のようになっており、血がべっとりと付いている。
「あぁ、クソッタレ…… 間に合わなかったか!」
誰かが自動ドアを開き、入って来た。
真っ青な顔で入ってきた科学服を着ている男は、この部屋の惨状を見て、ぼやいた。
「だからあれほどこの計画は危険だと説明したのに……!」
白衣を着た科学者らしき男はまだ気づいていなかった、まだ部屋に惨状を引き起こした本人が居る事に。
怪物と呼ぶに相応しいそいつは、男がドアを開けた瞬間に食事をやめて、素早く跳躍し、怪物は爪を使って天井に張り付いていたからだ。
じわり……じわり……っと、未だに気づいていない男に怪物は音を立てないよう慎重に近づく。
その時、パラりっと埃が落ちた。
男は自分の肩に突然埃が落ちた事に驚き、天井を見上げる。
そして、奴を見た。
「お、お前は」
男は真っ青な顔で冷や汗を垂らし、素早く懐から拳銃を取り出して、怪物に狙いを定める。
「あぁ…… そんな、そんな姿にしてしまって本当にすまない…… すまない」
怪物は彼の懺悔の言葉に耳を貸さず、自分が狙われていると分かるや、すぐさま銃を構えた男に向かって飛びかかった。
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