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ドリトル先生と京都の狐

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第六幕その六

「そこは大阪や神戸も同じじゃ」
「つまり関西全体がですか」
「東京を嫌いなんですね」
「地域対立というものじゃな」
 長老はこのことはわりかし客観的に述べました。
「それは」
「ですがどうも」
 ここで先生が言いました。
「イギリス程強くはないですね」
「イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズじゃな」
「その四つの地域の対立が」
 イギリスでは、というのです。
「今も頭の痛い問題なんです」
「元々は別々の国じゃしな」
「そうです、イギリスは」 
 正式名称はグレートブリテン及び北部アイルランド連合王国といいます、この国の地域対立は日本以上なのです。それがどうしてなのか先生はとてもよくわかっているので長老にも困ったお顔でお話するのです。
「四つの国でした」
「それが一つになった」
「非常に仲が悪いままです」
「大変じゃのう、実に」
「スポーツをする時は完全に別々ですから」
 サッカーやラグビーの時はです、本当にそれぞれの地域に分かれます。オリンピックの時は違うにしても。
「日本ではそうしたことはないですね」
「大阪と東京で分かれるのはのう」
「ないですね」
「考えられん」
 それはとてもというのです。
「まあ野球では巨人とそれ以外じゃがな」
「野球ではですか」
「うむ、巨人は関西では嫌われておる」
 野球についてはそうなっているというのです、日本では。
「東京のチームということもありな」
「そこには地域対立もありますが」
「しかし本当にイギリス程ではないからのう」
「それはいいことですね」
「イギリスも困っておるのじゃな、そのことで」
「はい、とても」
 特にアイルランド問題で、です。先生は正直な人なのでそのことを否定しません。
「中々解決しません」
「時間をかけてじっくりと進めていくしかないのう」
「そうですね、しかし日本でも地域があり」
「それぞれ思うところはある」
「そうですね、では」
「それではじゃな」
「はい、これからですが」
 先生は玄米茶を一口飲んでまた言いました。
「神戸に戻りまして」
「先生の生活に戻るのじゃな」
「そうします」
「よいことじゃ。そういえば神戸にもな」
「神戸にもとは」
「狐達がおってな」
 長老は目を細めさせて神戸の狐のことをお話するのでした、ここで。
「その棟梁がおってな」
「その棟梁の方も長老さんと同じくですか」
「そうじゃ、九本尻尾じゃ」
 即ち九尾の狐だというのです。
「千年生きておるな」
「そうなのですね」
「大阪にも奈良にもおる。近畿の各府県に一匹ずつな」
 九尾の狐がいるというのです。
「三重や滋賀、和歌山にもおるぞ」
「本当にそれぞれの府県にいますね」
「兵庫の棟梁は神戸の八条学園が家じゃ」
「そこは」
 八条学園と聞いてです、先生だけでなく他の皆もはっとしました。まさにその場所こそがだからなのです。
「僕が今勤めている場所で」
「ほっほっほ、そうじゃな」
「そうです、奇遇ですね」
「姫路城も家にしておるがな」
「あの白い綺麗なお城ですね」
「あそこは兵庫の妖怪変化全体の棟梁がおられるのじゃ」
 その姫路城にはそうした方がいるというのです。 
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