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久遠の神話

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第百五話 テューポーンその十一

「戦いを。そしていざという時は」
「あの方をですね」
「お姉様が諦めれないなら」
 その時はというのだ。
「私が止めます」
「必ずですね」
「そうされますね」
「その時は私がすることになります」
 覚悟も見せてだ、聡美は言った。
「貴方達にもう無益な戦いはさせません」
「それが銀月さんの戦いですね」
「愚かでした。戦いを終わらせる為には」 
 上城を見ながらだった、聡美は己のことも話すのだった。
「時として自分も戦わないとならないのです」
「そうですね、僕もこの戦いの中でわかりました」
 上城も聡美のその言葉に応えて言ったのだった。
「戦いを終わらせないのなら」
「それを聞こうとしない、止めない相手にはです」
「自分が、ですね」
「そうです。戦い」
 そしてというのだ。
「お止めすることもです」
「必要ですよね」
「例えお姉様であっても」
 誰よりも大切に思っている相手でも、というのだ。
「そうしなければならなかったのです」
「では銀月さんも」
「はい、必ず」
 その時はというのだ。
「あの方をお止めしますので」
「ではいざという時はですね」
「お任せ下さい、それでは」
「いよいよですね」
「貴方の最後の戦いの時です」
 加藤、彼とのだ。
「それに向かわれて下さい」
「わかりました、じゃあ僕はですね」
「その戦いに専念されて下さい」
 心をそこに向けよ、聡美は上城に穏やかな声で告げた。
「そうされて下さい」
「そうですね、それが一番ですね」
「では」
 ここまで話してだった、聡美はこう言った。
「私はこれで」
「帰られるのですね」
「はい、そうします」
 こう上城に言ったのである。
「帰りますので」
「わかりました、それでは」
「はい、では僕も」
「闘いが終わってですね」
「このままここにいても何ですから」
「では、ですね」
「山を降ります」
 そうするというのだ。
「そうします」
「そうですか。ただ」
「ただ?」
「この山はいい山ですね」
 山の話になった、聡美は今自分達がいる六甲山を見回して言ったのである。
「非常に」
「そうですか」
「はい、綺麗でいい山ですね」
「寒くないですか?」
「特にそうは思いませんが」
「そうですか」
「またこの山に来たいですね」
 聡美は今も山を見回しつつ上城に話すのだった。
「是非」
「そうですか、それじゃあ今度ですね」
「またこの山に登ります。私は山が好きですから」
「狩りの女神でもあるからですね」
「そうです、自然が大好きです」
 実際にだ、聡美の今の表情はかなり満ち足りている。その顔でだった。
 山を下りようとする。だがその聡美に樹里が声をかけた。
「一緒に帰りませんか?」
「三人で、ですか」
「はい、そうしませんか?」
「一人でいるよりもですね」
「銀月さんは大丈夫でしょうが」
「山には危険が多いと」
「それにです」
 実は山の危険は問題なかった、危うい足場や動物達についてはだ。それにおかしな登山者もいたりするが。 
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