VONGOLA TAIL
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第5話 エバルー屋敷
「羽まだ消えないわよね」
「あい」
ルーシィのメイド作戦が失敗して新たな作戦、作戦Tに切り替えたナツ達はエバルー屋敷の屋上から潜入しようとしていた。
「とーちゃくです」
「ありがとね、ハッピー」
「何でこんかコソコソ入らねえといけないんだ?」
ナツが窓に張り付きながら問う。
「決まってるじゃない!依頼とはいえどろぼーみたいなもんなんだから」
「でも、ナツのいう作戦Tは突撃の
Tだぜ。正面から入って邪魔な奴は倒していって……」
「ついでに本を燃やす」
「ダーメ!!」
「今回のターゲットは街の有力者!
ムカつく変態オヤジでも悪党じゃないのよ。ヘタしたら軍が動くわ」
ルーシィ説得するように2人に言う。
「何だよ、お前だって『許さん!』とか言ってたじゃん」
「ええ!許さないわよ!だから本を燃やすついでにあいつの靴とか隠してやるのよっ!」
「うわっ……ちっさ」
「あい」
「ルーシィって何て言うかガキだな」
拳を作ってうふふっ、と言って怒るルーシィに突っ込む3人。
物置から潜入した4人は、部屋からこっそり出て廊下に出る。
「おい、ルーシィ。まさかこうやって一個一個部屋の中を探して行くつもりか?」
「トーゼン!」
「誰か捕まえて本の場所聞いた方が早いんじゃね?」
「あい、武の言うとおり」
「見つからないように任務を遂行させるのよ。忍者みたいでかっこいいでしょ?」
「に……忍者かぁ」
ルーシィにそう言われて忍者を想像するナツ。すると……
ズボォ!!
「侵入者発見!!」
さきほど地面から現れたブサイクなメイド隊が現れた。
「ハイジョシマス」
「おおおおっ、忍者ぁ!!」
いきなり現れたメイド隊をナツが炎を纏った蹴りでまとめて蹴り飛ばした。
「はいいいっ!?」
「お、流石ナツ!ナイスキック」
ルーシィは驚き、山本は褒める。
「まだ見つかるわけにはいかんでござるよ、にんにん」
「にんにん」
「普通に騒がしいから……あんた」
ナツはマフラーを顔に巻いて忍者のようになる。
「いけない!早く隠れないと」
ルーシィはナツとハッピーを引っ張りある部屋に入る。山本もそれに続いた。
「うおぉ!すげぇ本の数でござる」
「あい!でござる」
「エバルーって頭悪そうな顔して蔵書家なのね」
「探すぞー!」
「あいさー!」
「本がいっぱいだな」
「これ……全部読んでるならちょっと感心しちゃうわね」
「うほっ!エロい本みっけ!」
「魚図鑑だ!」
「はぁーこんな中から一冊の本を見つけんのはしんどそぉ」
「なんだこれ、字ばっかだな」
「ナツ……普通はそうだよ」
「お、野球の本だ。なぁ、ナツ。読んでいいか?」
「おおお!!金色の本はっけーん!」
「あんたら真面目に探しなさいよ!」
だが、ナツが手に取った金色の本は……
「日の出!」
「みつかったーっ!」
「こんなにあっさり見つかっていい訳!?」
「さて、燃やすか」
「簡単だったね!」
「ちょ……ちょっと待って!」
本を燃やそうとするナツからルーシィが本をとる」
「これ、作者ケム・ザレオンじゃない!魔導士でありながら小説家だった人よ!」
作者がケム・ザレオンだとわかったルーシィが顔をきらめかせる。
「いいから早く燃やそうぜ」
「何言ってんの。これは文化遺産よ。燃やすなんてとんでもない!」
「仕事放棄だ」
「早くしねえとまた誰かに見つかるぞ」
本を大事そうに持つルーシィに3人が攻める。
「なるほどなるほど。ボヨヨヨヨヨヨ……貴様らの狙いは日の出だったのか」
今度は地面からエバルーが出てきた。
「ホラ……もたもたしてっから!」
「ご……ごめん」
(この屋敷の床ってどうなってんだろ)
「この家の床ってどうなってんだろな」
ハッピーが心の中で思う事を山本が口に出して言った。
「まぁ、本は燃やしちまえばこっちのもんだ!」
「ダメ!絶対ダメ!!」
「ルーシィ!仕事だぞ!!」
今だに燃やすことに反対するルーシィにナツが怒る。怒られたルーシィは……
「じゃ、せめて読ませて」
『ここでか!?』
座って本を読み出すルーシィに4人が突っ込む。
「ええーい!気にくわん!こい、バニッシュブラザーズ!!」
エバルーが叫ぶと本棚がいきなり開き出した。
「やっと仕事の時間か」
「仕事もしねえで金だけもらってるとママに叱られちまうぜ」
「グッドアフタヌーン」
「こんなガキ共があのフェアリーテイルの魔導士かい?」
「あの紋章!傭兵ギルド、南の狼だよ!」
「こんな奴らは雇ってたのか」
「ボヨヨヨ、南の狼は常に空腹なのだ!覚悟しろよ」
エバルーが言った瞬間全員がにらみ合う。…………ルーシィ以外。
『おい!!』
「なんとふざけた奴等だ」
「これがフェアリーテイルの魔導士か……」
「バニッシュブラザーズよ!あの本を奪い返せ!そして、殺してしまえっ!」
エバルーが2人に命令する。
「これ……ナツ、武!少し時間を頂戴!この本には何か秘密があるみたいなの!」
「は?」
「秘密!?」
ルーシィはドアの方へと走り出した。
「ルーシィ!どこいくんだよ」
「どっかで読ませて!!」
「はぁ!?」
ルーシィは部屋から出た。その時エバルーは顔をきらめかせていた。
「作戦変更じゃ!あの娘は我輩がみずから捕まえる。バニッシュブラザーズよ!その小僧達を消しておけ」
そう言ってエバルーは床に頭を突っ込み、潜って何処かにいってしまった。
「……めんどくせぇことになって来たなぁ。ハッピーと武はルーシィを
追ってくれ」
「了解。行こうぜ、ハッピー」
「相手は南の狼の2人だよ!オイラも加勢する!」
南の狼で2対1になるナツをハッピーが心配するがナツは余裕そうな顔をして言った。
「1人で十分だ」
「あ?てめぇ!!ママに言いつけんぞ!」
「落ち着け、クールダウンだ」
「ほら、ナツもああ言ってるし早く行こうぜ」
「……ナツ!気をつけてねー!」
「おー!!ルーシィを頼むぞーっ!」
そう言って山本とハッピーは部屋から出て行った。
ナツ達と別れたルーシィは下水道で
風詠みの眼鏡をかけて本を読んでいた。
「まさかこの本にこんな秘密があったなんて………やっぱりこの本を燃やせないわ」
ルーシィは立ち上がる。すると……
「ボヨヨヨ………風詠みの眼鏡を持ち歩いているとは………主もなかなかの読書家よのう」
「ヤバッ!」
壁からいきなり出現した腕がルーシィの腕を掴んだ。
「さぁ言え、何を見つけた?その本の秘密とは何だ?」
「痛っ………ア………アンタなんかサイテーよ。文学の敵だわ……」
「文学の敵だと!?我輩の様な偉ーくて教養のある人間に対して」
「変なメイド連れて喜んでる奴が教養ねぇ………」
「我が金髪美女メイドを愚弄するでないわっ!」
「痛っ……いろんな意味で………」
「宝の地図か!?財産の隠し場所か!?その本の中にどんな秘密がある?言え!言わんと腕をへし折るぞ!」
「べーーー」
ルーシィはエバルーに向かって舌をだす。
「調子に乗るでないぞ!小娘ぇ!その本は我輩の物だ!我輩がケム・ザレオンに書かせたんじゃからな!本の秘密だって我輩の物なのじゃあっ!」
本当にルーシィの腕がおられそうになる。そこに……
「ぎゃあぁあぁあ!!」
ハッピーの飛び蹴りがエバルーの腕に直撃した。
「ナイス、かっこいー」
「ルーシィ、大丈夫か?」
「武!!」
山本がハッピーが飛んで来た方からくる。2人がきて安心するルーシィ。
「おのれ………」
「形勢逆転ね。この本をあたしにくれるなら見逃してあげるわよ。一発は殴りたいけど……」
ルーシィはエバルーに鍵を見せつける。
「ほぉう………星霊魔法か、ボヨヨヨ。だが文学少女のくせに言葉の使い方が間違っておる。形勢逆転とは勢力の優劣状態が逆になる事・・・1人と猫1匹増えたくらいで我輩の魔法『ダイバー』はやぶれんぞ!」
そう言って地面に潜るエバルー。
「この本に書いてあったわ。内容はエバルーが主人公のひっどい冒険小説だったの」
「なんだそれ!」
「我輩が主人公なのは素晴らしい。しかし内容はクソだ。ケム・ザレオンのくせにこんな駄作を書きよって、けしからんわっ!」
「無理矢理書かせたくせに、なんて
偉そうなの!?」
「偉そう?我輩は偉いのじゃ!その我輩の本を書けるなど、ものすごく光栄な事なのじゃぞ!」
「脅迫して書かせたんじゃないっ!」
「脅迫?」
エバルーの攻撃を躱しながら叫ぶルーシィ。
「それが何か?書かぬと言う方が悪いに決まっておる!!」
「何それ………」
「話しがわかんねぇけど凄ぇ悪いこと言ってるな、こいつ」
全く反省していないエバルーに、ルーシィとエバルーに呟く山本。
「偉ーいこの我輩を主人公に本を書かせてやると言ったのに、あのバカ断りおった。だから言ってやったんだ。だから言ってやったんだ。書かぬと言うなら奴の『親族全員の市民権を剥奪する』とな」
「市民権剥奪って………そんな事したら商業ギルドや職人ギルドに加入できないじゃないか!コイツにそんな権限あるの!?」
「封建主義の土地はまだ残ってるのよ……こんな奴でもこの辺りじゃ絶対的な権限を振るってるってわけ」
「けっきょく奴は書いた!しかし一度断った事はムカついたから独房で書かせてやったよ!ボヨヨヨヨ!!やれ作家だ文豪だ………とふんぞり返っている奴の自尊心を砕いてやった!」
「自分の欲望の為にそこまでするってどうなのよ!?独房に監禁された3年間!彼がどんな思いでいたかわかる!?」
「3年も……!?」
「我輩の偉大さに気づいたのだ!」
「違う!自分のプライドとの戦いだった!書かなければ家族の身が危ない!けど、お前みてぇに腐った人間を主人公に書くなんて………作家としての誇りが許せない!」
「貴様……何故それほど詳しく知っておる?」
「全部この本に書いてあったわ!」
「はぁ?その本なら我輩も読んだ。ケム・ザレオンなど登場せんぞ」
「もちろん普通に読めばファンもがっかりの駄作よ。でもアンタだって知ってるでしょ?ケム・ザレオンは元々魔導士」
「なっ………まさか!」
「そう。ケム・ザレオンは最後の力を振り絞って……この本に魔法をかけた」
「魔法を解けば我輩への恨みをつづった文章が現れる仕掛けだったのか!?け、けしからん!」
「発想が貧困ね………確かにこの本が完成するまでの経緯は書かれていたわ。けど、ケム・ザレオンが残したかった言葉はそんな事じゃない。本当の秘密は別にあるんだから!」
「ええぃ!もううるさいやつだ!」
話をしている間にいつの間にかルーシィは壁に追いやられていた。
「これで終わりだ!!」
エバルーがルーシィに突撃する。
「やばっ……」
ルーシィは反射的に目を閉じる。だが何秒たってもルーシィ痛みは来なかった。
「ギリギリセーフ……だな」
目を開けるとルーシィの目の前にエバルーの突撃を剣で受け止めている
山本が立っていた。
「武!!」
「な、なんだ貴様は!」
エバルーは武から離れる。
「いやー、2人が話しをしてるけど俺には何の話かわからねぇんだわ。………けど、俺の仲間を傷つける奴は敵だからな」
「ぬぅ……」
山本はポケットから一つの箱を取り出してそれにリングから出した炎を注入した。その箱から何かが飛び出てくる。
「何あれ!?」
「あれは武の匣兵器だよ。武も隼人と同じで匣兵器を使って戦うんだ。
2人の戦い方は全然違うけどね」
匣兵器から出てきたのは青い炎を纏った燕だった。
「小次郎」
山本はリングに炎を灯し、持っている剣も青い炎を纏う。
「凄い!剣が炎で……」
「あれは死ぬ気の炎を剣に纏わせてるんだよ!」
驚くルーシィにハッピーが次々と解説をしていく。
「へぇ………あっ!私もみてるだけじゃダメだ!」
ルーシィは一つの鍵を取り出す。
「とにかく、あんたにはこの本を持つ資格なし!開け、巨蟹宮の扉……キャンサー!」
魔法陣から出てきたのは、背中から蟹の足を生やして、サングラスをかけ、髪の毛が蟹の鋏になってる精霊だった。
「蟹キターっ!」
ハッピーがはしゃぐ。
「絶対語尾に『~カニ』つけるよ!間違いないよね!カニだもんね。オイラ知ってるよ!こういうの『お約束』って言うんだ!」
「集中したいの………黙んないと肉球つねるわよ」
「………蟹か。鍋にしたらうめえかな?」
「食べちゃダメ!!」
興奮するハッピーに怒るルーシィとよだれを垂らしてキャンサーを見る
山本。
「ルーシィ………今日はどんな髪型にするエビ?」
「空気読んでくれるかしら!?」
「エビーーーー!?」
「鍋………」
「もういいから!」
キャンサーの語尾は何故かエビだった。山本は今だによだれを垂らしている。
「とにかく、戦闘よ!あのヒゲオヤジやっつけちゃって!」
「OKエビ」
「まさにストレートかと思ったらフックを食らった感じだね。うん、もう帰らせていいよ」
「アンタが帰れば?」
キャンサーが臨戦態勢をとるのと同時にエバルーはさけびだした。
「ぬぅおおおっ!」
そして1本の鍵を取り出す。
「開け!処女宮の扉……」
「えっ!?」
「ルーシィと同じ魔法!?」
「今度はどんな精霊が出てくるんだ?」
エバルーがルーシィと同じ魔法を使うことに驚くルーシィとハッピー。
山本は目をキラキラ輝かせてエバルーを見ていた。
「バルゴ!!」
「お呼びでしょうか?ご主人様」
「バルゴ!その本を奪えっ!」
出てきたのはさっきナツが蹴り飛ばしたメイドゴリラだった。
「こいつ、星霊だったの!?」
「エビ」
ルーシィは驚くがさらに驚く事が起きた。
「あっ!」
「あ!!」
「おっ?」
「あ!!?」
それを見た瞬間、山本以外の全員が驚愕した。
「ナツ!?」
「お?」
バルゴと共にナツが一緒にいるからだ。
「なぜ貴様がバルゴと!?」
「アンタ………どうやって……」
「どう……って、コイツが動き出したから後つけてきたらいきなり……訳わかんねー!!」
「『つけて』ってていうか『つかんで』きたんでしょ!!まさか……人間が星霊界を通過してきたっていうの!?有り得ないって!」
「ルーシィ!武!俺は何をすればいい?」
それを聞いてルーシィは我に返る。
そして、ルーシィは言った、
「そいつをどかして!」
「おう!」
そういいながらルーシィは鞭を取り出す。
「どりゃあっ!」
「ぼふぉっ!」
「何ぃ!!?」
ルーシィに言われたとおりナツは思いっきり殴り飛ばした。エバルーが驚いている隙にルーシィは鞭でエバルーを捕まえる。
「もう地面には逃げられないわよ!
武!!」
「おう!」
ルーシィに呼ばれて山本は走り出した。
「時雨蒼燕流、攻式八の型……」
「篠突く雨!!」
山本は居合切りのような形でエバルーを斬った。
「あんたなんか……」
それに続くようにキャンサーがジャンプする。
「ワキ役で十分なのよ!!」
キャンサーが自分の武器であるハサミでエバルーの髪の毛を斬った。
「ハデにやっちまったな」
「はははっ、まぁ良かったじゃねえか」
「あい」
3人が笑い合う中、ルーシィは持っていた本をぎゅっと自分の胸に持って行った。
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