戦姫絶唱シンフォギア~another of story~
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EPISODE3 撃槍と聖剣
「遅いなぁ・・・・」
新刊の漫画を買うという用事を済ませ帰宅した未来。しかし同室の住人である響はまだ帰って来ていない為碌に晩飯も食えない。せっかく用意しても冷めてしまってはいけないと思い用意したコンビニ弁当がテーブルの上に置かれている。
帰宅してからかれこれ一時間。いまだ姿を現さないどころか連絡もよこさない親友に些か不満とよからぬ妄想に思考を走らせる。
「・・・・まさか、二人でよからぬことを!?でも響と飛鳥に限ってそんな・・・・いやでも万が一ってことも…あ~、もう!どうして私がこんなやきもきしなきゃいけないのよォ!?」
誰もいない室内で一人わけのわからない言動をする未来。そしてようやく冷静になったのかそのことと危ない妄想に顔を真っ赤にして俯く。
「うぅ~・・・・早く帰ってこぉい!」
♪
聴こえた歌に驚愕する。
それは、戦いの為の歌だったから。
聴こえた歌に驚愕する。
それは、自分しか知らない筈の歌だったから。
聴こえた歌に驚愕する。
それは、目の前の幼馴染から聴こえてきたから。
まばゆい光りが飛鳥を包む。〝輝く〟ということを音にしたらこんな表現だろうなという音と共に少年は光を纏う。対し少女はその輝きとは違い、こみ上げる衝動を制御しようと膝を着く。歯を食いしばり、呻る。
その身に纏うは戦場に舞う防人の鎧。音を奏で、災悪を撃ち滅ぼさんとする者。選ばれし者のみが纏う事を許される聖遺物。
それは、神の振るいし槍。
それは、王が振るいし剣。
「響、今ガングニールって…」
「飛鳥こそ、エクスカリバーって、何…?」
互いに思考が追いつかず訳が分からないといった感じで見合う。
「っ、細かいことは後回しだ。ギアが使えるなら好都合、やるぞ響!」
「え、やるって、まさか…」
「あぁ。〝歌うんだよ(たたかうんだよ)〟!」
そう言って飛鳥は本当に歌いだす。迷いもなく、躊躇いもそこには何もない。ただあるのは、目の前の脅威を退けるという意思だけ。どこまでもまっすぐで純粋なその闘気は歌の歌詞にも表れていた。
聖剣、エクスカリバー。アーサー王の使っていたとされる伝説の聖剣。しかしながら今飛鳥の身に着けているそれはエクスカリバーと言うには少々イメージが異なる。普通、その名前を聞いて誰もが想像するのはまさに名の通り〝剣〟なのだが、それらしいものは握っていない。あるのは、赤い装甲のみ。手甲、脚部、そして上半身部に備わった深紅の装甲。機械的な動作でスタイリッシュなデザインのそのパーツが展開され、青い光りの粒子を散らしながら飛鳥は舞う。ノイズを灰に変え、消し去っていく。その光景を見ていた響はただ魅入って声をもらす。
「綺麗・・・・」
思わず、そうこぼした。
「響何やってんだ!?ボサッとしてねーでお前も戦え!」
「え、あ、でも…」
「いいか。シンフォギア――――今お前が身に纏ってるそれはノイズにたいして唯一対抗できる力だ!それは歌によって強化、使用できる。心に浮かんだ歌詞をそのまま口ずさめ!そうすれば、躰も自然と動く!」
飛鳥の説明を受け、響はガングニールを起動させた時と同じく目を閉じる。神経を研ぎ澄ませ、心に浮かぶ歌詞、鼓動が刻むビートにそれを乗せ、口にする・・・・!。
「・・・・中々いい調子じゃねーか」
たどたどしくおっかなびっくりなところはあれど、響も慣れてきてはいる。子供を抱えて飛び降りたのを空中で回りながら見た飛鳥も同じく響のもとへと着地する。
「ね、ねぇ飛鳥、すごいよコレ!けど一体なにがどうなって・・・・」
「ハイハイ、説明は後でするから、そこでじっとしてな」
そう言うと降りてきたノイズの大群を見据える飛鳥。歌によるテンションのボルテージも高揚していく。
「ここからは、俺のステージだッ!」
右手首をスナップさせ、踏み込む。迫りくるノイズを拳、蹴りを使って撃破していくその姿はまさに一騎当千。その姿に響は唯々魅入る。幼馴染の、普段は見せないような姿とギャップ――――と言ってもさほど変わらないが、それでも響にはその光景が圧巻だった。あれだけいたノイズの大群を一人でもう半数近くまで減らしている。
「って、見てる場合じゃない!?」
何時の間にやら自分の周りにもノイズが。響は見様見真似で拳を振るう。格闘技なんて経験は皆無にしても、今はこの服のようなもの・・・・シンフォギアだったか。歌を歌っているとこの力がどうすればいいのかを教えてくれているようだ。躰が動く。軽い、速い。響は躊躇うことなくその流に身を任せてノイズを消していく。その姿をちらりと見て、飛鳥は笑みをうかべる。
「・・・・さて」
大丈夫だということをきっちり確認した上で飛鳥は着地し、振り返りざまに指鉄砲を作り、それをノイズに向ける。そして――――
「check」
心の中で引き金を弾く。さながら銃を撃つような動作をすると光が放たれノイズに命中する。その光が星のような形に展開されるが、それでも灰にはならない。
「これで!」
迫りくるノイズ。飛鳥は飛び上がり、空中で一回転すると蹴りの体勢に入る。
「フィニッシュだ!」
脚部の装甲から放たれる光の粒子がその量を増し、さながらブースターのような役割をして加速。先ほどの光を命中させたノイズ向かって一直線に進み、キックがノイズを直撃。直後、爆発しその周囲も巻き込んで灰へと変えた。
「す、すごい…」
「・・・・響、無事か!?」
「う、うん。私はこの通りへっちゃら!にしてもすっごいね今の飛鳥。なんて言うかヒーローみたいだった!」
「あまり誇れたもんじゃねーんだけど…ま、そういう事にしとく」
バツがわるそうに頬をかきながらそう言うと、頭上からヘリのプロペラ音が聞こえてきた。その中から顔をのぞかせるのは・・・・トップアーティストの風鳴翼、響の憧れの人でもある。そんな彼女がなぜここにという疑問が浮かんだあと、それはすぐに解消されることとなる。
「おーい翼ぁ!」
「えぇ!?今飛鳥、なんて…」
「ん?名前呼んだだけだけど」
「そうじゃなくって!どうしてそんな親しげに呼ぶのさ!?」
「どうしてって、そりゃおまえ・・・・友達だからな」
「え・・・・えぇぇぇぇぇ!?」
響の絶叫が響いた。
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