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ピラミッド

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第二章

「皆幸せそうだな」
「はい、民達はです」
「楽しく働いています」
「いいことだ、ピラミッドの作業も進んでいるしな」
 ファラオはこのことについても喜んでいた。
「悪いことはない」
「それで民達は流行を求め」
「明るく過ごしていてです」
「これはよくないことですが」
 神官達はここで難しい顔になってだ、ファラオにこう報告したのだった。
「ピラミッドの石に落書きをしたり」
「そうしたことも」
「ははは、そんなことはいい」
 どうでもいいとだ、ファラオは民達の落書きを笑っていいとした。
「別にな」
「別にですか」
「構いませんか」
「そんなことはいい、しかしだ」
「しかし?」
「しかしとは」
「そうか、民達が落書きをしているのか」
 その話を聞いてだ、ファラオは思わせぶりな笑顔になった。
 そうしてだ、神官達にこんなことを言った。
「では余もだ」
「ファラオ?」
「ファラオもですか」
「うむ、やってみるか」
 こう言うのだった。
「落書きをな」
「あの、その様なことは」
「ファラオがされるにはどうかと思いますが」
 神官達はファラオのその言葉を聞いてだ、一斉に顔を曇らせてこう言った。
「落書きなどという下賎なことは」
「少し」
「駄目か、ではだ」
「では?」
「それではといいますと」
「余の眠る部屋に少し書いておこう」
 ピラミッドの中のだ、ファラオが眠るその柩の間にだ。
「直々にな」
「ですからその様なことは」
「ファラオとして」
「いいではないか、どうせファラオの間には誰も入らぬ」
 ピラミッドのそこには、というのだ。
「だから何を書いてもな」
「安心だというのですか」
「何を書かれても」
「そうだ、見られぬ」
 安心しきった顔での言葉だった。
「だから書いておこう」
「そこでそうされるのは」
「どうかと思いますが」
 神官達は難しい顔になるがそれでもだった、ファラオは悪戯心を出してそうしてだった。自身が眠る部屋に落書きをしたのだった。
 この時はこれで終わった、何千年もの間。しかしこのピラミッドが発掘されてだ。ファラオの部屋に考古学者達が入り。 
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