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久遠の神話

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第百話 加藤との話その八

「気をつけます」
「そういうことでな。本当に強い人間にならないとな」
「意味がないですね」
「剣道をしても生きていてもな」
 やはり人間として言う中田だった。
「まあ剣道をしていても心の鍛錬は難しいさ」
「それがですね」
「難しいさ、けれどそれをしないとな」
「生きている意味がないですね」
「ああ、ないよ」
「人間として」
「そういうことでな。君の闘いを頑張ってくれよ」
「そうします」
 上城は確かな言葉で中田に答えた。
「そして終わらせます」
「そういうことでな。さてこれからな」
「これから?」
「ちょっと妹とな」
 また彼女の話をする中田だった、それも笑顔で。
「一緒にいないといけないからな」
「妹さんと仲がいいんですね」
「俺のバイク乗るのが好きなんだよ」
「ああ、後ろにですね」
「そうだよ、だからちょっと行って来るな」
「はい、じゃあ今日はこれで」
「あいつも将来バイクに乗りたいとか言ってるしな」
 笑って話した中田だった。
「どうなるかだな」
「妹さんもバイクにですか」
「ああ、乗りたいって言ってるんだよ」
「じゃあ将来はお二人で」
「二人でカーリングとかな」
「そういうことをされることも考えておられるんですか」
「そうなんだよ」 
 中田は笑顔のまま上城に話す。
「そうな」
「いいですね、僕実は一人っ子で」
「そうした相手いないか」
「はい、ですから」
 羨ましいというのだ、中田が。
「僕も兄弟が欲しかったです」
「それはもう授かりものだからな」
「神様からのですね」
「それこそな」
「そうですか、じゃあ」
「仕方ないさ」
 中田は優しい笑顔で上城を慰めた。
「それは」
「もうお父さんもお母さんも四十代ですから」
「いや、四十代だとな」
「まだですか」
「子供出来るよ」
 希望はあるというのだ。
「まあそこはな」
「期待していてもですか」
「ひょっとしたらな」
 あくまでだ、可能性は少ないがというのだ。
「だから諦めないでな」
「わかりました、そうなんですね」
「そういうことでな」
 こうした話をしてだった、そのうえで。
 上城は中田の話を聞いてだった、中田が彼の妹を迎えに行く時間になると家を後にした。そうしてだった。
 上城は自宅に着いた、すると。
 母親が笑顔で迎えてくれた、そのうえで彼にこう言ってきた。
「お帰りなさい、晩御飯出来てるわよ」
「あっ、そうなんだ」
「ええ、今日は餃子よ」
 それがこの日の夕食だというのだ。
「焼き餃子ね。焼けてるから」
「じゃあ今すぐに」
「着替えたらね」
 それでだというのだ。 
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