| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百一話 託すものその三

「行ってみて私も驚きました」
「そうだろうね。まあ防大は厳しかったが」
 それでもだと話していく一佐だった。
「部活は気を休められたよ」
「かえってですか」
「うん、あと久留米は意外とましだったかな」
 厳しさということではというのだ。
「半年だけだったしね」
「防大の卒業生はですね」
「うん、半年教育を受けてそしてだよ」
 後は部隊での研究を受けてそして三尉に任官される。防衛大学校出身の者はそうしたコースになっている。
「久留米もいい場所だよ」
「確かチェッカーズの出身地ですよね」
 高橋がこのことを言ってきた。久留米市はこのことからも知られている。
「あそこは」
「ああ、懐かしいね」
「もう昔のバンドですけれど」
「私の若い頃はまだ解散していなかったよ」
 その頃のことから話す一佐だった。
「いいバンドだったね」
「そうでしたね、私は最近知りましたけれど」
「いい音楽は何時の時代でもいいものだよ」
 色褪せることはないというのだ。
「チェッカーズにしてもね」
「そうですね、確かに」
「私は今でも聴くよ」
 チェッカーズの音楽、それをだというのだ。
「時折ね。それに今は単身赴任だ」 
「だから余計にですか」
「うん、聴く時間はあるよ」
 こう少し寂しさも混ざった顔で言うのだった。
「まあ家族と一緒にいるのが一番だけれどね」
「自衛官は転勤が多いですね」
 高橋はこのことも言った。
「何かと」
「そう、多いよ」
「私はまあ一つの県内ですけれど」
「自衛官は全国だよ」
 日本全国の何処にでも転勤の可能性があるというのだ。
「特に幹部はね」
「下士官や兵隊さんは違うんですか」
「彼等は地域に留まれる、まだな」
 しかしだ、将校である幹部はというと。
「我々はそうはいかない」
「特に防大、一般大学卒業者は」 
 工藤も言ってきた。
「そうですね」
「うちも海自さんも空自さんもな」
 一緒だというのだ。
「大卒の幹部はな」
「転勤が多いですね」
 ここでこう言った工藤だった。
「A幹は」
「海自さんの幹部だね」
「はい、うちでは大卒幹部はこう呼ばれます」
「大卒幹部の試験は難しいがね」
 入試のレベルがというのだ。
「最近海自さんでも大卒の幹部はあれだね」
「はい、私の同期にも多いですが」
「曹候補学生とかから入って」
「そこで三曹になり」
「それから部内幹部の試験を受けてだね」
「幹部になるケースが多いです、B幹です」
 このコースで幹部になると海上自衛隊ではこう呼ばれるのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧