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久遠の神話

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第九十七話 ラドンその八

「そうしていきます」
「そうなのね」
「そうです、僕は」
「真面目ね。それはどうしてかしら」
「何かをしていないと駄目ですよね」
 これが返答だった、上城の。
「人間は」
「労働は貴いわね」
「ですから」
 それでだというのだ。
「僕もまた」
「働いてなのね」
「何かをしていないと」
「それがですね」
「はい、よくないので」
 堕落してしまうというのだ、人間として。
「そういうことは好きではないので」
「仕事は何をしたいのかしら」
「そうですね。特に考えていないですけれど」
「それでも働きたいのね」
「何かをして」
「ではね」
「それでは?」
「肉体労働もいいかも知れないわね」
 こう上城に話したスフィンクスだった、彼の言葉を聞いて。
「己を堕落させたくない、磨きたいのなら」
「肉体労働がですか」
「ええ、いかも知れないわ」
 それならというのだ。
「私もそう思うわ」
「じゃあ工場で働くとか」
「若しくはスーパーで」
「スーパー?」
「あそこも肉体労働よ」
 そうなるというのだ。
「だからね」
「スーパーも肉体労働ですか」
「そう聞いているわ」
「そうなんですね」
「ええ、だからね」
「そこも就職先として考えてもですか」
「いいと思うわ」
 こう言うのだった。
「肉体労働に抵抗がないのならね」
「そうですか、じゃあ考えさせてもらいます」
「けれど財産はあっても働くことは」
「それだと僕は落ち着くんです」
「財産があるだけで」
「それで充分です」
 精神的なだ、後ろ盾になるというのだ。
「ですから」
「成程ね、そうした考え方なのね」
「そうなんです、安心出来るから余計に」
 働けるというのだ、それが彼の考え方だった。
 そうしたことを述べてだ、彼はまた言った。
「とにかくお金は」
「お金はあるから」
「もういいです」
 今回も最低限の金塊だけ手に入れた、それで終わってだった。
 そのうえでだ、彼はスフィンクスに言った。
「あの、この砂浜は」
「わかったかしら」
「町の砂浜ですよね」
「ええ、そうよ」
 場所はだ、その通りだというのだ。
「ここはね」
「そうですね、じゃあ歩いて帰られますね」
「瞬間移動の必要はないわね」
「はい」
 そうだと答えた上城だった。
「自分で帰ります」
「わかったわ、それじゃね」
「後はですね」
 ラドンとの戦いは終わった、しかしだった。 
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