東方魔法録~Witches fell in love with him.
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14 交錯~Fate play cruel trick sometimes.
「おーい…エドワードに浮かベル…生きてるかー…」
「何とかな…」
「ベルです…僕も何とか…」
俺達は吸血鬼に敗れ、地面に転がっていた。
見た目が少女とは言え、吸血鬼の力は圧倒的だった。たちどころに三人まとめて軽々とあしらわれてしまった…。北欧神話に出てくるグングニルの槍を出してくるなんて反則だぜ…と言うより何で持っているんだよ…そんな物…。
「あー…冗談キツイぜ…」
健闘すらできず完璧に負けた。こんなの初めてだ。少女は俺達を軽くあしらうと、本当に殺す気がないみたいで何処かに行ってしまった。
「どうする?あの二人を追ったって、たぶんさっきの吸血鬼が邪魔しにくるし…」
「今回は諦めるか…」
「そうですね…吸血鬼が相手じゃ僕たちでは敵いませんから…」
仕方ない。依頼は失敗になるが諦めるか…。依頼に失敗するのは珍しいし、相手が吸血鬼ならば警察も納得してくれるだろう。
そう思って会社に帰ろうとする矢先に大きな爆破音が聞こえてきた。
「な、なんだぁ?」
音がした方向を向くと、遠くで煙が上がってる。あの方角には街があったはずだ。
「様子がおかしい。行ってみるか?」
「ああ、あの方向は学園がある。もし、また娘達に何かあったら…!」
「ええ、いってみましょう」
俺達は体にムチを打ち、学園へと向かった。
私達は安全なところ…自分達の家に向かう。ウェネフィクスから俺達の家に行くには普通、鍵を使うしかない。空間魔法を使うにしても私達の家の位置を正確に把握していないと使えない。襲われる可能性が最も低いのだ。
「でもどうする?何時も使ってるドアは敵で一杯だと思う」
「無理ね。数が多すぎるわ」
「心当たりがあるぜ!」「学園の教職員用のドアを使うんだ!」
通常、ウェネフィクスに入るには特定の位置にあるドアからしか入れない。だが、学園の教職員は教材を家から運ぶため、学園内にあるドアを使うことが許されている。勿論、教職員以外は使用禁止だ。
「でもどうやって。あそこには特殊な結界があるはずだよ」
「フッフッフーこんなことがあろうかと!」「結界の解除方々はバッチリだぜ!」
「なにやってるのよ…と言いたいとこだけど、今は有り難いわね」
方針が決まって私達は早速教職員用のドアのところに向かった。
現在、私達は三階の大学生用の教室にいる。教職員用のドアは一階の職員室にある。
「ここから外に飛んでそのまま一階に行ければ早いんだけど…」
「あの魔法使い達の的になるだけだわ。階段からいきましょ」
私は走れないし、走るよりも飛んだ方が早いので私達は低空飛行で廊下や階段を駆け抜ける。途中に敵の魔法使いがいたけど私達で問題なく倒すことができた。
だが、あともう少しと言うところでシルクハットに黒のスーツを着た、以前海に行ったときにいたマジシャンと緑のチャイナ服みたいな服と緑色で星の飾りがある帽子を被った見知らぬ赤毛の女性が私達の目の前に立ち塞がった。
「久し振りだね。大体五年ぶりかな?」
「なんであんたみたいな魔力をもたないやつがここに…!」
明希はあの時何かあったようでマジシャンの方を睨んでる。
「ね、ねえ…あの人達誰…?」
あの時、大食い大会に出ていたエリーとレイレウは知らなくて当然ね。
「男は海に行ったときにいたのよ。そこにいる中国人っぽいやつは知らないわ」
「ふーん。チャイニーズは妖力を持ってるね。でも…」「あいつからは魔力どころか霊力も妖力も神力も感じられないぜ?」
「ふ、普通の人間…?」
そう。何にも力を持ってないただの人間が何故ここに…。
「ふふふ。それは私がマジシャンだからだよ。魔法を使ったのさ」
「お前の場合は種があるだろ。で、本当のことは?」
「ふむ…まあ、いいだろう。種は簡単だよ。それは私が魔力がない魔法使いなのだ」
「それ、答えになってないわ」
「まあ、よく聞け」
この手品師が言うには自分の親は魔法使いで自分も魔法使いであるそうだ。なのにこいつは魔力を一切持っていない。それはこいつが特殊体質で驚くべきことに魔力を消す体質らしく、自分の魔力を常に消しているかららしい。
「私はこの体質を治したいのさ。そのためには大量の魔力が必要だった」
「まさか…!お前が…!」
「明希君。君はやはり頭が回るね、羨ましいよ。…そう。私がマロウ家の当主、マロウだ」
目の前にいるこの男、マロウこそが犯罪組織マロウ家のリーダーですって!?
なるほど…魔法使いを狩ったり子供を誘拐していたのは建前の秩序ある魔法世界のためじゃなくて、この男の体質改善のためってことね…。騙されている手下達が可愛そうだわ。
「じゃあこの騒ぎも…!」
「そうだ。私が起こした。この街ごと生け贄に捧げるために」
「……!そんなことしたら今この街にいる人たちはどうなるんだ!!」
「街にあるもの全てを魔力に変換するんだ。勿論死ぬさ。」
なんてことを…!手下もまるごと自分の生け贄にする気!?
「狂ってやがる!(このままじゃパチュリーまで生け贄に…!こいつを倒すか最低でもこの場から逃げ出すかはしないと!)」
明希は真剣な顔つきでマロウに向かって魔法を放つ。
「九紫火星は火を司る…太陽黒点!」
魔法を詠唱し、黒い球状の炎を発射した。太陽でおこる現象を模した炎は骨すら焼き尽くすような高火力でマロウに襲いかかる。が…
「嘘でしょ…?」
明希の魔法は悠々と立っているマロウの皮膚を焦がすどころか急に熱を失い霧散してしまった。
「言っただろ?俺は魔力を打ち消してしまう。それは自分の魔力だけじゃなくて相手の魔力も同様さ」
「だったら!」「肉弾戦で!」
レイレウが二人掛でマロウに向かっていく。しかし、さっきまで微動だにしなかった中国人みたいな人が急に動きだし、流れるような動きで、ただ単に二人の力の方向を変えるだけで二人を一瞬にして膝をつかせた。
「お嬢様の命により、この方の邪魔はさせません」
自分の感情を表に出さず、お嬢様とやらの命令を遵守する姿は冷徹で忠義深い印象を私に与えた。
レイレウはすぐさま立ち上がり、再び襲いかかるが結果は同じだった。
「無駄です。気の流れを読むことのできる私に素手では勝ち目がありません」
どうやらこの華人小娘は視覚か感覚かはわからないが気の流れを感じることができるらしい。
「くそ!」「だったら魔法で!」
だが、今度はマロウが盾となり、二人の魔法は消えていった。この二人厄介ね…!
「もう君たちと遊んでる時間はない。もう君たちとは会うことはないだろう」
そう言うとマロウは近くにいた私に向かってどこからかとりだした剣を突き立てようとした。あまりにも自然な流れだったため、自分に剣を向けられていることに気が付くのが遅れてしまった。
「パチュリー!!」
飛び出した明希が刺された。マロウの能力のせいか、防御魔法は無効化され刃が明希の体を貫いた。
「がふっ……!!」
あ…え?…
おかしいわ…
嘘でしょ……
目が点になり、頭の中が真っ白になり、沸騰したかのように熱くなった血液が頸動脈や頭を焼く感覚がする。
私を庇った明希が血を吐き、剣が抜かれると大量の血で地面を濡らしながら倒れた。
「庇ったか。皆殺しするから無意味な行動だ」
私は足や手を震わせて血を出し続ける明希によたよたと近づく。
ねぇ、嘘でしょ…?起きてよ明希。
ペタンと力なく足からゆっくりとへたり込み、力なく明希の体を揺する。けれども、何も反応がない。
「な!なにやっているんですか!約束が違うじゃないですか!!」
私の視界がぼやけて身体中の色々な部位が熱くなり始めてものを考えられなくなった。
なんで起きないの?どうしたのよ?
揺すり続けるが返事がない。
「…………!!!明希ィィ!!」
「貴様よくも!!」
「くそっ!僕達がもっと早く来れていたら!!」
走馬灯のように明希との思い出が思い浮かんでは消えることを繰り返す。
笑顔が、安らぎが、ときめきが、血と共に、流れていく。
「フハハハハハハ!!!!儀式は成功だ!!!貴様らの魔力が無くならなかったのは計算外だがまあ、いい!試し撃ちになってもらおう!!」
後のことはよく覚えていない。
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