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レインボークラウン

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第百三十五話

                   第百三十五話  林檎を
 ここでだ、梨花が皆に言った。
「林檎だけれど」
「林檎?」
「林檎がどうしたの?」
「これ入れるけれどね」
 それでもだというのだ。
「そのまま入れるんじゃないわよね」
「ええ、それはね」
 美樹が梨花に答える。
「皮を剥いてね」
「いや、皮は剥かないで」
「林檎の皮は?」
「そう、それはね」
「どうしてなの?」
 美樹は梨花に何故林檎の皮を剥かないのか、その理由を尋ねた。
「皮に何かあるの?」
「林檎の皮のすぐ下が一番美味しいし栄養が多いからなの」
 梨花はその理由をすぐに答えた。
「それでなの」
「皮のすぐ下が一番美味しいのね」
「しかも栄養もあるから」
「いいこと尽くめなのね」
「しかも擦ったらね」
 そうすれば、というのだ。既にすり器は出されている。山葵や山芋をする時に使うあれが出されているのだ。
「もう皮も一緒でしょ」
「確かにそうね」
「だからね」
「林檎の皮は剥かないで」
「切るだけでね」
「中の芯だけ外してなのね」
「そう、そうしてね」
 そこだけを切って取ってというのだ、梨花の言葉は的確だった。
「後はすりましょう」
「わかったわ、それじゃあね」
 美樹は梨花のその言葉に頷いた、そしてだった。
 実際に林檎の皮は剥かず切って芯と果肉のところだけを分けてだ、そのうえですった。そうしてそのすったものをだ。
 カレーの中に入れる、梨花はそれを自分もしてからにこりと笑って言った。
「これでね」
「美味しいし栄養があるし」
「林檎を一番よく引き出せるわ」
「林檎の皮は剥かなくていいのね」
「どうしても剥きたいのなら薄くよ」
 そう切って、というのだ。
「青森の人か長野の人がするみたいにね」
「どちらも林檎ね」
「林檎の美味しさを栄養の為には」
「薄く切ることに自信がなかったら」
「皮ごとでもいいのよ」
「そういうことね」
「そうなの」
 こうして林檎の皮はそのままですられてカレーに入れられてだった、七人はカレーの調理を続けていった。


第百三十五話   完


                         2014・5・23 
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