たかが芸人
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第三章
第三章
「後は入団会見だけですよ」
「まだ入るって決まったわけじゃないですよ」
「あの、それわかってます?」
「虚塵に入りたくない人なんていないんですよ」
傲慢な態度でこう主張するのだった。
「違います?天下の虚塵ですよ」
「いや、そういう問題じゃないですから」
「これって」
「そうですよ、中学生を指名って」
「あからさまな協定違反じゃないですか」
「協定なんかどうとでもなるんですよ」
今度はこう言う始末だった。
「虚塵の前にはね」
「いえ、そういう訳にはいきませんから」
選手会長はその麦助に真面目な態度で反論する。
「ですから。これはですね」
「はい?貴方まだ言ってるんですか?」
その会長にだ。あからさまに馬鹿にした態度で返した。
「貴方の意見なんてね。弱小球団の人の意見なんてね」
「どうだっているんですか?」
「一体」
「虚塵の前には何でもないんですよ」
こう周囲のいぶかしむ声に返した。
「所詮はね。選手会だってそうですよ」
「・・・・・・・・・」
「いいですか?虚塵は今回もいいことをしてるんですよ」
ここからさらに話すのだった。そして後は勝手に喋りまくった。それを他の参加者も視聴者も眉を顰めさせて聴き、観たのだった。その結果だ。
まず麦助の事務所にだ。抗議の電話が殺到した。
「ふざけるな!」
「何だあいつの発言は!」
「ヤクザかゴロツキか!」
「二度とテレビに出すな!」
「首にしろ、首に!」
電話だけでなくファックスでもメールでもだ。抗議が殺到した。
番組スタッフにもだ。抗議が殺到した。
「何であいつを出したんだ!」
「虚塵の犬かあいつは!」
「夕刊キムとどう違うんだ!」
「もう二度と出すな!」
野球を愛する全ての者が麦助に怒りを感じた。そうしてだった。
本職らしい落語の場においてもだ。彼が出るとだ。
「消えろ!」
「落語界からいなくなれ!」
「手前の顔なんか見たくもねえ!」
「出て行け!」
座布団はおろか空き缶やゴミまで投げ付けられる。最早落語どころではなかった。
彼は完全に干されてしまった。テレビに出られなくなった。
それでブログでしか発言できなくなった。しかしであった。
「あと一撃やな」
村野がここでまた言った。
「もう一回あるで」
「ありますか」
「また」
「ああいう奴は続けて自爆する」
だからだというのだ。
「それでや」
「続きますか」
「そうなるんですね」
「そや。まあ見てるんや」
自信たっぷりに言うのであった。
「それをな」
「そうなればいいですけれどね」
「本当に」
周りは半信半疑だった。むしろ疑いの方が多かった。
果たして村野の言う通りになるのかと思っていた。しかしだった。
また虚塵のオーナーがだ。選手会からの抗議に対して言ったのだった。
「無礼を言うな」
そしてであった。
「たかが選手が」
誰もがこの発言に激怒した。そして批判は最早頂点に達した。
その時だった。麦助も一緒に言ってしまった。
その数少ない意見が言える場所となったブログでだ。彼は言った。
「まあたかが選手だしね」
このあまりにも無神経かつ本音が出た言葉にだ。野球ファン達は彼にも怒りを向けたのだった。当然と言えば当然のことである。
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