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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―

作者:鳩麦
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第二章
  十九話 合宿終了!

 
前書き
時間がかかった分長いです……十九話 

 
「ふー……ん?」
ライノがロッジに戻って飲み物片手に廊下を歩いて居ると、一部屋から、やけににぎやかな声が聞こえて来る。

「よう、子供達何騒いで……おぉ!なんだヴィヴィオ、目ェ覚めたんだな!」
「あ、えっと、心配を掛けてしまってごめんなさい!」
子供部屋に集まっているコロナ・リオ・アインハルト・ルーテシアのメンバーの中に、先程まではいなかったメガーヌとなのはの母親組。それにヴィヴィオの姿を見つけて、ライノは若干安堵しつつ笑顔で言う。と、恐縮したようにヴィヴィオが頭を下げたので、ライノはそんな殊勝な態度に笑いながら、ふりふりと手を横に振った。

「いやいや。無事だったならそれで良いって事よ。それよか、何見てんだ?」
興味深げにライノが彼女達の覗きこんでいた映像を見ると、リオが楽しそうに言った。

「これ!去年のIMの動画です!」
「あぁ。成程」
ニッと笑って、ライノは納得が言ったように首を縦に振る。
表示されたホロウィンドウには、何処かのスタジアムらしき巨大な円形の建物や、その場所で整列し、壇上に上がった少女の言葉を聞いて居る少女達の動画が、かわるがわるに映し出されていた。

IM(インターミドル)CS(チャンピオンシップ)
Dimension Sports Activity Association……通称、DSAAの、公式魔法戦競技会が主催する、10~19歳。つまり、十代の若者のみを対象とした、個人ライフポイント計算方式による、実戦形式の魔法戦競技大会である。
その参加範囲は、なんと全管理世界。すなわち、時空管理局を中心とした世界の全ての子供たちを参加対象として、その子供達……否。若き魔導師たちが、自らの力と技の全てを掛けて頂点を競いあう、超巨大公式大会なのだ。

「さしずめ、アインハルトを勧誘か?」
「はいっ!」
「今日の試合、結構アインハルトにとっても良かったみたいだから」
「あ、ありがとうございます……」
元気に返事をしたコロナと、微笑みながら言ったルーテシアに、恐縮したように頭を下げる。

「お前らも出るのか?」
「はい!大会規定は十歳からなので、今年から私達も出られるんですよ!」
目を輝かせて言う……思っていたより元気そうなヴィヴィオに、少し安堵しながらライノはほうほう。と感心したように頷く。

「十歳カウンターヒッターか。上位行けば話題さらいそうだな。IMは格闘型すくねーし」
「あ、ライノ先輩ってもしかして、出場した事とか有りますか!?」
「ん?あぁ。まぁな。俺は男子の部だけど」
「だ、男子の部……」
ライノが頭を掻きながら言うと、コロナが若干恐れるような声でその言葉を繰り返した。

「男子の部って、IMの女子の部より武闘派ぞろいで、凄く怖いってイメージが有るんですけど……」
「あ、うん……私もそう言うイメージあるかも……なんだっけ、場外乱闘当たり前の超不良メンバー、地下格闘技……」
「どんなイメージだよ其れ……」
笑いをこらえながらライノが答える。流石に誇張され過ぎだ。

「確かに武闘派で口の悪い奴は多いけどよ、其処まで怖い奴らじゃねぇよ。慣れてみりゃ皆気の良い奴らさ。てか、不良っつーなら女子にも《砲撃番長(バスターヘッド)》が居るだろ」
「あー……」
「うう、でもやっぱりちょっと男子の人達は怖いかも……」
「あらあら」
「にゃはは……」
プルプル震えながら言うリオやコロナに、メガーヌとなのはが苦笑した。恐らく彼女達は、IMの男子が実は言うほど素行の悪い連中ではない事を知っているのだろう。どうやらこの歳の女子からすると、格闘技男子と言うのは少し怖いイメージもあるようだ。勿論、あって話してみれば話も違うのだろうが……
まぁ、無駄に相手を威圧したり挑発するような言動を起こすやからも確かに居るには居るので、ある意味では仕方ないのかもしれない。

「そいで?どうすんだアインハルト。出るのか?」
「あ、はい。今日の事で……私も色々と思う所が有りましたので……挑戦。させていただこうかと」
「へぇ。けどそーすっと、レギュレーションクリアしねーとだよな」
「レギュレーション……」
レギュレーションと言うのは、大会に参加する上での所謂必要条件のようなものだ。
年齢、健康、装備、同行者等幾つかの要素で構成されるが、アインハルトの場合であると……

「健康、年齢面は問題無くOKよね?」
メガーヌが言うと、なのはが頷く。ふと思い出したように、ライノが言った。

「そういやコーチとかセコンドどうすんだ?」
「あ、それはノーヴェが全員分引き受けてくれるそうです!」
「おぉ、そりゃまた」
一言にセコンドと言っても出場四人分全員と成ると中々大変だろうに。あ、いや……

「でもあの人姉妹多いから手伝ってもらうんかな……だったら俺も頼んでみっかな~」
「にゃはは」
割と本気で言うと、なのはが楽しそうに笑った。

「んじゃ、後はデバイスだな」
「デバイス……?」
何となしに言うと、アインハルトは少し良く分かっていないような顔をする。
ライノは苦笑して、言った。

「そうか。まぁ知らねーよな。安全性考慮してな、出場者はCLASS3以上のデバイスを装備しなきゃいかん事になってんだ」
デバイスは、その用途の広さによって、CLASSと呼ばれるレベルが分けられる。
CLASS3、と言うのは所謂戦闘用に使用可能なレベルのデバイス。簡単に言えば、バリアジャケットを展開する事が出来るレベルのデバイスの事だ。

「私……デバイス、持ってないです……」
「あら、ならこの機会に作らないと」
「ですが、真性古代(エンシェントベルカ)式のデバイスは作るのが難しいと……」
「あぁ、それなら平気だろ。な?ルー嬢」
「え?」
ライノがニッと笑ってそう言うと、何故かテンションアゲアゲなお嬢(ルーテシア)が理由もなく立ち上がって人差し指を高く掲げた。天を突きそうだ。

「問題ナッシーン!私の一番古い親友とその保護者様ってば、何と次元世界にその名も高い真性古代(エンシェントベルカ)な大家族なのだー!」
かなり大げさなようだが、実際の所彼女の言葉には一切の誇張も拡大解釈も含まれていない。現に彼女の言う大家族と言うのは、本来次元世界でも希少(レア)中の希少(レア)である筈の真性古代式術式に、何と家族全員が関係していると言う、真性古代式に家を与えたらこうなりました。と言うような家族なのだ。
ちなみに言うと。七人居る家族の内、飼い犬を除けば全員が女性である。飼い犬のストレスが心配になる所だ

「と言う訳で、八神司令達にお願いしておくよ~。今はミッドは朝だから、メール送っておく」
「は、はい……ありがとうございます」
何だか出来過ぎている位にトントン拍子に話が進むので、若干アインハルトが引いているが、そもそも彼女が現在関わっているメンバー自体、少々この次元世界における大スターが多すぎるくらいだ。この位の事で驚いていたのではやって居られないだろう。
異常識に服を着て歩かせて徒党を組ませると、こう言うメンバーになるのである。

────

その夜の事だ。

「ん……」
うっすらと青い光が照らす中、アインハルトは目を覚ます。今日はどうやら、月が明るいようだ。窓際に寝ていたせいなのか。明るさで目が冴えてしまった。

「…………?」
ふと、窓の向こうで何かが閃いたような気がして、アインハルトは窓際へと歩み寄る。見ると、月明かりに反射して、刃のような物がキラリ、キラリと瞬いているのがわかった。

『誰……?』
こんな時間に一体……そんな風に思った時には、武道家としての性だろうか?無意識に、アインハルトは玄関へと歩き出していた。

――――

ロッジの前の林をしばらく進むと、大人チームが昨日の昼間使っていた訓練場が見えてくる。
その一カ所、隅の方のスペースは、適当な模擬ターゲットを出すことで、誰でも自由に用途に合ったトレーニングが出来るスペースになっているのだ。
そして其処に、月明かりを反射する刃の主は居た。

「ふっ!」
ヒュンッ!と高い音を立てて突き出された斧槍(ハルバード)が、人型のターゲットの頭を貫きピタリと止まる。重量感のある槍の柄を先端だけを持っているにも関わらず、穂先には一切のブレがない。その槍を今度は身体ごと一閃させて自らの周囲のターゲットを一気に全て薙払う。と同時横一閃に振った勢いを利用して、槍の柄を再び手の中で滑らせ引き戻すと、目の前で再沸出(リポップ)したターゲットの数を眼球の動きで確かめ、槍を縦に回転させるとその勢いで再び槍を腕の中で延ばしたかと思うと、自身の正面でクロスするような、けれど地面には叩きつけない絶妙な軌道で斧槍を振り回し、更に槍を滑らせ柄の中ほどを持ち、穂先を正面に構えて一瞬停止。

「四式・改――」
その言葉と共に、彼は真っ直ぐに6mは離れた位置にあるターゲットを睨む。
そうして槍の穂先がバチッと雷撃を纏い――刹那。

「――瞬光・穿!!」
突き出した雷を纏う槍の刺突が、“飛んだ”。明らかに槍の届かぬ範囲にあった筈のターゲットの頭が綺麗に貫かれ、消滅すると同時に、彼の周囲に[ALL OVER]の文字が踊った。

――――

「ウォーロック、リザルト」
[Yes sir]
驚く程低い声で自身のデバイスに命じたライノに、ウォーロックは短く答え、彼の周りに幾つかのホロウィンドウが踊る。

「……瞬光のタメ、もうちょい短くしてーな」
[牽制に使うと言うレベルにはまだ届きませんか?]
「使えない訳じゃねーけど、もう少し元の四式の役割よりも幅が欲しいのは確かだ」
[使用魔力量を減らしますか?]
「これ以上魔力量減らして実戦に耐えうるかってのは今一自信ないな……幾つか発動までのシークエンスを簡略化出来ないか?」
「……あの……」
「!?」
アインハルトが小さく声をかけた途端、それまでデバイスと会話を交わしていた彼……ライノは弾かれたように振り向いた。

「あ、ああ、アインハルト!!!?お、おま、何で起きてんだ!?よい子は寝る時間よ!?」
[声が裏返っていますキモイですマスター。何パニクってるんですか女性のような喋り方はお止め下さいウザいですマスター]
「其処まで言うか!?」
いきなり騒ぎ出したライノに一瞬ポカンとしてから、アインハルトは話し出す。

「いえ、その……月明かりで目が覚めてしまいまして……それよりも、ライノさん……先程の……」
「うぐっ……ど、どっから見てた……?」
明らかにやりにくそうな顔をして、ライノはアインハルトに問う。アインハルトにしてみると、何をそんなに焦っているのか分からず、逆に戸惑う。

「申し訳有りません。盗み見るような形で、先程の模擬訓練の開始からみていました……」
「だああ……悪い、見苦しいもん見せた……」
本気で落ち込んだ風なライノに、アインハルトは慌てて否定する。

「い、いえ、違います!その、余りにも見事な武で、寧ろ唖然としてしまいました……素晴らしかったです」
「うぐ……あ、あぁ、まあ……サンキューな……」
「……?、?」
何故か益々やりにくそうにするライノに、アインハルトは訳が分からず頭の中で疑問符を募らせる。自分は何か失礼な事を言っているのだろうか……?

[お気になさらないで下さいアインハルトさん。マスターは何故かご自身が鍛錬をなさって居るところを特定の人物以外に見られるのを異常に恥じられるのです。全く、マスターの生命活動の中で、他に恥ずべき所など幾らでもおありになるでしょうに……]
「何それ!?俺の人生が恥だらけみたいに言うのやめない!?ウォーロックさん!」
[……?何故です?何か間違いでも?]
「素朴に疑問視しないで!?」
ぎゃーつくぎゃーつく騒ぐライノにポカンとしていると、アインハルトは先程みた物が夢であったような気すらし始めていた。
けれども……

「……っ」
騒いでいるライノの拳を見ると、完全に固まった槍だこが有るのが分かる。また改めて見る腕はしなやかに筋肉が付き、彼のイメージからすると少し違和感が有るほどに鍛えられているのが分かった。

『何故……』
今まで全く気が付かなかったのか。そう考えて、アインハルトはすぐに理解した。彼自身が、そういうイメージを彼に定着させるような行動ばかりしていたからだ。だとすると、もしかしたら……

「あの……ライノさん」
「だからさぁ……あ?なんだ?」
未だにウォーロックと何事かを言い合っていたライノが、首を使って振り向く。そんな彼に、アインハルトはおずおずと聞いた。

「間違いならば申し訳有りません……ご自分の力を、まだ隠してらっしゃいませんか?」
「……む」
アインハルトの問いに、ライノはカチッと固まった。

「……なんでそう思った?」
「その、先程見ている限り、あれは昼間の陸戦試合とはさらに違った戦技を使用しているように思えました。その……」
「例えば、お前が使ってる“覇王流”みたいな系譜の武道か?」
「っ……」
言わんとした事を先読みされて、アインハルトは言葉を詰まらせた。

「まあ、そうだな、半分は合ってる。確かにさっき練習してたのは古流武術の一種だ。“雷帝式”ってんだ」
「雷帝……ダーリュグリュンの系譜ですか……?」
少し自信なさげなアインハルトに、けれどもライノは苦笑して首を縦に振った。

「流石に良く勉強してんな。合ってるぜ……まあ、俺自身は別に雷帝の血縁って訳じゃねーけどな」
「では……」
何故貴方が古流武術を……?と、アインハルトが内心で首を傾げていると、軽く頬を掻いてライノは続ける。

「まぁなんつーか、知り合いにその血筋の奴が居てな?其奴の影響があって、ちょこっとな」
「…………」
先程見た戦技は、どう見てもある一定以上の域に到達していたように思った。あれで“ちょこっと”とは、この男の“ちょこっと”はどれだけ幅の広い“ちょこっと”なのだろう……?
そんな事を考えていると、(別に、作者が意図的に“ちょこっと”を連呼したかった訳ではない)ふとアインハルトはライノの手札の多さに気が付かされる。既に見せただけでも、ハルバードによる近接戦闘に、電磁力の魔力変換、的確な射撃魔法、ゴーレム創製……

ゾクリ、と

不意打ちののように、アインハルトの背筋に悪寒が走った。武道家としての直感か、あるいは単純な思考によってか、ライノの能力の異常な高さに、彼女が気付いたからだ。

ライノの能力はその一つ一つが、十分に実戦に耐えうる物であったと言える。それは、今日の陸戦試合で何度もライノと立ち合ったアインハルト自身が、一番よく分かっている。しかしならば……例えば自分は、どうしたらライノに勝利出来る?
魔力変換で動きを止め、射砲撃で中、遠距離を打ち抜き、ゴーレムで戦術に幅を広げ、古流武術が近距離の相手を沈める……それらが“一斉に”自分に牙を剥いたなら、自分はどう対応すれば良い?

ただの軽薄な青年などでは無いことは、分かっているつもりだった。しかし、こうして冷静に分析したとき浮かび上がってくる、この青年の戦闘能力は……。

「……そーいえば、アインハルト」
「は、はいっ!?」
不意にライノが少し申し訳無さそうな顔をしてアインハルトを見た。かと思うと、アインハルトは飛び上がって反応する。

「……いや其処まで驚かんでも……」
「い、いえ、申し訳ありません……」
「いや別に良いけどさ。てか。そうだよ、謝るのは俺の方なんだって」
「……?」
苦笑しながら言った言ったライノに、アインハルトは首を傾げた。
はて、彼に謝られなければならないことなど、何か有っただろうか……?

「いやぁ、俺さ、昨日……ああ、もうだんだん一昨日か……まあこないだの昼飯の後に、お前とヴィヴィオ、お前の記憶云々の話してたろ?あれさ……立ち聞きしてたんだよな……」
「えっ?」
「いや、ホント盗み聞きしたのは悪かった!」
パンッとてをあわせて頭を下げるライノに、アインハルトは戸惑いながら首を左右に振る。

「い、いえ。特に隠し立てしたかった訳では有りませんから……むしろ、申し訳有りません。暗い話をお聞かせして……」
「いやいやいや。ってか逆に謝られると思って無かったな……まあ、許して貰えるなら……」
苦笑しながら言うライノに、アインハルトはコクリと頷く。

「はい。別段、聞かれて困る訳ではないので……」
「さよか。しっかし……なんつーか壮大だよな、お前の目標……先祖の武術を受け継いで高めるってのは……言うと簡単だけどよ、並大抵のもんじゃねーんだろ?“覇王”の人生にしてもさ」
「……はい。最期には、本当に武術にのみ全てを賭けていた人でしたから……」
どこか懐かしむように、慈しむように、アインハルトは言った。その瞳は正しく時の彼方に埋もれた一人の王の人生を見つめ、遠い光を見るように細められている。

「……辛いと思ったこたねーのか?」
「え?」
「ご先祖さんの遺志を次いで、伝わる武道を高め、極め、でもっていつかはご先祖さんをすら……お前の考え、別に間違えてるとは思わねー。……けどよ、それでお前はしんどくねーのか?辛くねーの?」
「…………ッ」
真剣な顔で聞いたライノに、アインハルトは少しだけ息を詰まらせるように胸を押さえた。

『私が、答えに迷って居るから……?』
……否、違う。
答えは、もうでている。只自分の心が、その道を選ぶ事の意味を、その道の先に有るのが、決して幸福や笑顔と言う温かい物では無いのを自分自身がよく分かっているから……。


『私の弱い心は……それを、恐れているのでしょうね……』
だから、違う。
何かを振り切るように一度俯いて首を振り、彼女は答える。

「辛さや、痛みは、私にとっては、もう問題では有りませんから」
「…………」
「今は只……私自身と、彼の……クラウスの悲願を叶えること意外は、考えていません……それが、私の願いでもありますから……」
「…………」
静かな、けれど彼女にとっては確かな意志と力を込めたその返答を、ライノは黙って聞いていた。
やがて彼は小さく苦笑すると、どこか尊敬を込めた口調で、小さく言葉を紡ぐ。

「そうか……お前は俺が捨てたもんを、まだ持ってんだな」
「……え?」
それは、一体どういう……
そう聞くよりも前に、ライノはクルリと身を返すと、何時も通りの軽い口調で言った。

「悪い悪い、変なこと聞いたな。戻ろうぜ」
「え、あ……」
二ヤッと笑って言った彼に、何故だか、アインハルトはそれ以上問い続ける事が出来なかった。

何時もよりどこか明るい月。その青い光が、二人の、どこか影のかかった、一筋の道を、照らしていた。

────

翌日、なんとも偶然か、はたまた日頃の行いが良いせいか……まあ日頃の行いで天気が決まるとするならセインやライノは雨女雨男であると言うことに……おや?今どこからか抗議の声が聞こえた気がするが、気のせいだろうか?……気のせいだろう。気のせいだ。気のせいである。
さて、そんな晴れた合宿三日目の昼前、朝飯を食べてしばらく休んでいたノーヴェとヴィヴィオが、のんびりとロッジの前を歩いていた。

「ん~!いい天気~!」
ゆっくりと伸びをして、ヴィヴィオは空を見上げる。今日は昼御飯をピクニックがてらに外で食べる事にしていたので、その前に練習がてら身体を動かしに来たのだ。

「そーいえば……」
「?」
ふと空を見上げながら、ヴィヴィオがクルリとノーヴェに向けて振り返る。

「ありがとね。ノーヴェ」
「あ?なんだよ、いきなり?」
急に礼を言ったヴィヴィオに、ノーヴェは戸惑ったように頬を掻く。

「アインハルトさんの事、この合宿に誘ってくれたり、お兄ちゃんとみんなの間に居てくれたり……コーチ引き受けてくれたり、色々」
「……別に、礼を言われるような事はしてねーよ。どれも彼奴等自身が、自分で選んだ事だ。」
「言うと思った!」
くすくす笑いながら言うヴィヴィオに、ノーヴェは苦笑して

「でも、お陰でアインハルトさんはIMに出てくれて、私も……ほんの少しだけど、私の中で、進まなきゃいけない道が見えた気がする」
「……ヴィヴィオ」
少し俯いたヴィヴィオに、ノーヴェが気つかわしげな声を出した。
その声に、自分は大丈夫だと伝えるように、ヴィヴィオは大きく顔を上げた。

「私ね、昨日、何度も考えてた……私とお兄ちゃんが一緒に居た事、今、一緒に居る事。お兄ちゃんに私がした事……私が、どうしたいのかって事」
「…………」
空を見上げて、大きく背を伸ばすように、ヴィヴィオは言う。
それは自分を奮い立たせているようでもあったし、何かを振り切ろうとしているようでもあった。

「でもね?たっくさん考えて、それでも分かったのは、一つだけなんだ」
胸に手を当てて、自分の中の想いを確認するように、ヴィヴィオは言った。

「私は……お兄ちゃんと一緒に居たい。お兄ちゃんと、こんな気持ちのまま離れて言っちゃうのは嫌だって、ホントのホントにそうだって分かったの。だって私は、お兄ちゃんの事大好きだったから……ううん。今も、大好きだから!」
「……そうか」
輝くような、けれどきっと彼女の心にとっては薇の中を突き進むような決意。そんな覚悟と決意を、ノーヴェは静かにかみしめて、それでも、微笑みながら見守る」

「怖い事だってあるよ……?ううん、ホントは、お兄ちゃんと触れ合う事全部が今はすごく怖い。でも!この気持ちは変わらないから……」
否、きっと、変える事も、諦めることも、出来ないから。

「だから私……頑張る……IMも、お兄ちゃんとの事も……!全部頑張る!!」
「……あぁ!」
本当に、強く思う。
あぁ……彼女は間違いなく、不屈の心を受け継いだ少女なのだと。

────

「すぅ……」
ロッジからは少し離れた修練場で、クラナは静かにたたずみ、構えを取って居た。
既に完全に身体に染み付いた動作で、演舞の一連の流れをゆっくりと繰り返していき、身体の各部位の動きを確認して行く。

──時には鋭く、時には穏やかに、時に素早く、時に緩やかに──

クラナの格闘戦技は元々、彼の母親から習ったものだ。まだ四歳だったころから母はクラナに戦技の手ほどきをしてくれた。
勿論成長に影響が出ないよう、初めはスポーツ程度の物だ。其れが徐々に当たり前になり、演舞へ、そして実戦形式の格闘戦技へと変化して行った。
ちなみに形式が格闘になったのは、自然な流れによるものだ。射砲撃も防御魔法も魔力制御の下手さと、無色の魔力と言う特製のせいで上手く出来なかったクラナに取っては、格闘技が一番楽しく、やりやすかったのである。

「ふぅ……」
ゆったりと息を吐き、拳を収めて残心を取る。やがてそれも収めると、クラナは真っ直ぐに立って、丁度視界に入った蒼い空を見上げた。

「……なぁ、アル」
[はい]
唐突な問いの口調に、即座にアクセルキャリバーが答える。其れはもう、彼等の間では当たり前になってしまった意思伝達の速さ。故に驚く事も無く、クラナは自らの愛機に問う。

「俺は……間違ってたかな……?」
[……間違ってた、とは?]
「……俺、今までずっと、なのはさん達になるべく関わらないようにって思ってきた。……同じ家に居て、そんなの難しいってのは分かってたけど……変な話、家の中でもお互いがお互いを居ないようにふるまう家って、この世界には普通にある……だから何時か、なのはさん達と俺、両方にとって、両方が居ないのと同じ状況に慣れたら、きっと俺達は、お互いから解放される。時間が全部を何処かへ置き去りにして埋め立てて、なのはさんはもう母さんを追い目に感じなくて済むし、ヴィヴィオは辛い事を思い出さないし、フェイトさんは俺達に気を使い続けなくて済む。そんな状況が、作れる筈だって思ってた」
[…………]
クラナは空を見上げて、小さく呟くように言葉を紡ぐ。

「俺の中の憎しみだって、あの人達から離れて行けばきっと、自然と消えて行くって、そう思ってた……でも……」
息を止め、自分の心を見つめる。どうしようもないほど醜く歪んだ其れは、未だに、沢山の怒りと憎しみを詰め込んだままだ。

「ライノの言う通りなんだ……苦しいままなんだよ……なんでなのか分からない。でも……ずっと俺は、何処かで苦しいって思ってたんだ……自分で選んだ筈の、この状況が……!」
[相棒……]
其れが、自分だけの苦しみであるならば、クラナはそれを甘んじて受け入れるだろう。自分が苦しむ事で、彼女達が笑顔で有り続けられるのならば、苦しみは無いも同然の物になるだろう。けれどならば自分が遠ざけ続けた先に有る現在(いま)、自分が笑顔で居て欲しいと願った人々が笑顔で居てくれるのは、一体いつだ?

何時も不安そうな、何処か恐れるような顔を彼等が向けていた事に、クラナは気がついて居なかった訳ではない。けれど其れは、まだ自分が彼女達の傍に居るせいだと思っていた。だから高等部卒業と同時に家も出るつもりだったし、その為の針路もクラナは既に調べている。なのに……彼等は自分と向き合う時に限って、自分が彼女達の正面から向き合った時に限って彼女達は……まるで安心したような笑顔を向ける……!楽しそうな笑顔を向ける……!

自分が避ける時、彼女達は決して笑顔ではいないのに……!

[……相棒]
「…………」
不意に、愛機の声が耳に染み込んだ。何処かいたわるような響きを含んだその音が、今日はやけに澄んで聞こえる。

[相棒の気持ちを完全に理解する事は、恐らく私にはできません……ですがもし相棒が今のやり方に少しでも疑問を感じてらっしゃると言うのなら……やり方を変えてみる事は……間違った選択では無いのではないでしょうか……?]
「……でも……」
それは、その理屈は、クラナにも分かる。けれどそれではいつの日か、きっと自分はまた自分の中にくすぶる憎しみを彼らへと向けてしまうだろう。
四年前からどうしても消えない。消そうとどれだけ思っても消す事の出来ない……まるで植えつけられたような憎しみが、何時か彼女達に矛先を向けてしまう……。
其れが途方も無く、怖かった。

──強さが欲しい──

自分の中の憎しみを押し込め、怒りを殺し、制御する事の出来る心の強さが……それが自分に有りさえすれば……きっと今とは別の道を模索する事も出来る筈なのだ……

「……アル……」
[はい、相棒……]
「……IMに、出ようと思うんだけど……駄目かな……?」
[……全く、何を仰いますか!]
「え?」
呆れたようなアルの言葉に、クラナは間の抜けた声を出した。其れを無視して、アルは誇らしげに言う。

[私の力は、貴方の望みをかなえ、貴方と、貴方の守りたい物を守る為に有る力です……私に許可を求める等、滑稽ですよ……?いつものように仰ってください。相棒]
「……うん」
腰に釣られていたペンライトを握り、真っ直ぐに見詰めて、クラナは言葉を紡ぐ。

「……俺は、俺の強さを高めたい。……武道は心を鍛える……母さんはそう言ってたんだ……だからきっと、俺の武と一緒に、俺の心は鍛えていける。試して、高めるには……戦わなきゃ行けないんだ。……相手だけじゃ無く……自分と……」
[はい]
そう。自分は高めなければならない。他の誰でも無い、自分自身の心を。心身と言う言葉の通り、健全な身体の持つ強さが心の強さへと繋がって行くと言うのなら……其れが出来る筈だ。自らを鍛え高めた先の、公正な規則の下で競い合う“相手にも自分自身にも勝つ戦い”の中で。

「だから……俺は今年のIMに出たい……付いて来てくれるか?アル」
[勿論です!相棒!]
何時も通りに、威勢良く答えた自らの相棒に、クラナは小さく微笑んだ。

「……ありがとう……!」

────

楽しい時間と言うのは、なんだかんだと言っている内に、すぐ過ぎる物だ。
修学旅行や遠足、某テーマパークに言った時等、普段と違う驚きや刺激、そして何よりも楽しさに満ちた時間と言うのは、その物事に集中しているが為に、時間の経つのを早く判じてしまう物なのである。
掻く言うこの作者も、こうして夢中になってキーを叩いて居る内に、何時の間にやら時計は午後30時を指して……って30時!?
コホン、失礼、話がそれた。、さて、と言う訳で色々と有れど楽しかった四日間の合宿はあっという間に過ぎ、此処はミッドチルダ首都次元港。

合宿メンバーはと言うと、今はなのはとフェイトが預けていた車を取りに行き、スバル・ティアナと、ノーヴェ、それに子供たちだけが残って居た。

「でも、みんな明日からまた忙しくなるわねぇ」
「インターミドルに向けて、ばっちりトレーニングしなくちゃ!」
ティアナとスバルが其々子供達を見ながら言った。執務官と防災救助隊というアホほど忙しい職に付いている事を考えれば、ある意味彼女達にこそ向けられるべき発言とも絵居るかもしれない。と、そんな事を一々言うのは野暮と言う物か。

「はいっ!でも、ノーヴェ師匠(コーチ)がきっちりトレーニングメニュー組んでくれるので、大丈夫です!」
そうそう。ノーヴェは、チビッ子達のコーチ兼、試合時にリング外でアドバイス、回復などを行う、セコンド役を引き受ける事となって居た。
勿論四人全員を彼女が面倒みるのでは大変なので、彼女の姉妹たちも手伝ってくれる予定だが。


さて、此処で一度、IMと言う大会の内容に付いてさらりと紹介しておこう。
概要としては、先程説明した通り、DSAA主催の、魔法戦技競技大会である。

しかし実を言うと、この大会の仕組みは少し細かい。
出場の基盤となる規定が、“管理世界内のいずれかの世界の出身であること”と“十代である事”のみであり、加えて大会を運営する組織がこの次元世界全体のスポーツ競技を統括する組織である為、この大会には非常に沢山の子供たちが参加する。
その中からトップ……つまり、「次元世界最強の十代」を選び出す過程は、当然、ふるい落としの連続だ。

先ず参加者達が初めに参加するのは、《地区選考会》
各世界内の、更に細かく区分けした地区ごとに予選参加者を募り、其処でレギュレーションの確認と簡単な健康チェック、及びスパーリングの実技を行う。余談だが、この組み分けにおけるヴィヴィオ達の参加枠は、《ミッドチルダ中央区》である。

さて、その選考会の結果からトーナメント表が組まれ、《地区予選大会》が行われる。
予選大会は第1組~20組までで競われ、其々のトーナメントのトップ選手が決まるまでの勝ち抜き戦だ。ちなみにこれも余談だが、トーナメントには一般参加者の[ノーマルクラス]と、選考会の成績優秀者や過去の入賞歴の持ち主たちからなる、シード枠の[エリートクラス]が存在する。詰まる所、既に強さが確定している人物たちほど、戦う回数は少なくて済む訳だ。まぁこれ自体は、トーナメントのお決まりである。

その勝ち抜き戦に勝利し、其々の組の中でトップとなった《地区代表》。そして前回の都市本戦優勝者によって行われるのが、上位大会、《都市本戦》である。
この都市本戦に置いては、各都市の地区トップが決まる。ヴィヴィオ達で言えば、《ミッドチルダ中央区》のトップが決まる訳だ。

さて、都市本戦を勝ち抜き、《都市代表》となった選手には、さらなる上位大会。
《都市選抜》に進む事が出来る。言うまでも無いだろうが、此処で決まるのは各都市その物のトップ。つまり、その世界のトップだ。ミッドチルダ最強ともなれば、最早次元世界でもその方面では名の知れた十代になる。

都市選抜での勝者、《世界代表》と呼ばれる彼等は、そこからいよいよ、最期の大舞台へと進む事になる。即ち管理世界、各世界の世界代表による《世界代表戦》だ。
そしてその大会で優勝した者こそが、地区選考会に参加した全ての者たちが持っていた夢。「次元世界最強の十代」の称号を得る事になるのだ。

まぁ、とはいえ……今回大会初参加のヴィヴィオ達に、その舞台など夢のまた夢。彼等のとりあえずの最高目標は、今回に置いては「都市本戦出場」だ。無論、十年計画で良いのなら、彼等も「次元世界最強」を目指す少女達の一角では有るのだが。

「あの、ノーヴェさん」
と、そんな話をヴィヴィオ達がしていると、唐突にアインハルトがノーヴェに向けて聞いた。

「どうした?」
「率直な感想を伺いたいんですが……今の私達は何処まで行けると思われますか?」
不意打ちの問いに、ノーヴェは一瞬だけ考えてしかし即座に既に知りうる答えを返す。

「元々ミッド中央は激戦区だ。DSAAルールに先鋭化する事で、能力以上の力を見せる選手も多い……その上で良いんなら……まず、ヴィヴィオ達三人は地区予選の前半までだ」
地区予選前半。つまり、巨大な物と見た時のIMと言う大会全体の最初の最初。地区予選のノーマルクラスで終了と言う事だ。
実際の所ノーヴェの見立てでは、現在のヴィヴィオ達ではエリートクラスの選手には一切手も足も出ないだろうと見ていた。

「アインハルトも、良いとこ地区予選の真ん中へんまで。エリートクラスで勝ち抜くのは正直キツイな」
「……ッ」
はっきりと言いきられたその言葉に、アインハルトは少しだけ悔しそうな顔をした。同時に、未だこの世界は、自分には想像も付かないほど大きく広いのだと思い知らされる。
……結論を言えば、「ほぼ無力」其れが、ノーヴェの答えだった。

しかしである。

「でも!予選まで、まだ二カ月有るよね!?その間に全力で鍛えたら!?」
そう、地区予選の開始までには、まだ後二カ月と言う大きな時間的猶予がある。その間に、選手としての彼女達を鍛える事は、十分に可能な筈だった。

「そうだな。どうなるかはわかんねぇ。あたしの予想なんてのは所詮その程度だ。アタシも全力で勝つ為の練習を考える。頑張って、ひっくり返せ!」
「「「「はいっ!!」」」」

さて、それでは此処で、今回ノーヴェのお世話になる子供達の基本ステータスを軽く確認してみよう。

高町ヴィヴィオ(10)
Style:ストライクアーツ
Skill:カウンターヒッター
Magic:ベルカ&ミッドハイブリッド
Device:セイクリッド・ハート(Type:Hybrid-intelligent)


コロナ・ティミル(10)
Style:ゴーレム創成(クリエイト)
Skill:ゴーレム操作(コントロール)
Magic:ミッドチルダ
Device:ブランゼル(Type:Intelligent)


リオ・ウェズリー(10)
Style:春光拳+ストライクアーツ
Skill:炎雷変換
Magic:近代ベルカ
Device:ソルフェージュ(Type:Intelligent)


アインハルト・ストラトス(12)
Style:覇王流(カイザーアーツ)
Skill:断空
Magic:真性古代(エンシェント)ベルカ
Device:???(Type:???)


────

「そう言えばノーヴェ、お兄ちゃん達は?」
「あぁ、彼奴等のメニューは自分らで個々人で組むそうだ。たまにアドバイスとかもらえれば、後はセコンドだけで良いって」
そうそう。クラナとライノはというと、試合に必要なセコンドだけはノーヴェに頼んでいて、きっちりと頼まれたノーヴェは快く其れを了承していた。
ちなみにこの話を聞いた時、ヴィヴィオは本当に飛び上がって喜んだ物だ。

「あ、そう言えばノーヴェ師匠!」
「ん?」
と、不意に手を大きく上げたリオが、元気な声でノーヴェに聞いた。

「ライノさんって、前にも大会に出たって言ってたんですけど、どの位強いんですか!?」
「あ?……あぁ、なんだよ彼奴自分で言わなかったのか?てか何処行った彼奴等」
「さっきトイレに行くってクラナ先輩と一緒に!」
「あぁ……」
呆れたような表情でノーヴェがいうのを、チビッ子達は首を傾げてみている。唯一人、アインハルトだけは、やけに真剣な表情でその顔を見つめていた。

「んー、教えるより見せた方が早いな。ジェット」
[OK]
ノーヴェの呼びかけにジェットエッジが答えるのとほぼ同時、ノーヴェの周囲に、幾つかのホロウィンドウが表示された。子供たちがそれを覗き込むと、すぐに内容が知れる。
其れは、有る“検索結果”だった。
「クラナ・ディリフス」と「ライノスティード・ドルク」その二つの名前の、検索結果だ。そして、其れを覗き込んだ瞬間……

「え」
「こ、これ」
「……!」
「……やはり……」
四人の其々の声が重なり、即座に……

「「「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~!!!?!?!」」」
三人の声が、重なった。

────

「いや~、すっきりした。やっぱ長旅はこたえるねー」
「機内で行きなよ……」
「いやーほら、到着シークエンスになってからだったからよ」
「はぁ……」
そんな事をだべりながら、二人の青年が次元港を歩いて行く。

「にしても……これでやっと、お前と公式でもっかいやれるな」
「はは……なんだか、ごめんね?待たせるようになって……」
「全くだ……ま、頑張ろうぜ?」
「……うんっ」
青年達は小さな靴音と、大きな存在感を残して、少女達が待つ場所へと歩いて行く。
戻った直後、彼女達からの、大量の質問攻めに合うとはつゆ知らず……人の多い空港内を、隙のない動きで、歩いて行く……

────

クラナ・ディリフス(15)
Style:ストライクアーツ我流
Skill:加速(アクセラレーション)
Magic:オリジナル&ミッドハイブリッド
Device:アクセルキャリバー(Type:Intelligent)
IM参加履歴:1回
最高戦績:世界代表戦 準優勝

ライノスティード・ドルク(15)
Style:魔法戦&ゴーレム創成&雷帝式&???
Skill:電磁力変換&ゴーレム操作&神雷&???
Magic:ミッドチルダ&近代ベルカ&ダールグリュン&???????
Device:ウォーロック(Type:Intelligent)
IM参加履歴:四回
最高戦績:世界代表戦 準優勝

────

大会への日々が……始まろうとして居た。

─第二章 《目を逸らす事、向き合う事》 完─
 
 

 
後書き
はい!如何でしたか?

そう言う訳で、これにて合宿は終了です。結構長い上にアップダウンの激しい精神描写が続きましたが、いかがでしたでしょうか?
一応最後は上向きの気持ちを前面に出して終わらせてみましたが……さて、どうなる事やらw

ライノのサブ主人公っぽさが少しずつ見えてきております。彼にも今後は活躍してもらわねば。

では、予告です。

アル「アルです!今回はほとんどたった一晩のお話だったのに、凄く長かったですねぇ!」

クリス「ピッ!(マスターもたくさんたくさん考えてました!)パタパタ……(これからもがんばります!)」

ア「本当、頑張ってもらえると助かります。相棒はまだ少し掛かりそうなので……」

ウォーロック「お二人はやはり大変ですね」

ア「でも、ライノさんもちょっと色々ありそうでしたよね?」

ウ「いえ。マスターは其処まで複雑な話ではありませんので」

ク「コテンッ(そうなんですか?)」

ウ「えぇ。そもそもどちらかと言えばアインハルトさんの方が問題の大きさは大きいでしょう」

ア「それはたしかに……なんにしても、それぞれの決意や想いを持ちつつ、予選開始まで後二カ月です!頑張りましょう!」

ク「ピッ!(はいっ!)」

ウ「えぇ」

ア「では次回!」

ク「《それぞれの練習へ》です!」

ウ「ぜひご覧ください」

!」 
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