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ドリトル先生と京都の狐

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第四幕その五

「何ならその跡地に行くよ、今から」
「そこにも妖怪のお話があるんだ」
「そうなんだ」
「あれっ、羅生門っていったら」
 その門の名前を聞いてです、先生がふと気付いた様に王子に言ってきました。
「あれだね、日本の文学作品の」
「芥川龍之介だね」
「うん、それだよね」
「そうだよ、その作品の舞台にあった場所だよ」
「そうだったね、あそこはね」
「そこによかったら今から行くけれど」
「行ってくれるかな」
 先生は微笑んで王子にお願いしました。
「時間がかからないなら」
「車だとすぐだから」
 そのことは気にしなくていいというのです、王子も明るい笑顔で応えます。
「それではね」
「じゃあ羅生門の方に行って」
 王子は車を運転している運転手さんにこうお願いしました。
「そうしてくれるかな」
「jはい、わかりました」
 運転手さんも笑顔で答えてくれました、こうしてです。
 車はその羅生門の跡地に来ました、sこは住宅街の奥の小さな公園です。門があったなんてとても思えない場所です。
 そこの石碑を見ながらです、王子は皆にお話するのでした。
「ここがなんだよね」
「羅生門があった場所なんだ」
「そうなんだ」
「そうだよ、とても信じられないけれどね」
 王子もその石碑を見つつ皆にお話します。
「ここがそうだったんだ」
「時代が変わればなんだね」
 トミーがしみじみとした口調で述べました。
「変わるんだね」
「万物は流転するからね」
 先生も感慨を込めてこう言うのでした。
「門もね」
「こうしてなんだね」
「なくなるんだね」
「そうだよ、イギリスだって日々変わっていってるし」
 先生は動物達に祖国のことも引き合いに出してお話します。
「日本もね」
「変わっていってるんだね」
「こうして」
「そうだよ、それで羅生門はね」
 先生からもです、羅生門のことをお話するのでした。
「本当は羅城門っていうんだ」
「それが本当の名前なんだ」
「羅城門っていうのが」
「そうだったんだ」
「そうだよ、それでね」
 そしてだというのです。
「ここは荒れ果てていてね、夜になると誰も近付かなかったんだ」
「それは芥川の作品にもあったね」
 王子もこう応えます。
「そうだったね」
「そうだよ、死体も捨てていてね」
「酷く荒れ果てた場所だったんだね」
「今では住宅地だけれどね」
 その公園の中です、今の羅生門の場所は。
「昔はそうだったんだ」
「死体を捨てる様な場所がなんだ」
「今は家になってるんだね」
「それで公園で子供達が遊んでるんだ」
「そうなったんだ」
「そうだよ、本当に変わるからね」
 時代と共にです、何でもだというのです。
「そうなるからね」
「それで妖怪は?」」
 ここで尋ねてきたのはチープサイドの子供のうちの一羽でした、その小さなお口での言葉です。
「出たのかな、羅生門には」
「そうしたお話もあるよ」
 また王子が答えます。 
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