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転生者物語・夜天の主とトラック運転手

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第三話


はやてが俺の家に暮らす事になって一週間が経った。
この日、俺は行きつけのバーでかつての“仲間達”と会う事になっている。バーの前に到着すると、俺は扉を開けて中に入った。

「お久しぶりです。ジンライ司令官。」

すると、入るやいなやスーツ姿の青年が挨拶してきた。

「ライトフット。俺はもう司令官じゃないんだから、その呼び方はいいって言っただろ?」

こいつの名前はライトフット。世界的に有名な自動車メーカーの若き社長で、デビルZとの戦いでは司令官をしていた俺の副官だった元ゴッドマスターだ。三勢力の中では教会に所属している。

「ですが、私にとって今でもあなたは尊敬出来る司令官ですから。」

「大企業の社長にそう言われると、恐れ多いな。」

ライトフットは教会の人間にしては珍しく、尊敬に値する相手ならば例え悪魔だろうが堕天使だろうが敬意を払うような奴だ。まあ、そんな所が好印象なんだがな。

「お。二人はもう来てたみたいだな。」

すると、そこへ新たな客がやって来た。俺は早速声を掛ける。

「よお、ロードキング。最近調子はどうだ?」

こいつはロードキング。悪魔側の元ゴッドマスターで、世界的に有名なレーサーだ。

「ああ。相棒が宇宙に旅立った直後は悪かったが、最近キングの名を取り戻した所だ。」

「女性問題でもな。」

「おい、何でそれを・・・」

「こっちでも大スキャンダルになってたんだよ。」

サーキットの王者、ロードキング。そんなこいつの唯一の決定が女好きな所だ。

「おっと、俺が最後か。」

そこへ、元ゴッドマスター最後の一人レインジャーがやって来た。こいつの所属は堕天使で、本職は森の自然を守るレンジャーだ。
これで、三勢力+αのゴッドマスターは全員集合した事になる。
ちなみに、+αと言うのは俺の事だ。俺は三勢力ではなくサイバトロン所属で、司令官に選ばれたのも三勢力とは中立の立場に居るからだ。まあ、それだけじゃ無いんだが、それはまた今度話そう。

「それで、私たちを呼んだ理由は何ですか?」

四人でテーブル席につくと、ライトフットが聞いてきた。

「実は、この子について聞きたくてな。」

俺はそう言って懐からはやての写真を取り出す。すると、それを見たロードキングとレインジャーが反応した。

「この子は、八神はやてじゃないか!」

「何で写真を持ってるんだ?」

「やっぱ、知ってたみたいだな。」

俺を含むゴッドマスターは敵味方問わず皆転生者だった。だから、もしはやてが他の物語の世界の住人だとすれば、誰かが知っている可能性を考えた訳だ。

「この子がどうかしたんですか?」

そんな中、はやての事を知らない様子のライトフットが尋ねてくる。

「実はな・・・」

俺は、はやてとの出会いを三人に説明した。




「なるほど。そんな事があったんですか。」

説明を聞いたライトフットが納得しながら言う。

「しっかし、はやてにお世話してもらうとか、羨まし過ぎんだろ!」

ロードキングは何か嫉妬の篭った視線をぶつけてきた。

「歩くことが出来ていたと言う事は、彼女がいた時間軸はA'sとStrikersの間の空白期と言う事か。」

そして、レインジャーは何やら冷静に分析している。

「それより、知ってんのならこいつについて詳しく教えてくれないか?」

何も知らない俺そっちのけで嫉妬されたり一人で分析されても困るだけだ。

「済まないな。じゃあ、俺が説明しよう。」

そして、レインジャーがはやてについて説明した。
まず、あいつが居た世界(作品)は『魔法少女リリカルなのは』と言う魔法少女もののシリーズだと言う事。そして、出て来たのは第二作からと言う事。そして、夜天の魔導書や従者であり家族でもあるヴォルケンリッター。あの銀髪の女、リインフォースについて説明された。

「つまり、はやては魔法少女で、銀髪の女ははやての魔導書に宿る妖精って事か?」

「少し違うが、大体そんな感じだな。」

俺の解釈をそう肯定するレインジャー。その時、ロードキングが俺に聞いてきた。

「そう言えば、はやてはお前と会った時、シュベルトクロイツと夜天の魔導書は持っていたのか?」

「へ?そう言えば手ぶらだったな。」

「それはおかしいぞ!シュベルトクロイツはまだしも、夜天の魔導書がはやての手元に無いのは変じゃないのか!?」

「俺に聞かれてもな・・・」

こっちはその手のオカルトは専門外なんだ。

「あの、一ついいですか?」

その時、ライトフットが聞いてきた。

「何だ?」

「その夜天の魔導書・・・と言うより闇の書は持ち主が死ぬと次の持ち主の所へ行くんですよね?」

「ああ。夜天の魔導書に戻ってからは多分失われている機能だが、そうがどうかしたか?」

俺の代わりにレインジャーが答えた。それを聞いたライトフットはこう言う。

「実は、闇の書の在り方が少し神器(セイクリッドギア)に似ていると思いまして。」

神器(セイクリッドギア)。それは“聖書の神”が作ったシステムで不思議な能力を所持者へ与えるものだ。

「おい、ライトフット。まさか夜天の魔導書が神器に変化したとか言うんじゃ無いだろうな?」

「そういう可能性があると言う話ですよ。」

ライトフットが言わんとしている事に対し、ロードキングが睨みつけるが、ライトフットは冷静に答える。

「確かに、世界の修正力を受けたと考えれば、あながち否定する事は出来ないな。」

一方、レインジャーは結構真面目に考えていた。

「でもよ、仮にその夜天の魔導書っつうのが神器になってたとしても、俺たちじゃ確かめるのは無理だしな・・・」

どう言う理屈かはよく分からないが、人間に神器が宿っているかどうか見て分かるのは人外だけらしい。
だが、元ゴッドマスターである俺たちは皆人間だ。ロードキングは何度も悪魔にならないかと誘われているが、皆断っている。

「確かめてもらうとしても、教会はきっと魔導書の神器なんて異端扱いするでしょうし・・・」

「悪魔は何が何でも眷属にしようとするだろうし・・・」

「堕天使も自分の所に引き入れるか奪おうとするだろうな。」

三勢力所属のゴッドマスター達は自分達が籍を置く勢力の闇も理解していた。

「とりあえず、八神はやてはサイバトロンに預かってもらう事にしましょう。」

そして、やはり中立勢力に任せるべきだと判断したライトフットが言う。ロードキングとレインジャーも同じ意見だった。

「結局、俺があいつの世話をする事になる訳か・・・」

「世話されるの間違いだろ?」

うるさいぞ!ロードキング!!




ひとまず、はやてを何処が世話をするかが決まり、今度はあいつの居た世界についての話題になった。

「やっぱ派遣転生者達に聞くのが一番か?」

「まあ、そうなるな。」

派遣転生者とは、悪質な神が送り込んでくる悪質な転生者に対応するため、抑止力となる正常な転生者の少ない世界に派遣されてくる転生者だ。
現在、正常な転生者の俺たちが戦う力を失っているので、この世界にも結構な数の派遣転生者が来ている。

「元の世界に帰してやれるのなら、帰してやりたいけどな・・・」

「ヴォルケンリッターが居なかったあの状態を考えると、何かあったとしか思えないな。」

俺のつぶやきを聞いてロードキングが神妙な顔で言う。

「最悪の場合、彼女の世界は既に滅んでいる可能性もあるな。」

「縁起でもない事をいうんじゃねえよ、レインジャー。」

「済まないな、ジンライ。状態が状態なせいか、どうも悪い方向にばかり考えてしまう。」

謝るレインジャー。そんな中、ライトフットが俺に聞いてきた。

「とりあえず、派遣転生者への報告はジンライ司令官がしてくれますか?」

「任せておけ。丁度、仕事であいつらの仲間に会いに行く所だ。」

派遣転生者の多くは三勢力の少なくともどれか一つを良く思っていない。ゆえに、まともに相手をしてもらえるのは中立勢力であるサイバトロン所属の俺だけだった。





《三人称Side》

その頃、ホークの家でははやてと一誠そして秀太が遊んでいた。
長距離トラックの運転手であるジンライは帰ってこない事が多いので、普段はやてはホーク、一誠、秀太のうち誰かの家で世話になっている。
休日の今日は皆で集まり、さらにはやての指導で腕を上げたホークが料理を振る舞う事になっている。そして、出来上がるまで待っている三人はゲームで対戦をしている所だった。

「よっしゃー!これで私は大金持ちや!!」

「何で俺は全く就職出来ないんだ・・・」

「僕は何か普通だし・・・」

何故か人生ゲームで。
現在、はやては職業:公務員で先程宝くじが当たって大金持ちに、一誠は就職できず借金ばかりが重なり、秀太は職業:サラリーマンで手持ちの金額は良くも悪くも普通であった。

ピンポーン

その時、玄関のチャイムが鳴った。

「はーい。」

料理で手が離せないホークに代わって秀太達が出る。そこに居たのは、眼鏡を掛けた男性だった。

「あ、ランダーさんだ!」

「久しぶり!!」

男性を見た一誠と秀太が駆け寄る。

「二人とも、相変わらず元気だな。」

ランダーと呼ばれた男性はしゃがんで二人の頭を撫でた。その時、家の奥から調理に一区切りをつけたホークが割烹着姿(!?)のまま出て来る。

「やあ、ランダー。どうしたんだ、急に。」

ホークもまた、彼とは知り合いのようだった。その時、はやてがホークに聞いた。

「ホークさん。この人は?」

「ああ。そう言えば、はやては初めて会うんだったな。彼は私やジンライの仲間で、自動車設計技師をしているランダーだ。」

「よろしくな、はやてちゃん。君の事はホークやジンライから聞いているよ。」

「はい。よろしくお願いします。」

丁寧にランダーにお辞儀するはやて。そんな風にランダーの紹介が終わった所でホークが彼に聞いた。

「実は、話があるのはこれについてなんだ。」

そう言ってランダーは右手に持っていた物を玄関に下ろした。それは旅行の際にペットを入れるケージだった。ランダーがそれを開くと、そこから出て来たのは黒と白の子猫だった。

「可愛い!!」

早速、はやてが黒い方の子猫を抱き上げる。一誠と秀太も白い子猫の頭や身体をなでた。
そんな三人の様子を見ながらホークがランダーに尋ねる。

「どうしたんだ、その子猫?」

「いやあ。この前偶然やせ細って衰弱している所を拾ったんだよ。それで、動物病院に預けて元気になったから引き取ろうと思ったんだが、俺のマンションはペット禁止でな。代わりに引き取ってはくれないか?」

「そう言う事なら構わないさ。」

「済まないな。」

「で、この猫達の名前は?」

「まだつけて無いよ。世話をするのはホークだから、ホークにつけてもらおうと思ってな。」

「なるほど。さて、何にしようか・・・」

二匹の子猫にふさわしい名前が無いか考えるホーク。その時、はやてが彼に言った。

「ねえ、ホークさん。その子猫達の名前、私たちで考えてもええかな?」

「ん?別に構わないが・・・」

「やったー!ほな、何にしようかな・・・」

子猫の名前を考えるはやて。すると、早速秀太がアイデアを出した。

「じゃあ、シロとクロって言うのはどうかな?」

「「ニャッ!?」」

すると、二匹は文句ありげに鳴き声を上げた。

「秀太君。それ、そのまんまやん。」

さらにはやてに厳しいツッコミを入れられてしまい、秀太はいじけてしまった。

「一誠君はどうや?」

「え?と、とりあえず白い方はタマって言うのはどう?」

「無難やけど、シロよりはマシかな・・・」

「フシャー!!」

一誠のアイデアにはやてはあまり文句は無かったが、白猫の方はそうでは無いようだ。

「あ、言い忘れてたが、その二匹は女の子だからな。あと、姉妹らしい。出来れば可愛い名前をつけてやってくれ。」

その時、ランダーが思い出したように言った。

「可愛い名前かあ・・・」

ランダーの注文を聞いて知恵を絞るはやて。だが、ふと二つの名前が思い浮かんだ。

「リーゼアリアに、リーゼロッテ・・・」

「はやて?」

突然、名前を呟いたはやてに秀太が聞いた。

「何かよう分からんけど、猫の姉妹って聞いてこの名前が思い浮かんで来たんや。」

「リーゼアリアにリーゼロッテか。お洒落でいいと思うよ。」

「そうだね。ちょっと長い気もするけど。」

一誠と秀太は概ね賛成のようである。

「長いと思うんなら、普段は縮めてアリアとロッテって呼ぶんはどうかな?」

「それはいいね!」

「じゃあ、これで決定かな。でも、どっちがアリアでどっちがロッテにするの?」

「そやなあ・・・ランダーさん。この二匹ってどっちの方がお姉ちゃんなん?」

はやてに質問されたランダーは少し困った表情をする。

「流石に、そこまでは動物病院の先生には聞いて無いんだが・・・そうだな。黒い方が少し身体が大きいから、そっちがお姉さんと言う事でいいだろう。」

「そんないいかげんなのでいいの?」

「仕方ないだろ。本当に分からないんだから。」

呆れの篭った視線を向けて来る秀太にランダーはそう答える。

「ほな、黒い方がお姉ちゃんのリーゼアリアで、白い方が妹のリーゼロッテやな。」

「よし。名前も決まった事だし、そろそろ食事にするか。ランダー、君も食べていくか?」

「ああ。ご馳走になるとしよう。」

ホークの誘いに乗ったランダーは今まで開けっ放しになっていたドアを閉めてホークの家に上がった。




ホークの家から少し離れた場所にある家の屋根の上。そこでホークの家の玄関の様子を眺めている二人が居た。黄金の鎧を身に纏った銀髪の少年と黒いスーツ姿の男が居た。

「本当に、あの八神はやては転生者じゃなくて、リリカルなのはの世界から飛ばされてきた本物の八神はやてなんだな。」

少年が男に聞いた。すると、奴はふざけた調子で答える。

「そうだよ〜。彼女がここに来るまでの間にはもう聞くも涙、語るも涙な壮絶ストーリーがあるんだから。」

「なるほど。で、あの二匹の猫が黒歌と白音で間違いないんだな。」

「そうだよ〜。なんか、悪魔に拾われる前にあのメガネの人に拾われたみたいだね〜。」

「ああ。しかし、はやての奴。いくら猫の姉妹だからってあの勇者王姉妹の名前をつける事は無いだろ・・・」

少年は呆れながらため息をつく。そんな彼に男は言った。

「まあ、はやてちゃんは記憶を失ってるみたいだからね。で、どうするの?」

「決まってる。悪役に彼女達を襲わせて、ピンチの所に俺が颯爽と現れるんだ。この戦利品を使ってな。」

そう言って、少年は銀色のメダルを取り出した。



続く

 
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