東方魔法録~Witches fell in love with him.
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9 約束~Witch fell in love with him.
前書き
ここで補足を。
ナンバリング的には8と9話となっていますが二つで一話分です。
明希には主人公補正が掛かっています。なのでとても冷静です。
幼稚園と小学生は一階、中学生と高校生は二階、大学生は三階となっております。
幼稚園の先生と小学校の先生は別人です。
ーLet's resume where we left offー
「いまからお前らは人質だ!騒ぐな暴れるないいな!?」
無論、誰も騒がないし暴れない。逆らうと何されるか…。もし抵抗するとしてもこちらは子供のみ、相手は大人。力の差は歴然だ。
先生は俺達が泣かせたのでここにはいない。魔法が使えばどうにかなるかもしれないが…
「よーし。全員俺の近くに集まれ。妙な真似するな?…殺すぞ」
俺も含め、皆男の言う通り男を中心にして集まる。男の脅しのせいで腰を抜かした人や気絶した人は動ける者が引きずった。
気絶したエリーは俺が背負い、いまだに茫然としているパチュリーの手も引いた。
「くそ…警察の言いなりが…ん?」
誰かに対して愚痴を呟いていた男がこちらに向かってくる誰かに気付いた。
「そこの貴方!生徒達を放しなさい!」
騒ぎを聞き付けた小学生の先生がやって来て、威嚇の為に魔法を使う構えをとった。
先生ー!助けてー!さっき泣かせたのは謝るからさー!
「はん!学園のセンコーか。邪魔だ!」
男は躊躇わず攻撃魔法を放った。
男の攻撃は先生の反応スピードを上回っていたようで、先生はなす術もなく腹部を魔法が貫通し血を流して倒れた。
「弱ェ。こんなのが学園センコーか?」
マジかよ、先生が一瞬で…。
先生が血を流して倒れたという、ショッキングな光景を見たせいで皆理性を失った。咽び泣く者、気絶する者、放心する者と様々だ。唯一、僕だけが何故か冷静でいられた。
パチュリーはと言うと…
「ゲホゲホゲホ…!…ゼー…ゼー…」
苦しそうに咳をしている。
しかし、俺はパチュリーの「ゼーゼー」という息遣いに背筋が凍り、頭が真っ白になった。
「ま、まさか…」
気道が炎症を起こし、空気の流れを制限させられている時に出る音。
俺はこの息遣いを知っている。忘れられないぐらい知っている。
これは俺を苦しめ、死に追いやった。
咳にも似た凶悪な病。
喘息だ。パチュリーは喘息なのだ。
なんてこった…パチュリーが喘息?はは…冗談キツイぜ…。なんの因果で喘息なんだよ!?くそっ!それより今は…!
「パチュリー落ち着いて…!」
俺はパチュリーを前のめりに座らせて、襟元を緩める。背中に手を当ててゆっくり摩る。
「ゆっくりと鼻から息を吸って……吐いて……」
パチュリーは俺の言うことを聞き、呼吸を整えていった。
少しは楽になったのか苦しそうな顔が和らいでいる。
俺は魔法を使い、手に水を集めてパチュリーに飲ませた。
「水を飲むともっと楽になるぞ…」
「んぐ…んぐ…。ハァ…ハァ…」
とりあえず症状は治まったようで咳が無くなって呼吸も安定している。
かつて俺が喘息で苦しみ、手元に薬が無かった時にとった行動だ。こうすることによって喘息の時にかなり楽になる。
「ありが…と…う…」
今にも消えそうな弱々しい声でパチュリーがお礼を言う。
俺はパチュリーの背中を摩ったままそれを聞いた。
「来たか!警察の言いなりが!!」
当然、パチュリーが苦しんでることを気に止める理由が無い男は辺りを警戒していた。そして、自分を傷付けた相手がここまで追ってきたことに気付いた。
「な!ここは学園!?それも明希達がいるところじゃないか!?」
「人質か…外道め…!」
父さんにエドワードさん!?朝いないと思ってたけどこいつを追っていたのか!?
するとパチュリーも父さん達に気付いたようで、自分の父親の名を呼んだ。
「お父…さん…?」
恐らくパチュリーは何となく呼んだんだろう。あれ?何でここにいるの?みたいな軽いノリで。決して悪気とかあったわけじゃない。だが、男に聞かれたのが不味かった。
「ふは…ふはは…ふぅははハはハハハハハー!!!!お父さん!?お父さんねぇ!?」
男はパチュリーの首に腕を回し、乱暴に片腕で持ち上げた。あれでは首が締まってしまう!
「!!。やめろ!娘を放せ!」
「お前の子供かノーレッジィ!?言わなくてもわかるよなぁ!?」
「くっ!」
…先生は血を流して倒れている。父さん達はパチュリーが人質になっているから近付くことが出来ない。他の小学生は論外。誰も今の状況でパチュリーを助けることが出来ない。ただ…俺を除いて。
喘息が可愛そうだから?そうかもしれない。
自分の姿を重ねたから?そうかもしれない。
幼馴染みだから?そうかもしれない。
…好きだから?…わからない。
ただ、パチュリーを守りたい。
だから
「約束守れなくてごめんね」
二人で父さん達を驚かす約束、果たせそうにないよ。
「四緑木星は風を司る…」
俺は君を守りたい。
「あ?…ぐぁうえいぎぎぃ!!う、腕が!!」
約束するよ。
「三碧木星は雷を司る…」
今度は絶対に守るから。
「ぐぅぎゃゃャャアアアぁあアぁ!!」
ー5時間後ー
目を覚ますと私は白い天井を見た。むくりと体を起こし辺りを見渡す。夕焼けの光が窓から射し込んで、部屋が茜色にそまっているがどうやらここは学園の保健室のようだ。
脚の辺りに何か当たっているのを感じて見ると、明希が顔をベットに伏せて寝ていた。
私は寝起きのボーッとした頭でなにも考えずに明希の頭を撫で始めた。
「えーと確かお昼の時…何してたんだっけ?」
確か私達で先生を泣かして本を読んだ。読んでいたら明希からお昼と言われて弁当を食べたんだっけ。そして突然爆発が…
「あ…思い出した」
爆発して私が茫然としていたことも先生が攻撃魔法に貫かれたことも突然咳が出てきて苦しくなったことも。だけど苦しくなってから記憶が曖昧だ。でも明希のお陰で楽になったことは覚えてる。
「っ!」
明希のことを思い出し、気が付いた。自分が明希の頭を撫で続けていることを。
素早く手を引っ込めて顔が熱くなるのを感じた。
「……」
そして自分でも気が付かない内に明希をじっと見つめていた。明希を見つめていると、心臓の動きがバクバクと早くなり、何だか嬉しくなってくる。
再び、今度は恐る恐る指を伸ばし、明希の頭を撫でる。
「ふふふ…」
自然と笑みが浮かび、声まで漏れてしまう。
さっきあんなことがあったのに気づけば明希のことばかり考えている。
物心がついたときから私はいっつも明希と一緒にいて明希を見てきた。
賢くて、かっこよくて、頼りになって、何でも知っていて、私の質問には何でも答えてくれて…。
「あっ…そうか…」
気付いてしまった気が付けた何で気付かなかったようやく気付いた。
「私…明希のことが好きなんだ…」
Thus , witch fell in love with him. But , This story has just begun. This is what they have waited for.
後書き
ちなみに8、9話の裏テーマは「気付く」です。何回使ってあるでしょう。
感想や評価をお待ちしております!!
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