ネギまとガンツと俺
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第32話「麻帆良祭~新たなる未来~」
ネギ一行はエヴァンジェリンの家に勢ぞろいしていた。
「超さんは午後まで動かないと言っていたので……また11時にここに集合ということでどうでしょうか」
というわけで一時解散。
ネギは他の生徒との約束を果たすため、まずは村上夏美の演劇舞台を見に行こうとその場所にまで足を伸ばしていた。
だが。
「あれ?」
誰もいない。
「場所を間違えたか?」
カモの問いに、ネギは首を横に振る。
「確かにここでやるはずだよ、あれ~? 場所変わっちゃったかな?」
何となしに首をめぐらせる2人だが、別のもっと大きな変化に気付いた。
空を飛んでいた気球や飛行船は姿を消し、街をにぎわせていた気ぐるみ集団や仮装少女たちも既にいない。
それは、そう。
「この風景は……まるでいつもの日常風景じゃねぇか?」
「……確かに、なんかおかしいね」
カモの指摘にネギが走り出した時だった。
「わ」
「キャ?」
ろくに前も見ずに駆け出したせいで誰かとぶつかってしまったらしい。
「スイマセ……あ?」
「あたた……ん?」
慌てて謝ろうとして、お互いに知った顔であることに気付く。
「夏美さん」
「あ~~、ネギ君!! 今までどこ行ってたのよ! 本当に大変だったんだから!!」
「え、あの……今までって?」
まくし立てる彼女の言葉に、だが次の瞬間にはその言葉に耳を疑った。
「超さんがタケル先生に殺されちゃったって!!」
「!?」
そして、異変は突き進む。
集合場所に集まった彼等はその異常事態に顔をつき合わせていた。
彼等の計算では今日は22日。
だが、現在の日付は6月30日。そして学園祭は20~22日。
つまり、ネギたちは学園祭最終日に帰ってきたつもりでいたが、その最終日から一週間の日が経過した今日という日に帰って来たことになる。
周囲には特に変わった事態は一切見られなかったので超鈴音の作戦は失敗を終わったことを彼等も理解していたが、今大事なことはソコではなかった。
「私達は超の罠に落ち、彼女と戦わずして負けた」
刹那が。
「だが、まぁ。他の魔法教師によって超鈴音の計画は防がれたみてぇだな」
カモが。
「その過程で、タケル殿が超殿を……?」
最後に楓が。
誰もが混乱しているせいで、いつもは気丈な彼女が微かに震えていることに気付く者は幸いにもいない。
「う……嘘です!!」
机を叩き、ネギが声を張り上げる。
超の計画が失敗に終わった今、大事なのは一週間先にまで飛ばされたことではなかった。
大事なのは「タケルさんが……超さんを……そんな、ありえません!!」
そう、学園の生徒間で流れている最も大きな事実。
『大和猛は超鈴音を殺し、そのまま姿をくらませた』
既に刑事事件として扱われ、大きなニュースとして大体的に報道されている。
新聞にも、そして未だにテレビのニュースでもその事件の爪跡は残され続けている。
そして、ネギは決意下す。
「最終日に……戻りましょう」
その声に、誰かが反対をすることはない。
そして、学園祭3日目の午後へと時は進む。
超とタケルが争う巨大飛行船。
それに近づきつつも、ある一定の距離を保ち続ける一機の飛空挺があった。
ネギを含めて計10名。
アスナを筆頭に後の『白き翼』になる面子が揃っている。
「ちょ、ちょっと……完全に2人きりになっちゃったわよ?」
結構な距離をとってあるので、普通の声で話しても問題はないはずなのだが、彼等の戦いを覗き続けている気まずさからか、やや小声でアスナがネギに尋ねる。
「いえ、まだです。もう少しギリギリまで待ちましょう」
「でも、もし本当に超さんが殺されちゃった後だったら間に合わないわよ?」
アスナの言葉に、背後で控えていた数人がゴクリと唾を飲んだ。
「だから、ギリギリまでです!」
かつてなくピシャリと言い切ったネギに、アスナは驚きと少しだけ拗ねた表情で「ふん」とそっぽを向き、黙り込む。
――……タケルさん!
ただ、静かに。
ネギは祈るように彼等の行く末を見つめていた。
未来は予定通りに時を刻んでいく。
「■■■■■」
凄まじい魔力によって構成された大きな爆炎がタケルを、いや、タケルどころか飛行船までをも包み込む勢いで爆発する。
タケルの視線は一瞬だけ、周囲をさまよって近くを飛ぶ飛空挺に着地した。ふっと表情から力を抜き、そして呟く。
「……キミは、本当に強いな」
こぼれた言葉は超から放たれた轟音によりかき消された。
「え?」
タケルと超の戦いを見守っていたネギ一行は、目の前で繰り広げられたその光景に、呆然と固唾を呑んでいた。
「……タケル、さん?」
――おかしい。
ネギの頭の中を当たり前の疑問がよぎった。
一週間後に飛ばされた未来で聞いた話では、タケルが超を殺したとなっていた。
だが、目の前の現実はどうなっている?
超から放たれた凄まじいまでの魔法。
それを、タケルは障壁もなしに、ただその身に受けたのをネギはその目でしっかりと見ていた。未だに晴れぬ爆炎の中、そんな彼が生きているはずもない。
巨大飛行船が、先の一撃で火をあげて沈んでいく。
おそらく自動操縦だったのだろう。というか飛行船の中に人がいれば流石に超もそんな攻撃をしようとはしないはずだ。
「た……タケルさん!!」
慌てて飛び出そうとしたネギの肩を刹那が掴む。
「待ってください!」
「なん……え!?」
刹那の腕すら振りほどこうとして、だが次の瞬間にはその異様な光景に目を奪われた。
先ほどまで自由に空を飛んでいた超が、まるで何かの力の作用を受けているかのように急激に高度を下げてこちらの飛空挺に突っ込もうとしているのだ。
「……直撃コースでござるな」
「あの勢いでは超鈴音の体が!」
「アニキ、魔法だ!」
「え、あ、うん! ……風よ彼女を!」
周囲の人間に促されるままに唱えられた魔法は、確かに超鈴音に伝わるはずだった衝撃を和らげ、フワリとその地に無事の着地を許した……もちろん背中からではあったが。
「超さ――」
「――まだでござるよ」
声をかけようとしたネギに、今度は楓が。
「え?」
何がですか? 尋ねようとしたネギの問いには答えず、顎で超を指し示す。
「……フフ、これはついていたとでも言えばいいのカナ?」
――まさか、ネギ坊主に助けられるとは。
たちあがろうともせずに倒れたまま呟いた超の言葉に反応したのは、他の誰でもない。
いつの間にそこにいたのか。
「……だがこれで今度こそ終わりだ」
――船を沈めて俺を落とせばそれで勝負は決着する、というのはいい判断だったが。
付け加えられた言葉に、超は今度こそ諦めたように笑った。
「ここまで完璧に対応しておいてそれはないネ」
気付けばそこにいたタケルが、馬乗りの状態から超に刀を振り――
「やば」
呟いた声は恐らくアスナのものだろう。そして、
「――待ってください!!」
ネギの言葉に、それでも止まらない刃は、それと同時に刹那の刀と楓のクナイがタケルの首筋に当てられたことにより、ピタリと止まっていた。
「……なに?」
さすが、というべきか。
首筋にまで刃を当てられているというのに焦った様子を見せるどころか、首をかしげて、それでも視線は超に送ったまま言葉だけをネギ達に向ける。
「どういうつもりだ?」
「……」
「ネギ?」
「……僕たちは今まで一週間後の世界に行っていました」
ネギがどこかくらい表情で口を開く。
「……」
タケルも今更になって「なぜ?」とは思わない。
――カシオペア……か。
アタリをつけて次の言葉を冷静に待つ。
「一週間後の世界ではあなたが超さんを殺して、行方不明になっています」
「なに?」
――……俺が?
ありえない。
タケルは彼女を殺すつもりなどないし、そんな事故が起こることすらありえない。危険な武器を彼女に使うこと自体避けてきた。
さすがに動揺を隠せないタケルに、ネギは声を涙ぐませて言う。
「それで、だから。どうにか今日に帰ってきた僕たちはずっとタケルさんと超さんにだけ目を配らせていたんです。タケルさんがそんなことをするはずがないって……皆でそう祈りながら……」
悔しげに顔を歪ませ、ネギの表情には激情が。
「なのに! やっぱりあなたは超さんを殺そうとした!!」
「いや、ま……」
タケルは無表情に、だが本気で困惑していた。
――……俺が殺そうと?
混乱しそうになる自分自身を必死で抑え、だが自分がどういう体勢でいるかを思い出して全てを理解した。
今、彼は超に馬乗りになって正に刃を振り下ろそうとしている状態だ。
つまり、例え本人が殺す意思をもっていなくても、他人から見たら殺そうとしているようにしか見えない。
「……これはただ、諦めさせるつもりで」
――超さんを殺すつもりなどなかった。
とはいっても誰も信じようとはしないことは明白。何せネギ達は未来を見てきたのだ。そして、その未来では実際にタケル自身が超を殺したという事態が起きている。
――……この際、俺が超さんを殺したという未来はおいておくとして。
グルリと、タケルは自分の周囲に目を向ける。
かつてなく彼女達の目は厳しい。
のどか、ユエ、パル、チウ、クー。
アスナも、刹那も、ネギも。
そして……楓も。
木乃香……は少し分かりづらいが。まぁ、それはともかく。
刹那や楓なら殺気の有無で気付きそうなものだが、『タケルが超を殺す』という先入観がその判断を曇らせている。
――これは……どうしようもないな。
「……で、どうしたいんだ?」
諦めたように立ち上がり、ソードをホルダーに。
それを機に、刹那と楓も数歩下がって、タケルをいつでもけん制できる位置に構える。
タケルは自身と同じように困惑気味の顔をしている超にも目を向けつつ、ネギへと向き直る。
「どうして……こんなことをしたんですか?」
「こんなこと、とは?」
あくまでもとぼける彼に、ネギが僅かに苛立ちを含ませて。
「どうして超さんを殺そうとするんですか!!」
「……」
「タケルさんなら、殺さなくても超さんを抑えることだって出来るはずじゃないですか!!」
震えた声が空に木霊した。信じていた人に裏切られたことによる悲しみと怒り。
――この人が。この人なのに。
ネギ自身ですらもよくわからない苛立ちを抱えている。
「なんのことか、俺にはわからない」
タケルとしては、本心。
正真正銘に真実のその言葉だが、この状況では怒りに火を注ぐ結果にしかならない。
「……まだそんなことを!!」
ヒートアップしてしまったネギを見て、ふと沸いた疑問を足元にいる超に尋ねる。
「……これも、キミの?」
だが、タケルと同じように呆気にとられた顔をしている彼女もまた首を横に。
「残念ながら、これは本当に予想外ネ」
「……そうか」
つまり、解決手段はないということを理解する。
――さて、どうしたものか。
タケルが本気で途方に暮れようとした時だった。
人生に災難は畳み掛けてくるものだと誰かが言っていたことを俺はフと思い出していた。
修学旅行前にマユという少女を保護してしまい、不良学生に絡まれたときもそう思ったが、今回は
恐らくそれ以上の異常事態だろう。
未来)と異世界が交わり、新たな未来は終わりを迎え、異世界の敵が動き出す。
「っ!」
ぞくりと。
タケルの背筋が震えた。
後書き
混乱されているかもしれない方のための解説。
学園祭
2日目深夜:ネギ一行がエヴァの別荘入り
3日目午後:魔法教師VS超軍団(ネギ一行は超の策略により一週間後にとばされることになるため不在)→タケルVSガンツによりタケル死亡(消滅)・超死亡
学園祭終了
一週間後:ネギ一行現実世界に帰還→事件を知って原作どおりの方法で3日目の午後へ帰還
2度目の学園祭
3日目午後:魔法教師VS超軍団の図式にネギ一行が介入(←今この時点)
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