真・恋姫†無双 リウイ戦記
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十話
前書き
半年以上空いてしまいました
曹操の首級を挙げた月は、連合から離脱し、并州に帰った。
董卓軍が去った後、連合は虎牢関を抜け、洛陽に上洛した。月とリウイはその報告をパイモンから聞き、ため息をついた。
「連合の参加者の狼藉が深刻だな、連中、自分の評判を落す為に上洛した様なものだな。早々に帰還して正解だな」
「そうですね。その中で気になった一団もあるのですが」
「なんだ」
「劉備という者と、リウイ様の知っている孫策の軍だけは狼藉に参加していない様子です。特に、劉備の場所では市民に対して炊き出しをしております」
「孫策か…、彼女は袁術に付属しているはずだが、あの顔つきならいずれ独立するだろう。その事を弁えての行動だろう」
「そうでしょうね」
「劉備とは一体何者だ」
「平原に小さな領地を持つ少数の軍です」
「そこはそんなに豊かなのか」
「いえ、人口も少なく。産業も乏しい領地です」
「…何を考えて参加したのやら。まあいい、今後、その二人に監視の鴉を常に置いておけ」
「了解しました」
「袁紹、袁術の軍はどういった状況だ」
「曹操軍によって壊滅的な被害を受けており、それにともなって、離反していく諸侯がいる様です」
「では。しばらく連中は仕掛けられないな、こちらはその間に本格的に涼州を手中に収めるとするか」
その言葉を聞き月はリウイに問いかけた
「涼州ですか…。東側はこちらに靡いて来ていますが、西側は馬騰さんの勢力圏で、こちらを警戒しているんですが」
「兵威を見せつけ、降伏を促す。今ならどの勢力も動けんだろう、これを機に西方の憂いを無くしておこう」
「もし、降伏してこなかったらどうするのですか」
「その時は、内応者を出して馬騰を孤立させる」
「既に、幾人かは馬騰の傘下の者達がこちらに味方すると確約しています。後は、貴女しだいです」
「今ならまだ引き返せる。君がこの大陸を支配する最初の戦いだ、ここから先はもう後に引けない。どうする」
月はしばらく俯いて考えた後、決意を込めた目でリウイを見た。
「涼州に軍を進めます。馬騰さんに文を送って下さい。お兄様。私は私の手でこの大陸を平和にしてみせます」
その言葉にリウイは僅かに微笑み、月の期待に答える事を決めた。
それから三日後、董卓軍は涼州に進軍した。
既に、董卓の名声は伝わっており、各地の馬騰傘下の諸将は董卓軍に加わった。
一方で馬騰は董卓の進軍に対して、全て後手に回り、兵を募ったが董卓軍を恐れ、思うように集まらなかった。
董卓軍は更に進軍し、遂に無血の行軍で馬騰の居城を包囲した。
董卓軍本営
「城内の様子はどう?」
「兵の士気は高いとはいえないのです。ですが、力攻めはこちらの損害が多くでるのです」
「そう、でも後々の為にも早くした方がいいとおもうわ」
「そうね、こちらの武威を示す為にも早く落したほうがいいわ」
「新参の配下の為にこちらの強さを見せるにも早期の決着が望ましいかと」
それらの会話を聞いてリウイは一つの疑問を持った。
「…内応者の名簿の中にまだ、こちらに加わっていない者が何人かいるな。もしかしたら城内にいるのか」
「おそらく、そうでしょう。こちらの進軍が早すぎたのも原因かと」
「そいつらに城門を空けさせられないか」
「妙案ですね、では、矢文を使ってこちらに加わるようにさせましょう」
「そうなれば城内の者達は疑心を持ち始める、そこに付け入る」
董卓軍は矢文を城内に放ち、馬騰軍を混乱させた。
そして、馬騰はこれ以上の戦いは不可能と見て、董卓に降伏した。
「馬騰をどうするかだが、君はどう思う」
「私は生きてこの西涼を治めて欲しいと思います。あの方はこの土地に必要な方です。それに馬騰さんが死んだら胡の押さえが無くなります」
「そうだな。では、その様に相手を迎えよう」
「はい」
そうして一人の女性と二人の少女が月の天蓋に入ってきた。
「お初にお目にかかります。西涼の馬騰。後ろは馬超、馬岱の二人だ。このような待遇を受ける事困惑している。私達は敗軍の身だ。それ相応の処遇を受けて当然だ。どうかその様に」
「いえ、わたしは貴女に頼みがあるのです。勝手ですがこのまま話をさせてください」
「頼み。これほどの辱めを受けてですか」
「はい。じつを言えば、その為にわたしは軍を動かしたのです」
「…いいでしょう。その頼みとやらを聞きましょう」
そう言って馬騰は身を正した。
「その前に馬騰さんはこの大陸の現状をどう見ますか」
「…漢王朝はもう、あって無きようなもの。今のように諸侯同士の小競り合いを止める事も出来ない、このままでは世は荒れるだろう。それを統べる者が必要だ」
「わたしがその世を統べる者に為ろうと思うのです。その為に貴女の力が必要なのです」
「貴女が…私の力が必要だと…」
「はい。わたしは并州と涼州を足ががりに天下を統べるつもりです。その為に貴女が涼州を纏めて頂きたいのです」
「なぜ、私の力が必要なのだ。このように無残に負けた身だぞ」
「貴女は胡の押さえとして必要な方です。外患は一つでも減らしたいのです、その為にわたしの仲間になってください」
月の言葉を聞き、馬騰はしばらく沈黙した。そして、月を見据えた
「多くの者が死んでいく。悪名を帯びるだろう、貴女を非難する者が後を絶たずに出てくる。それでも天下を統べる気か」
「はい。覚悟しています。どれだけの悪名を着ようとも成し遂げるつもりです」
その言葉を聞き、馬騰は月に近付き、懐の短剣を抜き、月に刃を突きつけた。
その行動に月、リウイ以外が驚いた。しかし、リウイが配下を手で押さえた為、動けなかった
「その言葉、確かだろうな。その言葉に偽りがあれば、私はお前を真っ先に殺す」
「構いません」
月は馬騰の視線をそらさずに言った。
それを見た馬騰は初めて笑った。
「了解した。この馬寿成。真名は珀と言う。あんたの力になろう」
そう言って、短刀を捨て、月の仲間になると言った。
その言葉を聞き一同は息をついた。
「かあさん、いきなりなにすんのさ」
「ほんと、伯母さんにはびっくりさせられたよ」
「悪いかったね。二人共、それにしても董卓もそこの男も肝が据わっているね」
「暗殺をするなど自分に自信の無い二流、三流の者がやることだ。貴女程の人がそれをする様に思えないからな」
「そうさな、こそこそ殺すなんて私の性に合わないわな」
そうして月は涼州を手に入れ、馬騰らが仲間になった。
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