| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

たかが芸人

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章


第三章

「後は入団会見だけですよ」
「まだ入るって決まったわけじゃないですよ」
「あの、それわかってます?」
「虚塵に入りたくない人なんていないんですよ」
 傲慢な態度でこう主張するのだった。
「違います?天下の虚塵ですよ」
「いや、そういう問題じゃないですから」
「これって」
「そうですよ、中学生を指名って」
「あからさまな協定違反じゃないですか」
「協定なんかどうとでもなるんですよ」
 今度はこう言う始末だった。
「虚塵の前にはね」
「いえ、そういう訳にはいきませんから」
 選手会長はその麦助に真面目な態度で反論する。
「ですから。これはですね」
「はい?貴方まだ言ってるんですか?」
 その会長にだ。あからさまに馬鹿にした態度で返した。
「貴方の意見なんてね。弱小球団の人の意見なんてね」
「どうだっているんですか?」
「一体」
「虚塵の前には何でもないんですよ」
 こう周囲のいぶかしむ声に返した。
「所詮はね。選手会だってそうですよ」
「・・・・・・・・・」
「いいですか?虚塵は今回もいいことをしてるんですよ」
 ここからさらに話すのだった。そして後は勝手に喋りまくった。それを他の参加者も視聴者も眉を顰めさせて聴き、観たのだった。その結果だ。
 まず麦助の事務所にだ。抗議の電話が殺到した。
「ふざけるな!」
「何だあいつの発言は!」
「ヤクザかゴロツキか!」
「二度とテレビに出すな!」
「首にしろ、首に!」
 電話だけでなくファックスでもメールでもだ。抗議が殺到した。
 番組スタッフにもだ。抗議が殺到した。
「何であいつを出したんだ!」
「虚塵の犬かあいつは!」
「夕刊キムとどう違うんだ!」
「もう二度と出すな!」
 野球を愛する全ての者が麦助に怒りを感じた。そうしてだった。
 本職らしい落語の場においてもだ。彼が出るとだ。
「消えろ!」
「落語界からいなくなれ!」
「手前の顔なんか見たくもねえ!」
「出て行け!」
 座布団はおろか空き缶やゴミまで投げ付けられる。最早落語どころではなかった。
 彼は完全に干されてしまった。テレビに出られなくなった。
 それでブログでしか発言できなくなった。しかしであった。
「あと一撃やな」
 村野がここでまた言った。
「もう一回あるで」
「ありますか」
「また」
「ああいう奴は続けて自爆する」
 だからだというのだ。
「それでや」
「続きますか」
「そうなるんですね」
「そや。まあ見てるんや」 
 自信たっぷりに言うのであった。
「それをな」
「そうなればいいですけれどね」
「本当に」
 周りは半信半疑だった。むしろ疑いの方が多かった。
 果たして村野の言う通りになるのかと思っていた。しかしだった。
 また虚塵のオーナーがだ。選手会からの抗議に対して言ったのだった。
「無礼を言うな」
 そしてであった。
「たかが選手が」
 誰もがこの発言に激怒した。そして批判は最早頂点に達した。
 その時だった。麦助も一緒に言ってしまった。
 その数少ない意見が言える場所となったブログでだ。彼は言った。
「まあたかが選手だしね」
 このあまりにも無神経かつ本音が出た言葉にだ。野球ファン達は彼にも怒りを向けたのだった。当然と言えば当然のことである。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧