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第六章


第六章

「そう、あまりにも真っ直ぐな正論も時にはです」
「必要なのですか」
「そうなのですか」
「そうです。あの方の正論は必ず世の中に届きます」
 そうなるというのだ。
「そして」
「そして、なのですね」
「それからなのですね」
「そうです。これからはじまります」
 八条はその彼を見ながら話し続ける。
「あの方が道を開かれることが」
「そうですか。ではどうなるか」
「これからなのですね」 
 彼等はその叫び続け抗議し続ける彼を見ていた。彼は夕方までそれを続けやがて五時になると去った。国防省の勤務時間まで考えてそれを守ったのである。
 そしてこの彼はというと。やがて一つの選択肢を選んだ。それは。
「皆さん!」
 日本のある選挙区においてだ。宣伝車の上でマイクを手にする彼がいた。
「このままでは日本の国防はこれ以上どうにもならないものになります」
 こう選挙民達に対して言うのである。
「これを何とかしなければなりません」
「ああ、この人はあれか」
「防衛関係の専門家なんだな」
 選挙民達はここで彼の主張がわかった。
「それで立候補するんだな」
「そうなんだな」
「その為にはより法整備を連合軍のそれに従い整え」
 まずはそれからだというのだ。
「そしてそのうえで」
「そのうえで?」
「それからは」
「そして兵器の生産体系を連合軍の様に大量生産方式に切り替えます。また訓練をさらに厳しく長くし軍としての練度を高めます」
 そうするというのだ。かなり具体的だった。
「それにより強い軍にします。国軍を」
「そうか。考えてるな」
「真面目に」
「そして設備を充実させその財源は」
 そうしたことまで細かく話していく。彼は軍事中心だがそこから多くのことを細かく学んできていたのだ。そしてそれをかなり具体的に言い選挙民達に訴えた。
 そしてそれは。彼等にも伝わった。口々に言うのだった。
「なあ」
「そうだよな」
「あのユキーオ=アホウヤマスキーよりもな」
「ずっといいよな」
「そうだよな。イチロット=オザワマンなんか只の腐敗政治家だしな」
 彼が出る選挙区の有力政治家達だ。どちらもかなり評判の悪い政治家だ。しかし他に力を持っている政治家がいないので当選し続けてきた。こうしたことが起こってしまうのもまた民主主義である。
「それに比べてこの人はな」
「違うな」
「そうだよな」
「しっかりしてるよ」
 そのことが伝わったのだ。
「言ってることな」
「それに真面目だしな」
「ああ、そうだな」
 このことも伝わったのだった。
 そしてだ。選挙の結果だ。彼はそのアホウヤマスキー、オザワマンを大差で破り当選した。そしてそのまま日本の政界に入った。所属政党は改革派であった。
「これはまた」
「いい新人ですか」
「ええ、かなりね」
 その改革派の領袖であり日本国首相でもある伊東は微笑んで側近達に述べた。
「見所があるわ。これは大切にしないとね」
「そうされますか」
「真面目で一本気」
 伊東は微笑みをそのままに話す。
「いいことじゃない」
「では彼はこのまま」
「我が党の一員として」
「問題は多いけれどね」  
 伊東はこのことも認識してはいた。
 
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