| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百四話 最後の戦いの前にその十五

「俺はあんなことはしない」
「絶対にだね」
「俺は俺の必要なものだけ手に入れる」
「トレーニングもだね」
「その為にしている」 
 あくまで、というのだ。
「それだけだ」
「成程ね」
「スピード、柔らかさも必要だ」 
 身体のそれもだというのだ。
「無駄な硬い筋肉なぞな」
「あんたにとってはだね」
「害でしかない」
「言うねえ、まあ自然に鍛えた素早い筋肉がだね」
「一番強い」
「だろうね、俺もね」 
 ここでだ。親父は自嘲めかしてこんなことも言った。
「若い頃は陸上部でね」
「走ってだな」
「そう、バネみたいだったんだよ」
 加藤に笑って話す。
「昔はね」
「学生時代はか」
「大学まではね」
「そうだったのか、親父さんも」
「それが今ではね」
 苦笑いではなかった、包容力のある受け入れている笑顔での言葉だった。その言葉を出しながら自分の腹を叩いて言う、結構太いそれを。
「この有様だよ」
「太ったっていうんだな」
「女房にも言われてるよ、これ以上太ったら」 
 巷の中年がよく言っている言葉をだ、親父も出した。
「よくないってな」
「太ってか」
「それで」
「そう、それでだよ」
 まさにというのだ。
「飲むのも食うのも抑えろってな」
「節制しなければ健康を害する」
「よくないよな」
 全く以て、と言うのだった。
「太り過ぎは」
「そこまではいかないと思うが」
「いやいや、ビールの飲み過ぎでさ」
 それでだというのだ。
「痛風がね」
「それとだな」
「コレステロールの多いな」
「肉の中でもか」
「それに注意しろって言われてるんだよ」
 自分の妻からだ、そう言われているというのだ。
「何かとな」
「それは大変だな」
「あんた結婚は」
「まだだ」 
 加藤は実にあっさりと親父に答えた。
「それはな」
「そうか、気楽なんだね」
「気楽といえば気楽だな」
「そうだね、独身貴族はそれでな」
「するつもりはあるがな」
 相手は見つけてはいないがだ。
「今のところは一人だ」
「そうだね、それで俺も女房に言われてるんだよ」 
 結婚したその結果、というのだ。
「酒と食いものには注意しろってな」
「実際に注意しないとな」
「身体によくない、それにだ」 
 加藤はその焼酎を飲みつつ述べた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧