機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~
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desire 5 祭
前書き
ミネルバクルーがお祭りに。
時間軸はヘブンズベース陥落後。
艦長から聞いた言葉にナオトは思わず目を見開いた。
ナオト「え…?お祭り…ですか?」
タリア「ええ、そうよ。戦争中とはいえこの日だけは祭りで停戦になるの。唯一軍人が軍人でなくなれる1日だけのお祭り。あなたもアカデミーで聞いてるでしょ?」
そういえばアカデミー時代にそんな話を聞いた気がする。
タリア「ゆっくり楽しんでらっしゃい。私もみんなに伝えてから向かうから」
ナオト「はっ!!」
ナオトは敬礼すると渡された浴衣を持って部屋に戻る。
ナオト「まあ、こんなものかな?浴衣なんて久しぶり…」
浴衣を着たナオトは同じく浴衣を着たクレアを見つける。
クレア「あ、ナオト」
ナオト「クレア、アレックスを見なかった?」
クレア「僕は見てないよ。艦内にはいないみたい」
ナオト「そうなの?ありがとうクレア。浴衣似合ってるよ。やっぱり色白だし黒髪だから浴衣が似合う似合う」
クレア「っ!そ、そうかな…?レイも…喜んでくれるかな?」
顔を赤らめ、少し自信なさそうに問い掛けて来る。
いつもは自信いっぱいなのにこういうことには初(ウブ)で内気な少女だ。
ナオト「多分ね。頑張ってクレア」
クレアと別れてアレックスを探しにいく。
大通りの屋台は凄い数だ。
これを全部見て回るのは大変かもしれない。
ステラ「えい!!」
何処かで聞いた声がする。
声のする方を見遣るとシンとステラがいた。
ステラ「破れちゃった…」
シン「勢いつけると破けちゃうんだよ。ただでさえこの店のはインチキしてるんだし」
「おい兄ちゃん、そいつぁ聞き捨てならねえな。営業妨害する気か?」
ステラ「うぅ~」
涙目で唸るステラにシンは苦笑する。
シン「俺が取ってあげるよ。おじさん、もう1本頂戴。」
「こいつ、聞いちゃいねえ…ほらよ」
シン「いいかい?これはコツがいるんだ。見ててよ」
軽々と金魚を掬い上げるシン。
ステラ「わあ…!!」
シン「ね?簡単だろ?」
ステラ「シン…ありがとう」
シン「うん。あれ?ナオト?どうしたんですか?アレックスは一緒じゃないんですか?」
ナオト「あ、うん。そうなんだけど…シンは見てないかな?」
シン「…見てませんけど、アレックスさんがやるとしたらあれじゃないですか?」
シンが向こうにある射的を指差す。
ナオト「そうか…ありがとうシン。ステラもまたね」
ステラ「うん…シン、もっと金魚欲しい…」
シン「よし、ならこの店の金魚を全部取ってやるよ」
「兄ちゃん、勘弁してくれよ~…」
射的屋に向かうとシンの言う通りアレックスがいた。
ナオト「やっと見つけた!!」
アレックス「うわあ!?」
驚いた拍子に引き金を引き、弾は見当違いの場所に向かう。
「はい、ハズレね」
アレックス「ナオト!?」
ナオト「どうして私を置いていったの?」
アレックス「え?あ、いや…俺は祭りが好きだからつい…」
ナオト「もう!!」
アレックス「(射的が下手だから、練習してナオトにいいところを見せようとしてたなんて言えるわけないじゃないか!!)ナオト…浴衣、似合ってるよ」
ナオト「え?そ、そう?ありがとう」
ナオトは自分の顔が真っ赤になるのが分かった。
「兄ちゃん、客が待ってるんだけどよぉ、イチャつくなら外行ってくれねぇかい?」
アレックス「え?」
ナオト「…あ」
後ろを向くと客がこちらに注目していた。
アレックス「す、すみません!!すぐ出ます」
アレックス「ナオト…」
ナオト「何?」
神社の境内で飲み物を飲みながらゆっくり寛いでいたところにアレックスが話し掛けて来る。
アレックス「今日は誘わなくてすまない…」
ナオト「もういいよ、来年は誘ってね」
アレックス「了解した」
アレックスが頷いた途端に花火が打ち上げられる。
ナオト「あ、花火…綺麗…」
アレックス「ああ、そうだな…」
最後の花火も終わり、店に活気が少しずつ消えていく。
ナオト「いつの日か、毎日こういう穏やかな日が続けばいいのにね」
アレックス「そうだな。そしてそうするのが俺達の仕事だ」
ナオト「うん」
アレックス「帰ろう」
2人は手を繋いでミネルバまで歩きだす。
彼らの夏祭りはこうして幕を閉じた。
その他サイド。
メイリン「お姉ちゃん、これどうやって着るの?」
ルナマリア「そういうのはナオトさんに聞けば?じゃあ私は先に行ってるわよ」
メイリン「え!?待ってよお姉ちゃん!!」
先に行こうとするお姉ちゃんを行かせまいと手を伸ばすが、躓いて床に情熱的なキスをするのとお姉ちゃんが出ていくのはほぼ同時だった。
うぅ…痛い…どこの世界に妹を放っていく姉がいるのよお!!
仕方ないからネットで調べてみたけどさっぱり。
仕方ないから誰かに着せてもらおう。
クレア「それで僕の所に着たの?」
メイリンに浴衣を着せながら呆れたように言うクレア。
メイリン「だってえ…お姉ちゃん、私を放って行っちゃったんだもん…」
クレア「はいはい…」
メイリン「それにしてもクレアさんって髪サラサラですよね。どういう手入れしてるんですか?」
クレア「手入れ…って言われても、シャンプーして髪を乾かしてある程度整えたらそれで終わり」
メイリン「ええ!?それだけなのにそんなに綺麗な髪なんて…いいなあ…私なんてセットに1時間かかるのに…」
クレア「長っ!?ま、まあ頑張って…はいこれで終わり……あ、あれ?」
メイリン「どうしたのクレアさん?」
クレア「え?な、何でもないよ。さあ、着付けは終わったよ」
初めての浴衣…。
何か服を着てないような感じで少し恥ずかしい…。
手始めに一回転。
流石クレアさん、可愛い。
メイリン「あ!!」
クレア「な、何!?」
私がよろめいた途端クレアさんがビクッとした。
何だろ?
メイリン「ごめんなさい、ちょっとバランス崩しちゃって」
クレア「そ、そう…じゃあ行ってきなよ」
クレアさんが私にそう言った次の瞬間、ブザーが鳴る。
クレア「誰?」
クレアさんが対応に出ると…。
レイ「俺だ」
扉が開き浴衣姿のレイが入って来た。
そしてレイは私を見ると少し目を見開いた。
何で?
クレア「レイ?どうしたの?」
レイ「…いや、一緒に祭りに行こうと誘いに来たんだが……」
クレア「え!?ぼ、僕と?本当に?」
レイ「ああ」
やったねクレアさん!!
あ、私完全に邪魔者だ。
退散退散。
私はクレアさんの部屋からそそくさと退散した。
レイ「…クレア」
クレア「何?」
レイ「メイリンの浴衣…死装束になっていなかったか?」
クレア「エエ~?気ノセイダヨ~」
メイリンは現在、大通りにいた。
フランクフルトを小腹にいれて、大通りを歩くこと数分。
ん…?
あれはステラさん?
メイリン「ステラさん、こんばんは!!」
ステラ「あ、メイリン。これシンが取ってくれたの…」
ステラさんが私の目の前に差し出したビニール袋にはぎっしりと金魚が入っていた。
…う……ちょっと気味悪い。
メイリン「あ、あはは…それ、シンに貰ったの?」
ステラ「うん…シン、金魚掬い上手…」
メイリン「へえ…」
すると背後から轟音と爆風が押し寄せる。
ヴィーノ「シ~ン!!頼まれた物持ってきたぞ~!!」
何故かデスティニーに乗っているヴィーノ。
というかMSに乗れたんだ…。
ヴィーノ「戦うまではいかないけど動かすくらいならね」
メイリン「人の思考を読まないで!!」
シン「遅いぞヴィーノ!!」
ヴィーノ「これでも急いで来たんだけど…」
シン「まあいいか、サンキューヴィーノ。さあステラ行こうか」
ステラ「うん…」
メイリン「ちょ、ちょっと待て~い!!何でデスティニーなんか持って来させたの!!?」
シン「あ、メイリンいたのか」
…殴りたくなる衝動を抑えて、努めて冷静に。
メイリン「…いるのよ、で、そのデスティニーはなんなの?」
シン「ん?ああ、ステラが花火の近くに行きたいって言うからFAITH権限を利用してヴィーノにデスティニーを持って来させたんだ。簡単な操作ならヴィーノにも出来るからな」
ステラ「花火…近くで見たい」
メイリン「FAITH権限の濫用……」
シン「よし、さあ行こうステラ!!」
ステラ「うん…」
シン「シン・アスカ、デスティニー。行きます!!」
花火が咲き乱れる夜空に向かって飛び立つデスティニー。
メイリン「もう知らない!!デスティニー発進どうぞぉーーーー!!!!!!」
…私の渾身の叫びも花火の音に掻き消された。
そして私はヴィーノと一緒に祭りを見て回った。
ヴィーノ「メイリン、欲しい物があったら奢るよ」
メイリン「え?いいの?」
ヴィーノ「いいのいいの、たまにはカッコつけさせてくれよ」
今回のヴィーノは太っ腹。
じゃあ好意に甘えて何にしようかな?
すると背後から…。
ヨウラン「ようヴィーノ、メイリン。」
ヴィーノ「ヨウラン、どうしたんだよ?」
ヨウラン「いやな、向こうでラクス・クラインの物真似コンテストがあってな、優勝するとあの衣装が貰えるんでメイリンに出て…」
ヴィーノ「シン直伝奥義!!ライダーキーーーーック!!!!」
それ以上は言わせまいとばかりに某仮面戦士を彷彿とさせる蹴りがヨウランに炸裂した。
吹っ飛んでいくヨウランを見て私も少しだけ胸がすっとした…。
飲み物を買いに行ったヴィーノを待っていたらナンパに話し掛けられた。
「ねぇねぇ、今1人?」
「中々可愛いじゃん」
「どう?俺達と遊ばね?」
どうしよう…。
ヴィーノ「ちょっとあんたら」
飲み物を買いに行っていたヴィーノが戻ってきた。
「何だよてめえ?」
ヴィーノ「俺の連れに何か用?用が無いなら消えて欲しいんだけど?」
な、何か凄く怒ってる?
ナンパの人がヴィーノに殴ろうとしたけどヴィーノはそれを簡単に受け止めて投げ飛ばして、残りの2人も殴り飛ばした。
ヴィ、ヴィーノってこんなに強かったんだ…。
ヴィーノ「ふう、メイリン。怪我は無いよな?」
メイリン「う、うん…ヴィーノ、強かったね」
ヴィーノ「整備士とはいえ一応軍人だし、女の子1人守れないなんて嫌だから」
メイリン「え?」
ヴィーノ「お、メイリン。林檎飴食おう林檎飴。」
メイリン「あ、うん」
私はヴィーノに連れられて林檎飴の屋台に向かう。
でもさっき私を助けてくれたヴィーノ、少し怖かったけど格好よかったな…。
後書き
お祭りでミネルバクルーにはしゃいでもらいました。
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