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海の恐怖

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第六章

「あの、あれはですね」
「恐竜ですよね」
「どう見ても」
「何でもクロノサウルスとかいうらしいですけれど」
 青年に言われたことも話す。
「あんなのいるなんて」
「そのままUMAですよね」
 客の一人がこう言った。
「あれは」
「はい、誰か写真は」
「いえ、それはとても」
「それどころじゃなかったですから」
 命の危険を感じていたのだ、撮影する余裕は何処にもなかった。
「写真までは」
「とても」
「そうですね、まさかあんなのがいるなんて」
「本当にこれまでなかったんですよね」
 客の一人がカンターロに問うた。
「一度も」
「はい、鮫や鯨は見ますけれど」
「それでもですか」
「見たことがなかったです」
 まさにだ、一度もだと答えるカンターロだった。
「びっくりしました」
「そうですか」
「やっぱりそうですよね」
「噂には聞いていましたが」
 この目で見るとは思わなかったというのだ、だが何はともあれだった。
 陸に戻った、それで彼は客達にこう言った。
「じゃあ今から」
「今から?」
「今からっていいますと」
「はい、バーベキューをしましょう」
 予定通りだ、それを楽しもうというのだ。
「お酒もありますので」
「わかりました、それじゃあ」
「お願いします」
 客達もすっかり大人しくなっていた、まだ驚愕と恐怖が収まらずそれでだった。
 バーベキューを酒と一緒に楽しんだ、その次の日だった。
 カンターロはコインブラの家に行き彼にこのことを話した、その話を聞いてこう言ったコインブラだった。
「おいおい、嘘じゃないよな」
「嘘だと思うか?雇ってる奴もお客さん達も皆見たんだぞ」
「だから嘘じゃないんだな」
「そもそも嘘にしては出来過ぎてるだろ」
「まあな、そもそも御前は嘘を言わないしな」
「見間違いはするだろうがな」
 自分でもそれは否定しない、しかし今は見た人間が一人ではないのだ。
 だからだ、コインブラもこう言うのだった。
「何人も同時に見てだからな」
「ああ、違うさ」
「そうか、本当にいたんだな」
「五十年位前のことだな」
「スキューバダイビングをしていたら恐竜に襲われたってな」
 その噂がだというのだ。
「本当だったんだな」
「そうみたいだな、しかし写真は撮ってないからな」
「携帯とかで動画もな」
「誰もそんな暇なかったよ」
 命懸けだった、それではとてもだった。
「本当にな」
「そうだよな、じゃあこの話はな」
「誰も写真とかじゃ証明出来ないから」
「じゃあ噂にはなるけれどな」
 だがそれでもだというのだ。 
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