オズのモジャボロ
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第三幕その六
ナターシャは頷いてこう言いました。
「トマトと鶏肉、人参と玉葱、ジャガイモにエリンギの」
「そうしたものを入れてみたのよ」
「美味しいですね」
スプーンで食べつつ言うのでした。
「このシチューは」
「そうでしょ、赤いのはね」
「カドリングの赤ですね」
「そうなのよ」
「トマトは元々赤いですけれど」
「トマトも色が変わるのよ、オズの国ではね」
ドロシーもシチューを食べています、そうしながらナターシャにこのことをお話しました。
「青かったり黄色だったりするから」
「紫のトマトも緑のトマトも」
「あるのよ」
「そこがオズの国ですね」
「そう、けれど味はね」
色は違ってもだというのです。
「同じだからね」
「人間と同じですね」
「貴方達もお肌や髪の毛、、目の色は違うわよね」
「はい」
「けれど同じ人間よね」
「そういうことですね」
「違うのは色だけよ」
けれど中身はというのです。
「そこは同じだからね」
「そういうことですね」
「そうなの、赤いトマトも青いトマトも美味しいわよ」
「そういうことですね」
「そうよ」
「この赤いパンも」
恵梨香はパンを食べています、赤いですがとても柔らかくて甘くて美味しいです。そのパンを食べてこう言うのです。
「美味しいです」
「そうでしょ、パンも私が焼いたのよ」
チョッキンペットは笑顔でこう言いました。
「美味しいって言ってくれて何よりだわ」
「本当に美味しいです」
「一杯あるからどんどん食べてね」
遠慮することはないというのです。
「アップルパイもね」
「はい、それじゃあ」
ナターシャはクールな顔立ちに微笑みを浮かべて応えます、そうしてでした。
その赤いアップルパイも食べてみました、そのうえで言うことは。
「紅茶が欲しくなるわ」
「そう言うと思ってね」
にこりとしてです、チョッキンペットが出してきたものは。
紅茶でした、しかもその紅茶は五人の世界の紅茶よりもずっと濃い赤です。まるでルビーを溶かした様に。
「用意していたわ」
「あっ、有り難うございます」
「カドリングのお茶の紅茶よ」
「そうですか」
「赤いでしょ」
「はい、とても」
「コーヒーもよ」
そちらの飲みものもだというのです。
「赤いから」
「そうなんですね」
「そう、赤いから」
実際にです、モジャボロに出してきたものは。
赤いコーヒーです、ジョージはその赤いコーヒーを見て目を丸くさせて言いました。
「コーヒーまで赤いなんて」
「驚いたかしら」
「はい、とても」
「そちらの世界ではコーヒーは黒いのよね」
「そうです」
ジョージは自分達の世界のことをここでお話しました。
「コーヒーは黒いものです」
「けれどここはオズの国でしかもカドリングだからね」
「コーヒーも赤いんですね」
「ええ、そうよ」
そうなっているというのです。
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