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FAIRY TAIL 忘却の最期

作者:大牟
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第1話 妖精の尻尾のサラマンダー

ハルジオンの港街

この街に二人の男女が足を運んでいた。

女の名は、ルーシィ

男の名は、ラスト

「やっと着いたな、ここまで来れば妖精の尻尾(フェアリーテイル)はもうすぐだ。」

「その前に魔法屋に寄って行きましょ。あんたも魔法屋で何か買ったら?」

「いや、剣があるからいいよ・・・」

「そうは言うけど、何かしら魔法を持ってないと魔導士としてギルドに入ること出来ないわよ?」

「そうは言うけどな・・・」

あまりにもウジウジした態度にルーシィが怒り出す。

「いいから!あんたがそれだとあたしもギルドに入れないじゃない!」

「わ、わかったわかった・・・」

ラストは渋々、魔法屋で適当な魔法を買うことにする。

魔法屋に入っても目ぼしいものはなく、店主の話では魔法屋はここ一軒だけらしい。

「元々、魔法より漁業が盛んな街ですからね。街の者たちで魔法を使えるのは一割もいません。ここは旅の魔導士専門の店ですわ。」

「あ~あ、無駄足だったかしら?」

「仕方ないさ。次に期待しよう。」

「ま~ま~そう言わずに見てって下さいな。新商品だってたくさん揃ってますよ。」

そう言って店主が出したのは魔導書のようなものだった。

「これは女の子に人気の色替(カラーズ)の魔法で、その日に合わせて色を・・・」

店主が色替を使って、服の色を変えた。

「チェンジってね!」

「持ってるし、あたしが探してるのは門の鍵の強力な奴よ。」

「門かぁ、珍しいねぇ。」

「俺は十分戦闘が出来る魔法があればいいんだが・・・」

「おお、ならこれはどうでしょう。」

そう言って出したのは、細い刀身の剣。

「これは魔水晶を埋め込んだ魔法剣です。」

「へぇ・・・どんな魔法だ?」

「刀身がゴム状になる魔法です。」

「それ何のメリットがあんだよ!?」

「ないよりマシよ、買っちゃいなさい。」

「嫌だよ流石に!!」

「いいから。」

睨みつけるルーシィの顔が怖く、ラストは止む無しにその魔法剣を買うことに

ちなみに値段は3万J

「効果の割に高いよ・・・」

「後から買いなおせばいいでしょ・・・・あ。」

ルーシィは紋章の入った銀色の鍵を見つけた。

「子犬座の白い子犬(ホワイトドギー)!」

「そんなの全然強力じゃないですよ?」

「いいのいいの、探してたんだぁ~・・・いくら?」

「2万J。」

店主が言った値段が気に入らず

「お・い・く・ら・か・し・ら?」

もう一度店主に値段を聞く。

「だから2万J。」

あんまりにも進展せず、

「本当はおいくらかしら?ステキなおじ様?」

お色気攻撃で値引きをし始める。

しかし・・・値引き出来たのはたったの千J

「千Jしかまけてくれなかったー・・・あたしの色気は千Jか!?」

「まけてくれただけでも有難いと思うけどな・・・」

「ムカつく・・・そこそこリアルなのがなおさら・・・!」

そうぼやいたルーシィにラストが青筋を立てた後、

たくさんの女性が群がっているのが見えた。

「何かしら?」

二人の目の前でたくさんの女性が横切る。

「この街に有名な魔導士様が来てるんですって!!」

火竜(サラマンダー)様―!!」

「火竜って・・・店で買えない火の魔法を操るっていう?」

「この街にいるの!?」

その火竜があの群がりの中にいるのだろう。

「かっこいいのかな~?」

「どうだろ?」

そう言って二人は群衆の間から覗きこむ

見えたのは・・・さほどかっこよくもないナルシスト風の男だった。

「・・・想像したのより違ったなルーシィ・・・・ルーシィ?」

ラストがルーシィの顔を見ると

顔を真っ赤にしていた。

(な・・・な・・・な・・・何?このドキドキは・・・!?)

「お、おいルーシィ!?」

「ははっ、まいったな~・・・これじゃ歩けないよ・・・」

(ちょ・・・ちょっと、あたしってばどうしちゃったのよ・・・!)

火竜がルーシィに向かってウィンクをすると

(はうぅ!!)

ルーシィの胸が大きく高揚する。

「お、おい大丈夫か?」

(有名な魔導士だから?だからこんなにドキドキするの?)

ルーシィの目がハートに変わり、火竜の方に寄っていく。

「様子がおかしい・・・!待てルーシィ!」

ラストは慌ててルーシィを止めに入るが、ルーシィの耳には届いていない。

(これって・・・もしかして、あたし・・・!)

「イグニール!!」

と、そこに一人の男が乱入してくる。

ピンクの髪に鱗状のマフラー、青い猫を連れた少年だ。

その少年が現れたと同時にルーシィが正気に戻った。

しばらくその場が固まり、少年と火竜の目が合う。

「・・・だれだお前?」

それを聞いた火竜がショックを受けるが、すぐに立ち直る。

「火竜・・・言えばわかるかね?」

少年は火竜の遠くに歩いて行った。

「「って早!?」」

火竜とラストのツッコミが被った後

周りの女の子達が少年に群がる

「ちょっとあんた失礼じゃない!!」

「な、何だお前ら!?」

「火竜様はすっごい魔導士なのよ!!」

「謝りなさいよ!!」

「まあまあその辺にしておきたまえ。彼とて悪気があった訳じゃないからね。」

そう火竜が言うと女の子達が一斉に猫なで声をあげる。

「やさし~!」

「あ~ん!」

それを見てルーシィとラストは険しい顔をする。

火竜は色紙を出し、自分のサインを手渡す。

「僕のサインだ。友達に自慢するといい。」

「いらね。」

それを聞いた女の子達がその少年をゴミ捨て場に投げ込む。

「何なのよあんたさっきから!!」

「どっか行きなさい!!」

「うごっ!」

「君達の熱い歓迎には感謝するけど・・・僕はこの先の港に用があるんだ。」

『ええ~、もう行っちゃうの!?』

と一斉に女の子達は残念そうな声を上げ

火竜は指を鳴らすと紫色の炎を出しその上に乗る。

「夜は船でパーティをやるよ。みんな参加してね!」

火竜は空へと消えていった。

「何だあいつは?」

「ホント、いけすかないわよねぇ。」

ルーシィとラストは少年の傍まで歩いていく。

「さっきはありがとな。」

「は?」


で?


「あたしルーシィ。」

「ラストだ、よろしくな。」

「あい。」

桜色の髪の少年ナツと、青い猫ハッピー

この二人をレストランへと誘っていた。

「ナツとハッピー・・・だっけ?」

「あんふぁいいひほはひがぶぁ。」(あんたいい人達だな)

「うんうん。」

ナツは余程腹を空かせていたのか、がむしゃらに頬張っていた。

「わかったからゆっくり食べなって、なんか飛んできてるから・・・」

(ていうかお色気代の千Jパーだわこれ・・・)

と残念がるルーシィであった。

「あの火竜って男、魅了(チャーム)っていう魔法を使ってたの。この魔法は人々の心を術者に引き付ける魔法なのね。」

「確か何年か前に発売が禁止されたんだよな?」

「うん、あんな魔法で女の子達の気を引こうなんてやらしい奴よね。」

「そうだな、今度会った時にはそれ相応の報復を与えてやらなければな・・・・・」

先ほどのオドオドした態度が嘘のように顔を怖くするラストにルーシィは冷や汗をかく。

「ま、まあまあそこまでしなくても・・・ナツ達が飛び込んできたおかげで魅了が解けたから良しとしましょ。」

「なぶごぼ」(なるほど)

そして頬張りながら納得するナツ

「こー見えて魔導士なんだ、あたし達。」

「ほぼぉ。」

「俺のは全く役に立たないけどな。」

「まだギルドには入ってないんだけどね。あ、ギルドっていうのはね・・・」

ギルド

魔導士達の集まる組合のことで、仕事や情報の仲介を行ってくれる場所

魔導士はギルドで働いて初めて一人前と認められるのだ。

そうルーシィが喋る間に、テンションが上がってきていた。

「でもねでもね!ギルドってのは世界中にいっぱいあって、やっぱ人気のあるギルドはそれなりに入るのが厳しいのね。あたしの入りたいトコはね。もうすっごい魔導士がたくさん集まるところで、ああ・・・どうしよ!入りたいけど厳しいんだろーなぁ・・・」

「テンション高いねルーシィ。」

「いあ”・・・「あーゴメンねぇ魔導士の世界の話なんてわかんないよねー!」

ナツは何かを言おうとしたが、ルーシィの言葉により遮られた。

「でも絶対そこのギルド入るんだぁ。あそこなら大きい仕事たくさんもらえそうだもん。」

「あのギルドに入るのが夢だもんな、ルーシィ。」

「ほ・・・ほぉか・・・」

「よくしゃべるね。」

ナツとハッピーはルーシィに少し圧倒されていた。

「そういえば・・・あんたたちは誰かを探してたみたいだけど・・・」

「ああ、イグ・・・なんだっけ?」

「あい、イグニール。」

「火竜がこの街に来るって聞いたから、来てはみたけど別人だったな。」

「火竜って見た目じゃなかったんだね。」

「てっきりイグニールかと思ったのにな。」

「見た目が火竜って・・・どうなのよ人間として(汗)」

ルーシィとラストは青筋を立てる。

「ん?人間じゃねぇよ。イグニールは本物の(ドラゴン)だ。」

ナツがそう告げた瞬間、ルーシィとラストは思いっきりビックリする。

「ほ、本物のドラゴンだって!?」

「そんなの街の中にいるハズないでしょー!?」

そうルーシィに言われた瞬間

「「!!」」

電撃が走り(そうだ!)と言いたげな顔をして驚く二人。

「「オイィィィィ!!今気付いたって顔すんなー!!」」

ルーシィとラストは同時にツッコミを入れた。

「あたし達、そろそろ行くけど・・・ゆっくり食べなよね。」

「代金はここに置いておく。じゃあな。」

ラストとルーシィは席を離れ、店から出ようとする。

「ありがとうございました・・・・・あ!?」

ウェイトレスがルーシィの後ろを見て驚き、二人はふと振り向くと

「ごちそう様でした!!」

「でした!!」

土下座しているナツとハッピーが見えた。

「やめてぇぇ!恥ずかしいから!!」

ルーシィは叫び、ラストは汗をかいたまま黙っていた。

「い・・・いいのよあたしも助けてもらったし・・・おあいこでしょ?ね?」

「あまり助けたつもりがないトコがなんとも・・・」

「あい、歯がゆいです。」

「あ、そうだ!」

ナツは何かお礼を思いついたようだ。

「これやるよ。」

出したのは、先ほどであった火竜のサイン色紙

「いらんわ!!」

ルーシィは叩き返した。

ラストは後ろで苦笑いしかできなかった。



そして二人はベンチで雑誌を読んでいた

雑誌の名は「週刊ソーサラー」と呼ばれる魔導専門誌だ。

「また妖精の尻尾が問題起こしたの?」

「ああ、デボン盗賊一家壊滅するも民家7軒も壊滅・・・だそうだ。」

「あっはははは!やりすぎー!!」

ルーシィは腹を抱えて笑い転げる。

「あ、グラビア!ミラジェーンなんだ。」

グラビアコーナーに掲載されていたのは、水着姿のミラジェーンだ。

「妖精の尻尾の看板娘だよな?」

「うん・・・この人でもムチャクチャやっちゃうのかしら?」

「か、考えたくない・・・・・」

「でもどうやったら妖精の尻尾に入れるんだろ?」

「やっぱり面接とか、試験とかあるんだろうな・・・凄腕の集まるギルドだし・・・」

「でも、魔導士ギルド妖精の尻尾・・・最高にかっこいいなぁ・・・!」

ルーシィの嬉しそうな表情にラストは微笑んだ。

そこに

「へぇー・・・君達妖精の尻尾に入りたいんだー。」

草むらから突然、先ほどあったキャラ男・・・もとい火竜が現れた。

「さ・・・火竜!」

「ていうか何で草むらから?」

「いや~探したよ。君のような美しい女性をぜひ我が船上パーティに招待したくてね。」

「おい、俺のことは完全無視か・・・!」

火竜はラストを無視し、魅了を使いだす。

「魅了なら効かないわよ!その魔法の弱点は“理解”。それを知ってる人には魔法は効かない!」

「やっぱりね、目が合った瞬間、魔導士だと思ったよ。いいんだ、パーティに来てくれれば。」

「行くわけないでしょ!あんたみたいなえげつない男のパーティなんて!」

「え、えげつない僕!?」←えげつない

えげつないプレートが心に刺さり火竜は少し落ち込む。

「当たり前だろ・・・その魅了が証拠だ。そこまで騒がれたいか?」

「あれはただのセレモニーさ、パーティの間セレブな気分でいたいだけさ。君だって女の子達にチヤホヤされたいだろ?」

「ない。」

「つまらない男だねぇ・・・」

そう言われラストのおでこに怒りマークが数個できた。

「有名な魔導士さんとは思えないおバカさんね。行きましょ、ラスト。」

「ああ。」

二人が立ち去ろうとし、火竜は慌ててひきとめる。

「ああ、君!妖精の尻尾に入りたいんだろ?」

妖精の尻尾

その単語が耳に入り二人は足を止める。

「妖精の尻尾の火竜・・・・聞いたことないかね?」

「・・・・・ある!」

妖精の尻尾の火竜とは、さきほどあったデボン盗賊を壊滅させた魔導士のことだ。

「あんた妖精の尻尾の魔導士だったの!?」

「そうだよ。」

「こんな奴が・・・」

「入りたいならマスターに話を通してあげるよ。」

その瞬間、ルーシィの目がハートマークに変わる。

「素敵なパーティになりそうね~!」

「わ、分かりやすい性格してるねー君・・・」

「オイオイ・・・・・・」

「ほ・・・本当にあたし妖精の尻尾に入れるの!?」

「もちろん、魅了のことは黙っておいてね。」

「はいはーい!」

「それじゃ、パーチーで会おう!」

火竜は炎に乗りその場を飛び去った。

「パーチーって・・・・古っ」

ラストは去った火竜にツッコミを入れ

「おい、疑似魅了にかかってるぞ。」

ルーシィを正気に戻した。

「あ、しまった・・・」

さりげなく魅了にかかったルーシィだったが

「やったー!妖精の尻尾に入れるんだ!!それまであの馬鹿男に愛想よくしとかないとね!うししししし!」

「大丈夫なのかルーシィ?魅了を使うようなやつだぞ?」

「大丈夫だって!あんたも入れるように話しておくから心配しないで!」

「いやでも・・・」

「じゃ、パーティに着てくドレス買わなくちゃ!」

「おいおい・・・・」

ラストは火竜の言っていたパーティに不安を覚えながらも買い物に付き合った。

そして、夜


「船が出たか・・・・・」

火竜のパーティ会場である船が港を出発した。

「やはり、忍び込んででも乗船すべきだったか・・・」

「それは困るなぁお客さん。」

後ろに気配を感じ振り向くと

ゴロツキが数人、武器を持ってヘラヘラ笑っていた。

「こいつか、火竜さんが言ってた小僧ってのは。」

「ひょろい体してんなぁ。」

「何の用だ?」

「知る必要はねぇ・・・何でかって?」

男がヘラヘラしながら、持っている剣を振り上げ

「ここでテメェは死ぬんだからな!!」

「!」

振り下ろされた剣を、昼間店で買った剣で受け止めた。

しかし、ゴムになる剣だったためすぐに切れた。

それでも一瞬で斬撃の軌道をかえ攻撃を反らした。

「くっ・・・!」

「おいおい何だよこれ、ゴムの剣?」

「ははははは!ダセェ!!」

「だが今ので軌道を変えた・・・なかなか腕が立つぞこのガキ。」

「やっぱりな・・・どうも怪しいと思ってたんだ。あの火竜・・・奴隷商人か!」

火竜の正体を感ずき、ラストの表情が一気に強張った。

「言っただろ、知る必要はねぇってな!」

ゴロツキが一斉にラストに向かい駆け出す。

「仕方ない・・・これは、使わないと誓ってたんだが・・・レイラ様、申し訳ありません。」

ラストが包帯に巻かれた筒状の物を取りだし、包帯を解くと

紫色に輝くガントレットが姿を見せる。

「ガントレットで何ができるってんだ!イっちまいな!!」

「・・・フルメタル!」

ガントレッドを右腕に装着し、ガントレットの手の甲部分が輝く。

それと同時にラストの左腕に剣が直撃した。

普通なら、左腕は斬り飛ばされる

しかし

「な、何だこいつ・・・腕が切れてねぇぞ!?」

DB(ダークブリング)、フルメタルは身体を鋼鉄に変える。」

ラストの腕が鋼鉄に変わり、剣の攻撃を完全に防いでいた。

「う、腕が鉄に変ってやがる・・・!」

「こいつ魔導士か!?」

「はあ!!」

ラストは剣を振り払いゴロツキの腹に文字通り、鉄拳を叩き込み吹っ飛ばした。

「ぐはぁ!!」

「くそ!こんな魔導士見たことねーぞ!」

「囲んで攻撃するぞ!」

ゴロツキ共がラストの周囲を取り囲み、様子をうかがっている。

「ゴロツキらしいな・・・なら・・・」

再び、ガントレットの甲が輝きだす。

「また何かするつもりだ!」

「やっちまえ!!」

ゴロツキが一斉に攻撃を仕掛けに来る。

「ヴァルツァーフレイム!!」

ガントレットの甲に紫色に輝く石が瞬時に入れ替わった。

その瞬間、炎が噴き出され右腕で炎をゴロツキに向かい放つ。

炎がゴロツキ達の身体を襲う。

「ぎゃあああ!!」

「な、何だこの炎!?全然消えねぇ!!」

「ヴァルツァーフレイムは対象を焼き殺すまで踊り続ける。早く水に飛び込まないと死ぬぞ?」

水・・・・・といっても炎で燃やされている状態では海に飛び込むことも難しい。

ゴロツキ共は灰になるまで炎で踊り狂わなければならない。

しかしその時

轟音が海の方から聞こえてきた。

「え?」

ルーシィが乗った船が津波によって港に押し戻されてきたのだ。

「何であの船が!?」

疑問を投げかけた直後

「どわぁぁぁぁぁ!!」

津波をもろに食らってしまった。

巻き添えになったゴロツキはヴァルツァーフレイムの炎から助かった。

「こ、今度は津波かよ!?」

「こんな化け物に勝てるわけねぇ!!」

ゴロツキはラストに怯え一目散に逃げ出した。

「今の津波、俺がやったんじゃないんだけどな・・・あれ?この津波ってまさか・・・」

そう思い津波の起こった先を見ると

「あんた何考えてんのよ!?普通あたしまで流す!?」

「不覚・・・ついでに船まで流してしまった・・・」

「あたしを狙ったのかー!!」

ルーシィと彼女が契約している星霊、アクエリアスがいた。

(やっぱりアクエリアスだった・・・)

津波の犯人が案の定アクエリアスだと分かると冷や汗を垂らす。

「しばらく呼ぶな、彼氏と旅行に行く。彼氏とな。」

「2回言うな!!」

そう言い残しアクエリアスが姿を消した。

「なんて勝手な奴なのかしら!」

「ねぇルーシィ、さっきの場合オイラは別に謝んなくてもいいはずだよ。」

「このおとぼけ猫はツッコミづらい・・・」

「ルーシィ!」

ラストはルーシィの傍まで駆け寄る。

「ラスト!」

「大丈夫だったか!?」

「う、うん、あたしは大丈夫。」

「ってお前ハッピーか?何でお前が・・・?」

「話は後にしようよ。」

「そうだ!ナツが火竜のとこにいるんだった!」

「ナツって・・・あいつが!?」

3人はすぐにナツの許まで急ぐ。

「ナツー!!」

ナツは横転した船の上にいた。

「お前が妖精の尻尾の魔導士か?」

「それがどうした!おいやっちめぇ!」

「へい!」

「よぉく顔ぁ見せろ。」

ナツが殺気立った声で言い上着を脱ぐ。

「ナツ!」

「まずい、ここは俺が」

「大丈夫、言いそびれたけどナツも魔導士だから。」

「「ええ!?」」

ルーシィとラストが同時に驚く。

ナツは殴りかかるゴロツキを右腕で軽く払った。

「俺は妖精の尻尾のナツだ!オメェなんて見たことねぇ!!」

その右肩部分には、妖精の尻尾の紋章が刻まれていた。

「な!?」

「妖精の尻尾!?ナツが妖精の尻尾の魔導士!?」

ナツの紋章を見てゴロツキの一人が怯えて指をさす。

「あ、あの紋章・・・本物ですぜボラさん!」

「馬鹿!その名で呼ぶな!!」

ボラ

この名前でラストが感づく

「ボラって・・・巨人の鼻(タイタンノーズ)にいた紅天(プロミネンス)のボラか!?」

「うん、数年前にギルドから追放されたんだ。」

「オメェが悪党だろうが善人だろうが知ったこっちゃねぇ。妖精の尻尾を語るのは許さねえ!!」

「だったらどうするよ!ガキが!!プロミネンス・タイフーン!!」

ボラの炎の魔法がナツに直撃し炎上する。

「ナツ!!」

「こうなったら俺が・・・!」

ラストがガントレットをしているのを見てルーシィが驚く。

「ちょ・・・あんたそれ・・・!」

「すまない。ボラの差し金で襲われたものだから・・・こうするしかなかった・・・」

「ラスト・・・」

複雑な表情を浮かべるルーシィとラストだったが、ラストはキッとボラへ視線を向ける。

「だがこいつならボラなんか一ひねりで」

ラストが向かおうとするのを、ハッピーが止めた。

「でかい口叩くやつほど・・・ロクなもんじゃねぇ。」

そう吐き捨て立ち去ろうしした。・・・・・・・・が

「まずい。」

炎の中からナツの声がした。

「オメェほんとに炎の魔導士か?こんなまずい火あり得ねぇ。」

なんと、ナツの口の中に、どんどん炎が入ってくではないか。

「・・・・!!!」

「「はぁ!!?」」

それを見たボラとルーシィ、ラストが驚愕する。

「ふぅ・・・御馳走様でした。」

そしてナツは炎を全て吸いつくした。

「なななななな何だこいつは!?」

「ナツには火は効かないよ。」

「あんな魔法・・・見たことない!」

「食ったら力が湧いてきた!」

ナツは大きく息を吸い込み

「いっくぞー!!火竜の咆哮!!」

口から炎を吹き出し、ゴロツキ集団を一掃した。

ボラはちゃっかりと自分の炎に乗り退避していた。

「ボ、ボラさん・・・こいつ見たことあるぞ・・・!桜色の髪に鱗みてーなマフラー・・・間違いない・・・こいつが本物の・・・・・・」

「「火竜(サラマンダー)」」

ルーシィ、ラストが同時に呟き確信した

ナツこそが、本物の火竜だった。

「よく覚えとけ!これが妖精の尻尾の魔導士だ!!」

ナツが両手から炎を出し、ボラめがけて飛びあがり殴り飛ばした。

「火を食べたり、火で殴ったり・・・これって本当に魔法なの?」

「竜の肺は炎を吐き、竜の鱗は炎を溶かし、竜の爪は炎を纏う。これは自らの竜の体質へと変換させる太古の魔法(エンシェント・スペル)

「な、何それ!?」

「元々は竜迎撃用の魔法だからね。」

「あらま・・・・・・」

「くそ!!ヘル・プロミネンス!!」

ボラが炎でナツの一帯を薙ぎ払うが、当然、ナツには通用していない。

「滅竜魔法。イグニールがナツに教えたんだ。」

「聞いたことがある・・・滅竜魔法を使う魔導士・・・滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)古文書(アーカイブ)で読んだことはあるが、実在していたとは・・・」

「ちっきしょぉぉぉぉぉ!!!」

ボラが全力の炎をナツに叩き込む。

しかし、それもナツによって魔力の糧となる。

「これならそこそこ食えるな!おいテメェ、ブスブスの燻製にしてやるぜ!」

「燻製!?イヤン!!」

ナツは拳を合わせ魔方陣を展開、右腕に炎を集中させる。

「ぶっ飛べ!!火竜の鉄拳!!!」

「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ナツの鉄拳を叩き込まれたボラは、鐘がある建物まで吹っ飛ばされた。

「ナツ、燻製は炎じゃなくて煙でできるんだよ。」

「そこ!?」

「すごい・・・すごいけど・・・」

ラストとルーシィの目の前に広がっていたのは・・・

「やりすぎよ!!」

「み、港がめちゃくちゃだ・・・!」

全壊している港があった。

これは、全てナツがやったものだ。

「あい!」

「あいじゃない!」

そこに、フィオーレ軍隊が港に向かってきていた。

「軍隊!?」

「やべ!逃げんぞ!!」

ナツはルーシィの手をとり走り出す。

「なんであたしまでー!?」

「お、おい待て!!」

ラストは慌てて追いかける。

「だって、俺達のギルドに入りたいんだろ?」

ナツが振り向き

「来いよ。」

優しく微笑んだ。

「・・・うん!」

「妖精の尻尾に入るのはいいが・・・ここを何とかするのが先だ!」

ラストは急に止まりガントレットの甲にDBを呼び出す。

「グルー・ティアー!!」

ガントレットから接着剤が噴出し、軍隊の足元に撒き散らす。

「な、何だこれ!?」

「接着剤!?」

巻かれた接着剤により軍隊は足をとられていた。

「今のうちだ!」

「すっげーなお前の魔法!」

「いや、これあんまり使えるDBじゃないんだけど・・・」

ルーシィ、ラストはナツとハッピーと共に妖精の尻尾へと向かった。



魔法評議会 ERA

「また妖精の尻尾の馬鹿共がやらかしおった!!」

評議会では、ナツが起こした問題について協議が行われていた。

評議員の怒りは心頭

いつかは街を壊滅しかねないとの意見も出てきた。

「オレはああいう馬鹿共、結構好きですよ。」

笑って言ったのは、評議員のジークレイン。

「貴様はだまっとれ!!」

それに怒鳴ったのはオーグ老師だ。

ジークレインの後ろに一人の女性・・・ウルティアが現れた。

「ジークレイン様。」

「何かわかったか?」

「はい、軍隊を足止めした魔法のガントレット・・・アレを持つものが現われました。」

「ようやく動いたか・・・さて、今後どうなるか・・・楽しみだな。」

ジークレインは不敵に笑う。

この笑みに隠された、ジークレインの思惑とは一体・・・・・


第1話 完
 
 

 
後書き
次回予告

ルーシィ「ギルドに入るには、まず面接!」

ラスト「どんな感じでいくんだ?」

ルーシィ「こういうのは第一印象が大事だからね!ゴホン・・・こんにちは、ルーシィと申します。」

ラスト「固すぎやしないか?」

ルーシィ「う~ん、確かに・・・やっほー!ルーシィで~す♪」

ラスト「フランク過ぎだ、印象が悪い。」


次回 ようこそ、妖精の尻尾へ


ルーシィ「もっと元気よく!かつ印象的に!俺が・・・ルーシィだぁぁぁぁ!!」

ラスト「もはやキャラが違う!!」
 
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