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ソードアート・オンライン 〜アナザーアカウント〜

作者:びーの
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黒の双剣士ライト=黒の剣士キリト

 
前書き
今回はキリト君が二つ目のアカウントを作った経緯です。 

 
『やっぱりさ〜、ケットシー領で傭兵する気はないかな?』


数週間前、ケットシーの領主であるアリシャ・ルーからこんなメールが送られてきた。
『エクスキャリバー』や『霊刀カグツチ』、『光弓シェキナー』の伝説武器を手に入れるため準備に何かとお金がかかってしまい、金欠の状態が続いてしまっている。いくつかのアイテムをエギルに買い取ってもらっているがやはり心許ない。
そして、どこで知ったのか、勧誘メールを送って来た。

『三食昼寝付きで。』

内容は魅了的なものだったがスプリガン領を出て、どこにも属していないキリトにとって何処かひとつに力を貸すのは心苦しい。しかも、特にケットシー、シルフ、サラマンダーには、戦友、好敵手が多い。
それに、今回の傭兵の件を引き受けるとケットシー領にほぼ居座ることになってしまう。

『じゃあ、こんなんはどうかな?』


アリシャ・ルーから別の案が提案されてきた。断られることを前提に既に他の案を考えていたのかもしれない。そして、代替案は意外にも単純なものだった。

・現在のスプリガンとは、別で、ケットシーとして新しいアカウントの取得

確かにケットシーとして、アカウントを取得して戦えば、先ほどの懸念もいくらかは解消される。また、アカウントを一からとって始めたとしてもALOはスキルポイント制なためある程度戦いに慣れ親しんだ人ならば、ニュービーでも戦える。さらに、装備もアリシャ・ルーが用意をしてくれる。
傭兵だけという条件なのでケットシーの内政や機密に関わることはないだろう。
さらに、偶然にもアスナが副アカウントで《エリカ》というキャラを使っていて、自分も今のとは違ったビルド構成で戦闘を楽しみたいと思っていた。
AGI一極、瞬発力や身のこなしに長けたケットシーならば、どれだけ加速することができるだろうか。

あとアスナ達に知られず、一人でゆっくりも羽を伸ばしたいと思う気持ちもあるのだが……

そして、交渉はは成立して、新アカウント《ライト》として、ケットシーの傭兵となることを決めた。


そして、いざアカウント作成。
スピードをより活かすため、小柄の方が好ましい。まぁ、ケットシーは小柄な種族なのであるし、容姿はランダム作成なのでどうしようもない。
そして、名前を入力して、ケットシーの領地へと降り立った。

「ホッ、今回は何も起こらなくてよかった。」

初めて、ALOにログインした時、スプリガン領に転移させられるところ、突然眼前が真っ暗に染まり、広がったのは、鬱蒼とした森で、頭から、地面に落下なんてことが起こったため、少し心配していたが杞憂に終わったために安堵の息が出た。

しかし、新たな悩みの種に頭を抱えるハメになった。


「くくくっ。にゃはははははっ。」

領地でアリシャ・ルーに会った瞬間、爆笑された。理由はやはり自分の今の容姿だろう。それは、ある姿にそっくりだったからだ。
雪のように白い肌に、線の細い身体、そして、艶のある長い黒髪。今の容姿はGGOの頃の姿とほとんど変わらず、中性的な服を着れば、まず男とばれないだろう。唯一違う点は、ケットシー特有の猫耳と尻尾。しかし、それのおかげ?でアバターの可愛さが増してしまっている。こんな男性アバターなのに女性アバターに見えるこの容姿は相当レアなはずなのに……なぜ、アバターを変える度にこうなるのだろうか。神の悪戯か?それとも、茅場の嫌がらせか?
そして、アリシャ・ルーもGGOの中継を見ていて、その時の容姿を知っていたのか、大爆笑というわけだ。


「なぁ、……いい加減笑うのやめないか。さすがに失礼だぞ。」

「くくっ、わ、わかってるけど。はははっ、ムリッぽい。あはははは!ひー、お腹痛い」


あんたが領主じゃなかったなら、きっとキルしてるぞと思いながら、アリシャ・ルーの笑いが治まるのを待っている。しかしながら、さっきから周りの視線が痛い。ただでさえ、領主として、みんなぬ知られており、美少女と有名な人が街中で爆笑していれば、嫌でも目線を集めてしまう。早くここから、立ち去りたいと考えているキリトだった。


「はーはー、ごめんね〜。笑い過ぎたよ。じゃあ、行こっか。」


ようやく視線から解放されると思った矢先、突然腕を組まれて、連れて行かれる。何処かへ連れて行かれている最中ずっと腕に当たっている柔らかいものの正体にきずくと、少し嬉しい反面、罪悪感を感じていた。アリシャの行動によって、さらに聴衆の視線が集まり、その中に嫉妬や妬みなど不快なものをし感じたが、ほとんどが呆れや熱狂などであったのがアリシャの人望の厚さということなのだろうか?または、女の子同志がただじゃれあっているだけとしか見られていないのかもしれない。

「ちょっ、ちょっと!」

「い・ま・は、ケットシーの《ライト》だから問題ないよね。」


アリシャの恋人にするかのような大胆な行動にドギマギしながら、引っ張られていった。


「……これはおもしろいことになりそうね。ふふふ」

知り合いに見られていたとは知らずに。






ご機嫌なアリシャに連れて来られたのは、都市部から離れたところにあるケットシー領一番の巨木。そして、それはアリシャのホームだった。中に入ってみると、床一面に柔らかそうな絨毯が敷かれ、所々に調度品やぬいぐるみなどが置かれて、女の子らしさを醸し出していた。

「ここが私のお家だよ。ほら、遠慮せずに座って座って。」

そう言うとどこからかクッションを投げ渡してきて、そのまま奥へとひっこんでいった。
戻って来ると手からこぼれ落ちそうなほどたくさんのアイテムや装備品を持ってきていた。その中には、女性用の服と思われる物も含まれていたが気のせいだよね。

「ライト君は装備とかどうする?ケットシー領で手に入るものなら、あらかた揃ってるけど。」

と、ケットシーの装備と言われても、あまりお目にかからないのでよくは知らない。他種族共通装備なら、あらかた知っていたが、専用装備は領地に赴かなければならないから、滅多に知る機会は少ない。
悩んでいると、ビジュアル画とトレード品の一覧が送られてきた。どれも、高価そうなのだが………

「あの〜、アリシャさん?これ、俺が着るんですか?」

「もっちろん♪」


性能は良さそうだが、カッコイイというより、可愛らしいのほうが目立つ装備だらけで、自分が着るよりアスナ達が着た方が似合うんじゃないだろうか。

「こんなのしか、ないんですか?」

「まぁ〜、そこはしょーがないよね。ケットシーの装備って、見た目可愛い系が多いからさ。けど、ライト君なら似合うよ!あ、あとライト君を女装させようとか微塵にも思ってないからね。」

なんかさらっと怖いこと言ってるよ!!!
しかし、ケットシーは小柄で可愛らしい容姿と猫耳での所業か、女性プレイヤーが多い。そのため、他の種族より女性用の装備が充実してるらしい。


「ねぇ、これって……女性用じゃ……」

「可愛いから、大丈夫かな?って。似合うよ!絶対!」

「システム的に無理だからっ。」

着てくれないのがもっぽど残念だったのか猫耳を伏せて、拗ねてしまった。それから、立ち直ったあとしぶしぶといった感じで本命らしきプランを出してくれた。
淡い黒色の布に白色で刺繍がされている着物。初めて着物を着たが中々着心地が良くて気に入った。しかも、特殊効果もAGI上昇や重力の軽減など今の自分にはピッタリ過ぎる効果だった。…が、その姿は和人形を彷彿とさせて、今の姿をより可愛らしく仕上げていた。アリシャもさすがにこれだけは、譲れなくらしく押し切られてしまった。

「いや〜、ラーくんに絶対似合うと思ってたよ。武器の方はどうするの。」

「それはこっちで用意してあるから大丈夫だ。」

そういって羽のように薄い二本の短剣を取り出す。キリトの方で短剣を使ったら、軽すぎて扱えなかったので、心配していたがライトの方では問題なく扱えた。しかも、短剣なら片手剣と全く違う剣筋なので、GGOのときの様にばれないはず。また、単純にパワー重視以外の戦闘スタイルを楽しみたいからでもあるのだ。

「さて、とりあえず、試しに戦ってみたいんだけど。」

そして、一話目冒頭へと戻る。
まさか、初仕事として、輸送の護衛としてついて行ったら、サラマンダーの一団に襲われるのは想定外だった。まぁ、双剣の慣らしにはよかったのだが、護衛対象のうちの一つのアリシャがあろうことか何処かへ逃げもせず、あろうことか応援をして来た時は困った。大幅なアップデートによって領主のキルボーナスはなくなったもののそれでも名誉や種族の評判を下げさせるために狙われることは多々ある。

「いや〜、大変だったね。ラー君。」

「はぁ、本当だよ。狙われてるんだから、あんな状況のときはすぐに隠れるなりしてくれ。」

「わかった。善処するよ。」

そう言うと、手を身体に回して抱きついてくる。本人は頑張ったご褒美気分でやってるようだが、スキンシップがあまりにも大胆で困ってしまう。初めのうちは止めるように注意していたが、反省の色は全く見られず、むしろ自分を困らせようと嬉々として行ってくるので、注意する気すら失せてされるがままである。しかし、もし万が一アスナにでも知られたらキルされるだけではすまないような気がしてならない。

「しっかし、ラー君の戦い方もエグいよね。攻撃手段が部位欠損とか。しかも、速すぎて、目で追うのも大変だったよ。」

「スピード重視のビルドだからな。パワー重視以外で戦ってみたかったんだよ。」

「ところで、次のお仕事だけど、領地対抗戦に出て欲しいんだけど。」

領地戦。
週一で相手の領地の一部を我がものにせんとして、戦いを申し込むことができるシステムで、指定された領土を攻撃側が占領するか、防衛側が守りきるのどちらかで勝敗が決する。攻撃側が領土を支配することに成功すれば、一時的に税など自由にできたり、それなりのボーナスもある。ただ、失敗すれば其れ相応のペナルティもあるのだが。領主キルボーナスが廃止されてから、頻繁に行われてうるらしいが既に脱領しているので今回が初参加ということになる。
で、今回ケットシー陣営は防衛側らしい。攻撃側なら他領地に干渉することに変わりないので、遠慮しようと思っていたけど、防衛側ということなので快く了解した。

「じゃあ、よろしくね。ラー君。で、この子がラー君と一緒に組んでもらう子だよ。」

そう言って、取り残されて自己紹介だけでもしておくかと思ってたら……

「…よろしくね。ライトさん。」

ペールブルーの髪の毛をして、弓矢を担いだ自分がよく知る少女だった。














 
 

 
後書き
やっとここまで書けた〜〜。さて、お次は領地対抗戦です。どんな風にしあげようかな? 
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