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戦国異伝

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第百五十七話 延暦寺その九

 そのうえでだ、こう言ったのだった。
「戦うぞ」
「はい、それでは」
「今は」
「うむ、戦う」
 そうしてだというのだ、そして。
 織田家の軍勢は攻めはじめた、信長は兵達を入れると共にだった。
 そのうえでだ、火も点けさせるのだった。
「一気に焼いてしまうのじゃ」
「戦うよりもですか」
「今は」
「そうじゃ、焼くのじゃ」
 そうせよというのだ。
「焼き殺した方が戦わずに済むわ」
「しかし殿」
 佐久間がここで信長に言う。
「あの場にある仏堂等は」
「仕方があるまい、戦じゃ」
 それならばとだ、信長は佐久間にこう答える。
「仏堂が燃えてしまうのはな」
「それでは焼いてしまい」
「後で再建する」
 建てなおすというのだ。
「後でな」
「そうしますか」
「最初からそのつもりで攻めておる」
 全て頭の中に入れているというのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「延暦寺には戦の後で話す」
 焼けてしまった仏堂等を建てなおすこともだというのだ。
「銭もこちらから出す」
「そうされますか」
「うむ、ではな」
 こうしてだった、信長は焼き討ちを仕掛ける。これには僧兵達もたまったものではなく燃え盛る中ですぐ谷達に問うた。
「この場合はどうされますか」
「案ずることはありませぬ」
 杉谷は僧兵達にこう返すだけだった。
「こうしてくることはわかっていました」
「だからですか」
「はい、ここは一気に前に出てです」
 そうしてだというのだ。
「果敢に戦い我等の意地を見せるのです」
「それが今ですか」
「命は惜しくありませんな」
「無論」
 僧兵達の返答はもう決まっていた、これしかなかった。
「それは」
「そうですな、それでは」
「自ら前に出てですな」
「攻めるのです」
 そうすればいいというのだ。
「そして鉄砲も用意しておりますので」
「それが策ですか」
「左様です、木々の間から撃ちます」
 そうすれば攻める方は実に厄介だ、それでそうするというのだ。
「ではその様に」
「わかりました、それでは」
 こうしてだった、僧兵達は果敢に前に出た、そして。
 その後ろから鉄砲を撃つ、それは織田の兵の胸も頭も貫く。
 その状況を見てだ、信長は難しい顔でこう言った。
「これは厄介じゃな」
「はい、鉄砲ですな」
「鉄砲を使ってくるとは」
「杉谷善住坊は鉄砲の達人じゃ」
 信長も危ういところであった、杉谷に撃たれたことは信長にとって大きな教訓にもなっていた。それで今もこう言うのだ。 
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