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また夢を

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第三章


第三章

「何ていうかね。私絵って」
「わからないとか?」
「がさつだからね。私って」
 自分で自分をこう言う優子だった。
「ロックはわかっても絵はね」
「そういうのがさつとかいう問題じゃないと思うけれど」
「じゃあ何なのよ」
「感性じゃないかな」
 玲はそれではないかというのだ。
「やっぱりそれなんじゃないかな」
「感性ね。じゃあ私の感性は」
「そう、ロック向きでね」
「そうした絵に対するものじゃないのね」
「けれどどんな絵も駄目だって訳じゃないよね」
「アニメ絵とかは好きよ」
 そうした絵はいいというのだ。
「あとはライトノベルのイラストみたいな感じもね」
「ライトノベルの」
「そう、ああいう絵は好きなのよ」
 今は絵は見ずにだ。玲に話すのだった。
「こうした高尚って言える様な絵はちょっとだけれど」
「じゃあ別にセンスがないとかじゃないよ」
「感性の違いなのね」
「そう思うよ。それじゃあだけれど」
 ここでだ。玲はだ。自分の鞄からだ。
 ペンとメモ帳を取り出してだ。そのうちの一枚にだ。
 さらさらと何かを描いていく。そしてそれを優子に見せる。それを見て優子は言うのあった。
「あれっ、これって」
「そう。あのアニメのキャラだよ」
「魔法少女だったかしら」
 桃色の小柄な女の子だった。そのアニメの主人公だ。
 それをいささか個人の癖、美麗でかつ可愛い感じの玲の癖と思われるものが加わったキャラを見てだ。優子は感心する顔で言うのだった。
「あんた上手じゃない」
「上手かな」
「ええ、上手よ」
 玲のその絵をだ。優子は素直に褒めた。
 そうしてだ。彼女はふと気付いたのだった。
「あんたひょっとして」
「ひょっとしてって?」
「絵もいけたの?」
「絵は高校での選択科目以降やってないけれど」
「それでも才能あるわよ」
 太鼓判を押した言葉だった。まさにだ。
「この絵ならいけるわよ」
「いけるって」
「あんたこれからも絵を描きなさいよ」
 心の中で抜け殻になっている玲の関心を向けさせようとも思っての言葉だった。
「いいわね。それじゃあね」
「絵をなんだ」
「そう、どんどん描いてみなさいよ」
「僕は別に」
「いいから描きなさい」
 ここでは強引に話を進めることにした優子だった。そうしてだ。
 玲に対してさらに言うのだった。
「帰るわよ。大学に」
「えっ、大学にって」
「わかったわね。すぐにね」
「ええと。画廊は?」
「いいの、絵はもう充分だから」
 強引に話を進めていく優子だった。相変わらずだ。
「戻るわよ。すぐにね」
「わかったよ。それじゃあ」
 優子に引き摺られる様にしてだ。玲は大学に戻った。その彼をだ。
 優子はさらにだ。彼を大学の美術部に連れて行きだった。そのうえで言うのだった。
「はい、あんた今から美術部員だから」
「えっ、僕が!?」
「そうよ。じゃあいいわね」
 美術部の扉を開ける。そこには美術部員が何人かいた。その彼等にも言う優子だった。
「新入部員連れて来たわ」
「えっ、新入部員って!?」
「誰、それ」
「はい、彼よ」
 左手で引っ張っていた玲を彼等の前に突き出したのだった。
 
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