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Le monde brûlé.

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はじまりの物語
  Point de l'attaque de tourner.

「彼が...目覚めたようです。」
「そうか。ならば有効に使わねばな。」
「現在第2ブロックにてデータを取得しています。」
「何かあれば連絡しろ。」
「はっ!」
「いや...」
「どうしました...?」
「彼を見てみたい。」
「見てみる...とは?」
「いいから連れて行け。」
「でもっ...」
「構わん。」
「了解しました...」
彼らはユーラが置かれている第2ブロックに向けてを歩き始めた。
「しかし何故急にこうなった?」
「第5小隊の隊員によるとカジミール伍長が謎の防御壁に突撃して蒸発したのを見て突然という話でした。」
「防御壁...」
「彼らの技術力は予想以上です。人口が少ないとはいえ、これまで表面上に出ていたのは旧兵器でした。」
「通りであっさりと攻略が済んだわけだ。」
「そのようです。最終防衛ラインは強固です。それから...」
そこまで言うと技術者は俯いた。
「それから何だ?」
「恐らく防御のみならず、攻略兵器もあるかと...」
「我々の技術力のみでの勝算は...?」
「ほとんど...ありません。」
「ならばあの古代兵器に頼るしかないのか...」
「あれもいまだ全容を把握していません。どこまで戦力となるか...」
「そうか...」
「ここです。」
彼が指紋、網膜スキャンをすると、厚い鉄でできた5枚の隔壁が開く。
その広大な研究施設の中央に、彼がいた。彼は浮いているような状態だった。その瞳は閉じていながらも視線はこちらに向いているようだった。
「本当に...彼か...?」
「そうです。」
「美しい...なんと美しいんだ...」
そこにいた彼は光る翼を持っていた。しかしそれはボロボロで、ところどころ欠け落ちていた。
「そうか...これが...」
「あの島から回収した石版を解読したところ、これはこの世界に危機が迫った時にそれを救うために作られたと。」
「作られた...?誰が作ったんだ...?」
「よくわかりません...」
「ふむ...面白い...」
「しかし彼は意識が戻った時に何をするかまったく予測がつかないのです....」
「データがとれたら隔離しておけ。厳重にな。」
「了解しました。」
それを聞くと彼は研究員たちに大声でその旨を伝え、どこかへ行った。
「...私は司令室に戻る。」
司令は一人で司令室へ戻った。
ちょうどその時だった。
「高速で飛来する物体を捕捉!」
「何っ...!?」
「従来のものではありません...速い...!」
「迎撃する!各員戦闘配備につけ!」
「到達まで後どれ位だ」
「およそ5分...」
「十分だ。」
「何だ!?」
レーダーを眺めていた者が叫んだ。
「どうした?」
「第2ブロックに高エネルギー反応!」
「何事だ!」
「司令室!司令室!」
何者かから通信があった。
「何があったというのだ!」
「被験体が...脱走しました...」
「あの施設から...バカな...」
「映像、出力します!」
巨大なモニターに傷ついた翼を広げて飛ぶユーラの姿が映る。
「あれは...」
「すごい...」
司令室の者が口々に感想を言う。しかしその様子は少しおかしかった。
「ふらついて...いる...?」
彼の目は赤くなかった。
「ボギー、さらに加速しています!」
「まだ速くなるというのか!?」
「ダメです!配置間に合いません!」
「ボギーから何かが発射されました!」
「到達までおよそ20秒!」
その瞬間だった。
静かに、ユーラを中心として、光の輪のようなものが水平に広がっていった。
「高エネルギー反応、被験体からです!」
「これは...」
それはまるで水の波紋のようだった。
「飛翔体に接触、飛翔体ロスト!」
「ボギー、ロスト...すごい...」
「被験体の翼が消えました!落着します!」
そして彼は第2ブロックへと落下した。
「とりあえず状況は収束したか...」
「第2ブロックの被害を確認しろ!」
「確認済みです!死傷者ゼロ!多少施設が破壊されましたが大した被害ではありませんでした。」
「こちら沿岸警備隊、飛行物体の回収に向かいます。」
「全部隊以上無し、警戒を解除します。」
「何かあれば随時報告しろ。」
「了解!」








「ぅ...ぁ...」
眩しい光が目を開けさせようとしなかった。
「あれ...基地...」
何だかそこは居心地が悪かった。
とりあえず起き上がろうとしてみる。
「っ...!」
激痛が背中を走る。
「何...これ...」
何だか慌ただしい空気だ。
「おいっ!何でもいいから被験体を回収しろ!」
遠くでそう叫ぶのが聞こえた直後、体が持ち上げられた。
「痛い痛いっ!」
「っ!?起きてる!?」
「降ろしてください!一体何事ですかっ!」
「本部、被験体に意識が戻っています。通常通りのようです。」
「了解。厳重に運び出せ。」
「しかし...負傷しているようで...」
「担架でも持って行ってやれ。」
「了解です!」
その後、担架に乗せられてユーラは第2ブロックのシェルターへ運び込まれた。
「何があったんですか...」
「君は少し...変わっている。」
「変わって...?」
そこに現れたのはヴィーグエルンの司令官だった。
「司令!危険です!わざわざ入らずとも...」
「構うな。」
「でも...」
「構うなと言っている。」
「はっ...」
「下がれ。」
それを聞くと警備の男は出て行った。
「さて...」
「何事ですか...?」
「君は...どこで何をしていた?」
「それが全く分からないんです...」
「違う、敵地で何をしていたと聞いている。」
「敵地...あっ...カジミール...アルノワ・カジミール伍長は!」
「彼は帰って来なかった。」
「そんなっ...そんな...」
「そうか...彼と君は友達か...」
「友達なんてものじゃありません...彼とはしんゆ..」
「黙れ。」
「えっ...」
「ここは戦場だ。人などいくらでも死ぬ。」
「....」
「それくらいで一々覚醒していたら人類が滅ぶぞ!」
「覚醒...?」
「君は...そうか、君は...自分の事が分からないのか...」
「...?」
「いや、気にするな。」
「僕は...」
「司令!」
スピーカーから声がする。
「私は君に何も教えることはない。ただこれだけは覚えておけ。


――人は、いつか死ぬ。――


それだけだ。」
「当たり前のことじゃないですか...」
「ただ、それに該当するのは人だけではないかもしれない。しかし、それに該当しないものもいるかもしれない。」
「....」
「では、また。」
「ちょっ...」
そこで扉は閉じられた。
「該当しないもの...死なないもの...?」
考えれば考える程訳がわからなくなる。ユーラが束縛から解かれ、自由行動を許可されたのはそれから6日後のことだった。
その後、彼は第5小隊から外され、別の部隊への配属が決まった。
研究部隊。
何かよく分からない響きだが、前線でデータを取るのと新兵器の開発が目的らしい。研究所に入ったときは、詳細の分からないものばかりだった。


ある日施設内をうろついていると、突然目の前の男がユーラを見つけるなり驚いた様子でこちらを見て。
「こっ...こいつっ...こいつってあのっ...」
そう言って50ほどの男は退いた。
「おいっ!どうした!」
「...?」
ユーラは訳も分からず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「聞いてないのか...今日からここ配属だ。」
「本当か...でもこいつは...ぐっ!?」
後ろから来た男が蹴りを入れた。
「悪いね、うるさい奴で。」
「は、はい...」
「俺はここの監督をしている者だ。まあ、ここには変わり者が多いが仲良くしてやってくれ。」
その男はにやっと笑ってどこかへ歩いていってしまった。自分は何をすればいいのか、全く分からないまま忙しそうな施設を眺めていた。
「何でこんなに忙しそうなんだろう...」
そう思ってよくよく見ていると、なにかの破片らしきものを運んでいるようだった。
「何だろう、あれ...」
大きな破片が運び込まれた部屋へ入ってみる。
「...?」
そこには小規模なクレーンなどがあった。そしてその部屋の中央には、飛行機らしきものがあった。
「おう坊主!邪魔だ!どけっ!」
「うわっ!?」
走って出て行く筋肉質の男に跳ね飛ばされ、よろけながらも飛行機の方へ歩みを進めていく。
「大きい...」
吊られたその物体の真下まで来て、見上げてみる。
「すごいなぁ、これ...何だろう...」
その瞬間だった。
「あっ、お前さっきの...」
「あ、監督さん!」
彼はユーラを見つけるなり駆け寄って言った。
「勝手に色々なところに入るんじゃない!特にここは関係者以外立ち入り禁止だ!」
「で、でも...」
「出て行け!」
ユーラは担ぎ上げられ、部屋から放り出された。
「ちぇ...」
結局暇になったユーラは射撃場へ向かい、許可を得て射撃練習をしていた。


そんなこんなで数日が経ったある日の昼下がり、全体放送が流れた。
「各員、10分以内に屋内に退避せよ!繰り返す。各員、作業を中断して屋内に退避せよ!」
「何だ...?」
5分して、サイレンがなり始める。それほど外で作業している人間はいないので、退避はすぐ終わったのだろう。1分程でサイレンは止んだ。
「これから30分、屋外へ出ることを禁止する。全員窓や壁から離れていること。」
「何があるんだろう...」
気になったユーラは窓から外を見ていた。
1分、2分、3分...
何も起こらなかった。
「何だ、何でもないんだ...」
そう思って窓を開けた瞬間、豪風が吹き込んでくる。
慌てて窓を閉め、おとなしく30分待つことにした。
そして30分後。
「警報解除。外出を許可する。」
その放送の少し後、人々がわらわらと外に出始める。ユーラも外に出て、基地内を色々探しまわってみたが何もなかった。
「何だったのかな...」
不思議なことばかりだった。それから数ヶ月、同じようなことが何度もあった。しかし、誰ひとりとしてその目的を知る者はいなかった。 
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