楽しいことが第一
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第二章
砂漠での戦闘は辛い、敵は暑さだけではない。
水もない、それでドイツ軍は水の確保には苦労した。
しかしその彼等にだ、イタリア軍からこう言って来たのだった。
「水ないのならあげるけれど」
「何っ、水をか」
「くれるのか」
「あと喉が渇いているのなら」
それならというのだ。
「ワインもあげるけれど」
「おい、ワインまでか」
「イタリア軍にはそうしたものもあるのか」
「補給はいいとは聞いていたが」
「そうしたものまで」
ドイツ軍の将兵達はこのことにも驚いた、そして状況が状況であるが為にだ。
イタリア軍の申し出を受けることにした、彼等は多くの水とワインで喉を潤した。しかし水とワインはあっても。
イタリア軍は武器や弾薬はドイツ軍からかなり貰っていた、ドイツ軍の将兵達は自国の兵器を使っている彼等に対して問うた。
「武器や弾薬はないのか?」
「我が軍のも使っているが」
「そんなにないのか」
「水やワインはあるが」
「あるよ、どっちも」
武器も弾薬もだ、あるというのだ。
「それでも補給の優先順位は低いから」
「何っ、第一じゃないのか」
「補給といえばまずは武器と弾薬だろう」
「それに燃料だ」
「そうしたものが第一じゃないのか」
「では第一は何だ」
「食べものだよ、決まってるじゃない」
これがイタリア側の返答だった。
「それにお水だよ」
「それにワインもか」
「それもか」
「パスタにワイン、美味しいものにデザートまでないと」
そこまで揃わないと、というのだ。
「俺達戦えないよ」
「いや、ジャガイモとソーセージで充分だ」
「あと黒パンとザワークラフトがあれば完璧だ」
これがドイツ軍の反論だった。
「それで充分だろう」
「何故そこでパスタもなんだ」
「だから水もあったのか」
パスタを大量に茹でる為には水も必要だ、それも多くの。
それでだ、こう言うのだった。
「何て奴等だ」
「まずはそれか」
「戦場でも美味いものが必要か」
「そう言うのか」
「美味しいものが一杯ないと戦えないよ」
ここでもこう主張するイタリア側だった、その言葉にぶれるものは一切ない。何一つとして、である。惚れ惚れするまでだ。
「ソーセージも美味しいけれど」
「くっ、こいつ等何処まであれなんだ」
「水があることはいいとしてだ」
「ワインにも感謝しているが」
「戦場でも美味しいものを求めるか」
「そうするのか」
「だって美味しいものを食べないと楽しくなれないじゃない」
ここでもぶれるものなく言うイタリア側だった。
「だからだよ」
「だから戦場に楽しいものがあるか」
「勝つことが最優先だ」
「我先に逃げるなぞもっての他だ」
「だから諸君等は」
ドイツ側は怒って言う、だがイタリア側は言うのだった。
「お水がないと生きられないよ」
「それはそうだな」
「その通りだな」
「じゃあいいじゃない、それでね」
「確かにな、助けてもらっているしな」
「それならな」
ドイツ側も納得した、そうして。
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