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久遠の神話

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第百三話 幻術の終わりその四

「そして私は剣と幻で戦う」
「貴方のお力で」
「剣で斬れば終わりだ」
 舞うセイレーン達を見ての言葉だ。
「しかしそれは勝利にはならない」
「倒しただけで」
「勝ったことにはならない」
「そうなります」
「それならだ」
 斬らずにというのだ。
「怪物は私の力で倒す」
「そうされなければ」
「よくわかった」
 今回の戦いでの声の意図、それがというのだ。
「面白い戦いの演出だな」
「少し考えてみまして」
 セイレーンを出して今回の戦いにしてみたというのだ。
「こうしました」
「そうだな」
「貴方の力のことも」
「幻か」
「歌に幻でどう向かわるか」
 それを見ようというのだ。
「そう思いまして」
「面白い、ではだ」
「それならですか」
「私はこの幻の力で勝とう」
 マガバーン自身もこう言ったのだった。
「そうしよう」
「受けられますか」
「そうした勝負ならばな」
 是非にと言うのだった。
「勝ってみせる」
「左様ですか、それでは」
「今はな」
 こう話してだ、そしてだった。
 マガバーンはその手に持っている剣を一閃させた、すると。
 周囲の世界が歪んだ、すると。
 出て来たのは幻だ、だが。
 その世界は桃源郷だった、マガバーンの足場には花達が咲き誇り。
 青い空に白い雲、そして晴れ渡った黄金の太陽にだ。
 乙女達の歌声が聴こえてくる、それこそがだった。
「幻ですか」
「エリシュオンだ」
 今出した幻の世界は、というのだ。
「その世界を出した」
「そうですか」
「貴女も知っているな」
「はい」
 声はマガバーンの問いに答えた。
「神々の世界ですから」
「セイレーンの声はこの上なく美しい」
「しかしですね」
「それ以上に素晴らしい世界を見せればどうなるか」
 マガバーンの今の考えはそうしたことだった。
「よりよい世界に浸ればだ」
「そこで、ですね」
「セイレーンがこの幻の世界に入れば」
 その時は、というのだ。
「私の勝ちだ」
「しかし」
「私がセイレーンの声に魅せられ」
 そして、というのだった。
「それに囚われた時は」
「貴方は力を無力化され」
 剣士の力、それをというのだ。
「そのまま海に落ちてです」
「溺れてだな」
「死にます」
 まさにそうなるというのだ。
「そうなります」
「そうだな」
「ですがセイレーン達がです」
 今も歌う彼女達が、というのだ。今度は。 
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