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復讐

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6部分:第六章


第六章

 このことを話すとだ。老婆は考える顔で言うのであった。
「妙じゃのう」
「やっぱりそう思うのね」
「うむ。あんたを犯した連中はあんたの彼氏だった奴と顔見知りだったということになるのう」
「私も知っていたのかしら」
「そうかも知れんというか」
 むしろだというのである。
「あんたのことを知っていたから襲ったのではないのかのう」
「私を知っていて?」
「そうじゃ。それでじゃ」
 彼女を襲いだ。陵辱したのではないのかというのだ。
 老婆はここでだ。タロット占いをはじめた。ケルト十字である。タロットの基本的な占い方の一つだ。そこで最後に出たカードはというと。
「ふむ。これは」
「何のカードだったの?」
「運命の輪じゃ」
 それだというのである。
「それが出て来たのじゃ」
「運命の輪っていうと」
「そうじゃ。つまりあんたが最後の五人目を始末する」
「その時に何かがわかるのね」
「五人目を殺したら部屋の中なり何なり調べてみればどうじゃ?」
 そうしてみたらだ。どうかというのである。
「そうすれば何かがわかる筈じゃ」
「わかったわ」
 アリサは老婆のその言葉に頷いた。表情が鋭くなっている。
 その鋭くなった顔でだ。彼女は言うのだった。
「部屋なり何なり探してね。どういうことか確かめるわ」
「真実はどうでもよかった筈じゃがのう」
「変わってきたわね」
 そのことをだ。自分でもわかってきたのである。
「明らかにね」
「そうじゃな。それではな」
「五人目。始末するわ」
 狙う目になっていた。まさに獲物を狙う野獣だ。
 その野に純粋な復讐をたたえた目で言ってだ。そのうえでだった。
 彼女は五人目の部屋に向かった。その最後の相手こそ彼女を最も酷く汚した相手だった。それだけに恨みもひとしおだった。
 その部屋に行きだ。チャイムを鳴らす。
 しかし出ない。だが扉の向こうに気配はする。
 それならだった。彼女はだ。
 扉を銃で破壊した。ショットガンで一撃だった。
 そのうえで扉を蹴破りだ。中に入ってだ。
 部屋の隅でがたがたと震えている相手をだ。両手に持ったピストルで蜂の巣にしたのだった。これで復讐自体は終わった。
 そしてそれから部屋の中を調べる。相手の携帯もだ。
 そうしたものを調べてだ。彼女はだ。驚くべき真実を知った。
 パソコンのメールのやり取りでだ。書かれていたのだ。携帯でもだ。
 ヘンリーは自分の借金のかたにだ。五人にアリサをやったのだ。そうしてそれが為にだ。彼女は五人に陵辱された。そういうことだった。 
 それを知ってだ。彼女はだ。老婆にこのことを話すのだった。
「そういうことだったのよ」
「ふむ。そうじゃったか」
「ヘンリーの部屋にも行ったわ」
 何故言ったのかは言うまでもない。だが、だった。
「けれどね」
「彼氏だった相手はおったか?」
「いなかったわ」
 首を横に振ってだ。アリサは答えた。
「いたことはいたけれど」
「いたのか」
「腐った果実になってね」
 古い歌のタイトルをだ。そのまま言ってみせた。
「それでいたわ」
「首を吊っておったか」
「死んで随分経ってたわね」
 アリサはヘンリーのその死体の話もした。
「腐ってね。首は落ちて身体も同じで。残ってた遺書には罪の意識に耐えられる云々ってあったわ」
「吊るされた体が腐って落ちておったか」
「そういうことよ。まあ細かいことは言わないけれどね」
「十分じゃ。首を吊った人間のことは知っておる」
「それもなのね」
「生きておれは知ることが多い」
 それでだ。知っていくというのだ。そういうしたこともだ。
 
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