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真似と開閉と世界旅行

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僅かな平穏・後編~

 
前書き
遅くなってすみませんでしたぁぁぁぁ!残業疲れがあんなに辛いとは・・・ではどうぞ。 

 
「っ・・・はぁ~」

ゴロン、と中庭の草原に寝転がる。

「亮、大丈夫か?」

「凄いやられ方してたよね・・・」

キリトとアスナがやって来た。どうやら二人も休憩みたいだ。

「まあね・・・いや、参ったよ本当」


まったく、なんつーチートだ・・・

「誰がチートだって?」

「うわっ!?リョウコウ!?」

更にぬっ、とリョウコウが顔を出してきた。

「・・・あれ?美幸は?」

「あ?彼奴ならソフィんとこいった」

「なんでソフィ?・・・あ、ああー、もう一人の?」

「そういうこった。ま、すぐ意気投合してたし、美幸も嬉しそうだしな・・・」

「そういやさ、リョウ」

「んあ?」

俺はふと気になった事を聞いてみる。

「リョウコウ・・・ってPNだよな?本名は?」

「あ、言ってなかったか。そだな、もう隠す必要もねぇし・・・涼人だ。桐ヶ谷涼人」

・・・え?

「桐ヶ谷!?」

「おう」

「・・・親戚にいたっけ」

首を傾げるキリトにリョウコウは苦笑する。

「だから別世界だっつの。亮は直葉の兄だったんだろ?俺の世界にゃ亮はいねぇ。代わりに親戚の俺がいる。理解したか?カズ」


「ま、まぁなんとなく・・・」

「ね、ねぇリョウコウ。リョウコウの世界って・・・」

リョウコウはああ、と答える。

「安心しな、ちゃんとバカップルだよ、お前らは」

「ば、バカップルって・・・!」



「亮ー♪」

「ん・・・」

アスナが顔を赤くした時・・・誰かが俺を呼んでやって来た。

「亮さん~♪」

「シャオ、穏!うわぁ・・・久しぶりだな!」


言うがいきなり小蓮は飛び掛かってくる。

「亮だ!亮だ!えへへ、あったかい・・・」

「今仕事を終わらせて急いで来たんですよぉ?」

「そうなんだ」

小蓮の頭を撫でながら穏と話す。

「・・・カズ、鼻の下伸びてんぞ」

「え?あ!いや、これは・・・」

「キーリートーくーん?」

「ま、待てアスナ!これは不可抗力だ!」

「許してあげてよ。俺も馴れるまで目に毒だったから」

「毒なんて酷いですよ~!」

穏が頬を膨らませて跳ねる。

「・・・すごっ・・・」

「キリトくん!!」

「ご、ごめん!」

「兄貴、穏みたいなのまだいるからね?」

「・・・俺、ずっと下を向いてようかな」

キリトが顔を抑えてしまう。ふと中庭に目を向けると・・・



「行くぜリパル!」

『ッスー!』

「そんなほっせぇ剣なんかアイゼンで砕いてやる!」


空中がガキンガキン派手な物音を立てて咲とヴィータがぶつかり合う。

「来い、アスベル」

「ああ、勝負だシグナム!」

「「紫電一閃!」」

シグナムとアスベルが戦い・・・

「・・・うーん、じゃあこれを調合すれば?」

「面白そうですが、失敗したらこの国が吹っ飛びますねぇ」

パスカルとジェイドが物騒な話を続け・・・


「・・・来い」

「はい、クラナさん!」


「アインハルトさん、何処からでもどうぞ」

「はい。よろしくお願いします、美鈴さん」


クラナとヴィヴィオ。美鈴とアインハルトが組手を行う。

「・・・凄い光景だなぁ」


「いやはや、絶景だな」



俺は首を鳴らす。

「お兄ちゃん、アスナさん!」

直葉が走ってくる。

「・・・って亮お兄ちゃん?えと・・・」

・・・ああ、そりゃ女子二人にまとわりつかれていたら唖然とするよね。


「そだ、兄貴やアスナも初めてだよな。遅れたけど紹介するよ。右の色々凄いのが穏・・・陸遜だ。それでこっちの子が小蓮、孫尚香だ」


「えぇぇ!?こ、この二人が・・・!?」

直葉が驚き、叫ぶ。・・・気持ちは解るけどね。お互いに軽く挨拶して雑談して・・・


「ある程度回復したかな・・・」

俺は立ち上がり、深呼吸をする。


「俺、今から色々顔を出しに行きたいんだけど・・・着いてきたい人いる?」


「俺とアスナは後でいいよ」

「うん。気の使い方を覚えないと」

「俺もわりぃけどパスな。春鈴と手合わせする約束してんだ」

「春鈴と?」

・・・そういや呉に来たときに春鈴と色々あったんだっけか・・・


「りょ、亮お兄ちゃん・・・」

「?」

「あたし、ちょっと見て回りたいなーって」

「分かった。案内するよ。穏と小蓮は・・・」

「シャオもついてくー♪」

「私はぁ、残念ですけど仕事の報告で蓮華様にご用があるのでここで失礼しますね~」


・・・というわけで。


「直葉って亮の妹なんだよね?」

「え、うん・・・」

「つっても、本当の妹って訳でもないんだよなぁ・・・なんて説明すればいいのやら」

確かに、ソードアート・オンラインの世界ならちゃんとした兄妹だけど、大澤亮だと・・・うーん。

「まいっか。妹で」


「亮お兄ちゃん、説明が面倒だから開き直ったでしょ」

「じゃあ直葉は説明できるのか?」

「・・・・・・いいでしょ、兄妹で」

「ほれみろ」


「うー・・・」

頬を膨らませる直葉の頭を撫でて笑う。

「もう、恥ずかしいから頭撫でないでよ」

「癖だから諦めてくれ」

そんな会話をして辿り着いたのは・・・兵士の訓練所。



「わぁ・・・」

直葉が鍛錬の様子を見て唖然とする。その時、兵士の一人がこちらに気付いた。

「あ・・・御遣い様!」

「え・・・!?」

それに気づいて兵士が駆け寄ってくる。

「お帰りになられたんですね!ご無事で何よりです!」

「ああ、つい先日帰って来たんだ。すまないな、顔を出すべきだった」

「いえ、そんな・・・」


「亮お兄ちゃんって本当に偉いんだ・・・」

俺より強面の人が敬語を使うせいか、直葉は少し引き気味だ。

「だって亮はこの国の英雄みたいなもんだもん」

「孫尚香様までいらっしゃってくれたのですか?おや、こちらの方は・・・」

「ああ、直葉って言って俺の妹だ」

「御遣い様の!?すみません、失礼しました!」

直葉に近づいていた兵士が一歩下がって頭を下げる。直葉はそんな兵士を見てあたふたしていて・・・

「直葉、学校の後輩に接する感じでいいんだよ」

「そ、そんなこと言われても・・・」

慣れろ慣れろ。俺も最初は敬語が抜けなかったから。


「よし、じゃあ誰かコイツと試合してくれないか?」

「亮お兄ちゃん!?」

「気晴らし+親睦会だよ。本当なら外史の全員とやらせたいけど・・・今は直葉しかいないからな。というわけで、ほら」

俺は刃先を潰した模擬剣を直葉に投げ渡す。

「わっ、たったっ・・・」

「では、僭越ながら私がお相手致します」

そこそこ経験を積んでいる兵士が同じように模擬剣を持ち、礼をしてから構える。

「お、お願いします!」

直葉も慌てて頭を下げてから構える。

「よし・・・じゃあ決着は一撃決まるか、もしくは寸止めによる降参で決めよう。双方尋常に・・・始め!」


俺がそう言って手を上げてから下ろすと兵士が走り出す。

「ふん!」

まずは様子見の一撃。直葉は息を吐き・・・

ビュン!

二歩、下がってかわした。直葉が持っているのは見た目的には西洋型の両刃剣が一番近い。普段刀を愛用してる身としては感覚が違うだろう。だからこそ、直葉は初手を剣で受けなかった。恐らく直葉は極力弾くのではなく避ける方向で戦うだろう。

「せやぁぁ!」

三発目を避けたところで直葉が攻めに転じる。だが直葉は一瞬顔をしかめた。

ガキィン!

「う・・・!」

振った時の重心、当たった時の衝撃。それらの感覚の違いが直葉の動きを鈍らせ・・・再び防戦一方となる。

「直葉、押されてるね」

「ああ。でも直葉がきっと勝つ・・・ってあー、やっぱシスコンとブラコンの気でもあるんかな」

「しす・・・?」

「兄妹が好きってこと」

「じゃあシャオも同じだね♪」

・・・無邪気だなぁ。



「やぁぁぁ!」

・・・と、ここで直葉が踏み込む。剣が輝き・・・


「バーチカル・スクエア!!」

そして放たれる四連撃。流石、と言うべきかその兵士はそれを一撃も貰わずに防いだ・・・が、大きく体制を崩された。

「めぇぇぇん!!」

直葉が大きく振りかぶり・・・気合い一閃。

ガコォン!

「ぐぅ!?」

・・・兵士の兜に容赦なしの一撃。

「そこまで!」

「ふぅ・・・あ・・・あぁぁぁぁ!!ご、ごめんなさい!つい本気で・・・」

「あはは・・・構いませんよ。いたた・・・」

兵士がフラフラしながら直葉に礼をして下がる。

「・・・容赦ないのな、お前」

「だ、だって・・・」

「というわけで次戦いたい人ー」

「亮お兄ちゃん!」

すると沢山の立候補者たち。

「よし、頑張れ直葉」

「もう!後で見返りを要求するからね!?」



その時、ふと見慣れない兵士達が目に入った。

「あれ・・・記憶違いなら悪いんだけど・・・君達、以前からいたっけ?」

「い、いえ!僕達は志願兵です!」

「志願兵?呉はそういった募集はしなかった筈だけど・・・」

「確かに、孫権様に反対されましたが・・・僕たちも自分の世界を守りたいんです!だから・・・」

「そうか・・・って、女性もいるのか?」


近くに二人いたので聞いてみた。

「はい。私たちは姉妹で・・・その、一時期魏に所属していました」

「魏に?じゃあなんで呉に・・・」

「・・・三国がまだ三分立していた頃、私たちは・・・三人姉妹だったんです。ですが、末の妹は国境付近の争いに巻き込まれた時に・・・」

「・・・それは」

「ええ、呉の人に殺されました。暗闇で敵と間違われて・・・」

「だから魏に入ったのかい?」

もう一人の少女が頷く。

「・・・でも、戦いは終わった」

「私たちは妹の仇もとれなかったし、一時期はこの世界も壊したいくらい嫌いでした。ですが・・・今じゃ、この世界で生きていきたいと思っています」

「生きられなかった妹の分まで・・・」

「・・・そう、か。だから・・・呉に?」

「はい。呉を中心として戦うと聞いたので・・・戦う力があるのに、なにもしないでいるのに耐えられなく・・・御遣い様」

「ああ・・・」


「私たちはあなたや・・・世界の為に戦います。どうか、一緒に戦うことをお許しください」

二人が・・・いや、志願兵全員が頭を下げる。答えは・・・

「・・・わかったよ。君達の気持ちはよくわかった」

俺は思い切り声を出す。

「君達の覚悟を俺は認める!!共に戦い・・・勝ち取ろう!!」

全員が歓声を上げる。

「いいの?亮。まだお姉ちゃんちゃんと承認してないんだよ?」

「御遣い特権だ。たまには使わせろ」

「元はただの種馬だったのにね」

「シャ・・・!それを言うなよ!」

「えー?だってホントでしょ?元々は亮はみんなと肉体関係になって世継ぎを産ませるのが役目・・・」

「お前なぁ!そう言うと改めて俺がやなことしてると・・・おも・・・う・・・」

振り返って・・・血の気が引いた。

「亮、お兄ちゃん?」

直葉の顔が青ざめていた。

「どういう、こと?」

「あー、えっと・・・」

「簡単に言えば、亮がみんなに《ピーー》して《ピーー》しちゃって子供を・・・」


「な・・・な・・・」

青から赤に変わる直葉の顔。

「す、直葉・・・は、話を・・・」

「亮の・・・亮の変態ぃ!!」

ズドォ!

「ゴッホァ!?」

直葉の鋭い突きが鳩尾を貫く。



「亮の馬鹿!変態!女の敵!」

「直葉・・・頼む、誤解ではないけどせめて弁明を・・・つか説明を・・・」






呼吸が可能になってから直葉に話す。・・・外史メンバーには種馬系の話をしてないんだよ・・・


「・・・というわけで、天の御遣いの血が入れば色々凄いだろ、ってことで俺が種馬扱いされて・・・」

「う・・・うぅ・・・」

直葉は相変わらず顔が真っ赤だった。

「そ、それで・・・亮お兄ちゃんは・・・し、したの?」

「・・・ドウデショウネ」

「顔を露骨に逸らさないでよ!」


直葉は溜め息を吐く。

「・・・えと・・・でもな、直葉。俺は適当な気持ちで子供を作る気はないんだ。そこだけは・・・理解してくれる?」

「・・・もう、いいよ。ここは日本じゃないし・・・それに、亮お兄ちゃんがみんなを大切にする理由もわかったし・・・」

「そうか・・・あの、さ」

「?」

「兄貴やサチ達には内緒にしてほしいなーって・・・」

「亮お兄ちゃんってば・・・すぐ保険に走るんだから」

「もうみんな知ってると思うよ?」

「え?・・・え?」

「だって春鈴が説明してたのシャオ聞いたもん」

「春鈴ィィ・・・!!!」

思わぬ黒幕に頭を抱えた。

「直葉・・・シャオ、もう昼だし飯食いに行こうか・・・」


てなわけで厨房へ・・・




「すいませーん。ちょっと軽く・・・あれ?」

「お兄ちゃん!」

「ユイ、ここにいたのか?」

「お邪魔してます」

「リョウもご飯食べに来たの?」

「美幸とソフィ?なんか面白い組み合わせだな」

美幸とソフィはリョウコウから聞いたけどユイは・・・


「わたしとソフィさんは一緒に行動してました!」

「私は違うソフィちゃんとお友達だから・・・こっちでも仲良くなりたかったんだ」


「・・・もうユイも美幸も友達だよ」

「こうしてみると三人姉妹だな」

俺が言うとユイが嬉しそうに言う。

「じゃあソフィお姉ちゃんと美幸お姉ちゃんです!」

「お姉ちゃん・・・わたしが・・・くす」

「その呼ばれ方・・・私の世界のユイちゃんを思い出すなぁ」



美幸がユイの頭を優しく撫でる。・・・本当に三姉妹だな。

「とと、俺達も飯を・・・」

「おう、亮も来たか」

「祭さん!?」

厨房にはエプロンを付けた祭さんがいた。

「なんで祭さんが・・・」

「なに、簡単じゃよ。飯を食べに来たら人がいなかったからな。儂が自分で作ろうとしたら三人が来てのぅ」

「ついでだからみんなの分を作ろう・・・って?」

「うむ。そういうことじゃ。尚香殿や・・・確か、亮の妹じゃったか?食べるかの?」

「手伝おうか?祭さん」

「せっかく帰って来たんじゃ。久々に手を振るわせぃ。亮にも飛び切りのを作ってやるからの」

そう言って祭さんは再び鼻歌と共に料理を始める。席に座ると小蓮が耳打ちしてくる。



「(祭、きっと亮が帰ってきて嬉しいんだよ)」

「(そ、そうなのか?)」

「(祭の横顔見なよ)」

「(チラッ)」

「~~~♪」

・・・見たことのない笑顔だった。


「(・・・な、なんかうれしいけど恥ずかしい・・・)」

「ねぇ亮お兄ちゃん。あの人は・・・」

「祭さん・・・黄蓋だよ」

「・・・もう、驚き疲れちゃった」

直葉が遠い目で溜め息を吐いた。

「はは・・・蜀の人もこれから来るんだからな?」

「なんか・・・亮お兄ちゃんが別人みたい・・・」

「実質別人だけどな・・・」

そんな会話をしながらしばらく待つと・・・

「待たせたな。ほれ、飯じゃ」



大量の中華料理が運ばれ、並べられる。

「かに玉・・・!!」

ソフィがかに玉に尋常じゃない食い付き方をした。

「まっててね、今取り分けて上げるから」

「(コクコクッ!)」

美幸が微笑みながらソフィとユイの小皿に別けていく。

「直葉とシャオも皿貸して。分けてあげるよ」

「うん♪」

「お、美味しそうだけどカロリーが・・・」


「んなの気にすんな。むしろもうちょい太れ」

「女の子に太れとか言わないでよ!」

パシン、と背中を叩かれる。さて・・・みんなに料理が行き渡り・・・

「じゃあみんな・・・せーの」

『頂きます!』

まず一口。・・・うん!

「美味い!」

「かに玉・・・美味しい・・・」

「野菜が美味しいです!」

「ほら二人とも、ほっぺに付いてるよ」

美幸がソフィとユイの頬を拭く。

「・・・」

直葉は一口食べて固まった後・・・

「う・・・運動すれば太らない・・・太らない・・・うん!」


そう言ってブンブン頭を振って食べるのを再開する。シャオに至ってはただひたすら口に詰め込んでいた。

「そんなに美味いか?亮」

「うん。かなりね!久々に食べれて凄い懐かしい・・・っていうか嬉しい」

「ほう、そうか。・・・なら久々に“あーん”でもしてやろうか?」

「「「ごふっ!?」」」

直葉、美幸、俺は祭さんの発言にむせる。


「さ、さささ祭さん!」

「りょ、亮お兄ちゃん・・・」

ああ、妹の引き気味な視線が痛い・・・!


「わ、私・・・何も聞かなかったから!」

美幸さん、それはそれでキツいッス。

「祭さん・・・あのさぁ・・・」

「なんじゃ、事実だろうに」

「だからってさぁ・・・!」


そんな感じで時間は過ぎていった・・・








































咲~


ヴィータと一戦やり合った後、俺は休んでいた。視線には様々な試合。

「きゃあああ!?」

リョウコウにやられ、空飛ぶ春鈴。


「・・・違う、もう少し腰を捻って溜めるんだ」

「こ、こうですか?」

クラナがヴィヴィオを指導し・・・

「「はぁぁぁぁ!!」」

キリトとアスナは剣閃を空に放っていた。・・・大分慣れたなあの二人。

「・・・咲」

「父さん、何してるの?」

「恋に・・・愛依か」


笑顔の愛依がなんだか嬉しくて頭を撫でる。

「わっ・・・い、いきなりどうしたの?」

「いや・・・娘っていいなぁってさ」


「でも・・・本当の父さんはアタシが・・・」

「闇が暴走する前に殺してくれたんだろ?ごめんな、嫌な役割を押し付けて」

アビスの世界で見た愛依の記憶。愛依は恋に庇われ、暴走しかけた俺を殺した。

「愛依、とにかく思いっきり甘えてこい。お前の親より五年若いけど、それでも俺も咲だからな」

「・・・恋も。沢山甘えてほしい」

「父さん・・・母さん・・・」

「たく、平和な家族団欒ねぇ」

「詠?」

「あ・・・」

愛依が詠を見て固まる。

「あの・・・その・・・」

「いいわよ謝んなくて。なんというか・・・色々気が抜けたわ」

詠がジロッ、と愛依を見る。

「こうしてみるとちゃんと愛依にも咲や恋の特徴があるのよね・・・ボクとしたことが迂闊だったわ」

「・・・いえ、アタシもよく似てないって言われてました。・・・お姉ちゃんたちから」

「姉?」

「はい。四人、姉弟がいました」

「そう・・・」

詠はそれ以上聞かなかった。理由なんて・・・言わなくても分かる。

「アタシにとっては詠さんもお母さんなんです。アタシ達に唯一勉強を教えてくれる人でしたし・・・」

「そう・・・まぁ、そうよね」

「俺は教えなかったのか?」

「父さんは暇があればアタシ達と遊んでくれたから。だからよく詠さんに怒られてたよ」

「あぁ・・・うん」

なんか予想が簡単だ。

「後は・・・お昼寝も好きだなぁ」

「昼寝?」

「うん。母さんの動物達に囲まれて、母さん達と一緒に・・・あれ・・・?」

愛依の目から・・・涙が溢れた。

「おかしいな・・・なんで泣いてるんだろ・・・」

恋が後ろから愛依を抱き締める。

「・・・ここの恋は、愛依を離さない。だから安心して」

「うん・・・やだな、昔っから泣き虫で・・・」

「気にすんな。慰めるのも親の・・・家族の務めだからな」

「うん、ありがとう父さん」


「そういや椿とは?」

「あ、それは父さんと亮さんが親友だから、よく遊んだんだ。引っ込み思案なアタシを椿が引っ張ってくれて・・・」

「そか。そりゃ納得」

「・・・その肝心の椿は何処よ?」

「孫権さんの所で話してるよ。やっぱりまだ椿も緊張してて・・・」

その時・・・

「咲ーっ!!」

「恋殿ぉーっ!!」

「詠ちゃーーん!!」

「え?おわっ!?」

「っ!?」

「きゃっ・・・」

俺達は飛び付かれ、三人とも仰向けに倒れる。

「あたた・・・」

「咲や!ホンマに咲やぁ・・・!」

「し、霞?・・・ああ、久しぶり。いや・・・ただいま」

「お帰り♪よかったわ・・・ん~・・・咲や~」

・・・流石に抱き付かれるのはその・・・当たるといいますか。

『咲さんモテモテッス』

「(お前はやけに黙ってると思ったら・・・)」

『すいませんッス。なんだか話すタイミングを逃して・・・』


「恋殿ぉ・・・ねねは、ねねはずっと待っておりましたぞぉ・・・!」

「・・・ただいま、ねね」


「詠ちゃん・・・お帰りなさい・・・!」

「ちょ、ちょっと月、苦しいわよ・・・」

「やれやれ、おんな泣かせは相変わらずのようだな、咲」

「華雄も来てたのか!」

「ああ、こんな戦、燃えないわけがないからな」



「てことは一刀達も?」

「来とるで。蓮華のとこに顔を出しと・・・る・・・」

霞の目付きが代わった。視界に入ったのは・・・愛依だ。


「・・・お前!!」

「破壊者だと!?」

霞と華雄が後退り、武器を構える。いや・・・ねねや、月ですら愛依を睨んでいた。


「っ・・・」

一方愛依は呼吸もままならなくなっていた。

「愛依・・・俺が」

「大、丈夫」

愛依はゆっくりとだが、事情を話す。俺と恋の娘であること。罪を償う気はあること。黒幕のこと。

「・・・」

華雄は武器を降ろし、月もねねも俯いていた・・・が、ただ一人・・・霞だけは飛龍偃月刀を構えていた。

「霞・・・?」

「そんなん簡単に信じられるかいな。あんたにはウチの大事なモンぶち壊されたしなぁ」


「じゃあ・・・どうすれば信じてもらえますか」

霞がニヤリと笑う。

「咲と恋の・・・武人の娘ならわかるやろ」

愛依が俯いたあと・・・偃月刀を二本構える。

「武で示せ・・・ですよね」

「正解や!」

霞が踏み込み、突きを放つ。愛依の近くにいた俺達は飛び退き、愛依は霞の一撃を弾く。

「勝負か!?勝負なら私が・・・」

「・・・華雄、空気読んで」

「恋に言われただと!?」

恋にKY宣言されて華雄がヘコむ。

「(愛依・・・)」

愛依と霞はひたすら打ち合う。

「大分やるやない、か!」

「くぅ・・・!」

「特別や・・・目ぇかっぽじってよく見ぃ!」

霞の身体が光る。・・・気だ。それが腕と刀身に収縮する。

「はぁぁぁぁ・・・でりゃあああ!!」

連続で素早い突きが放たれる。愛依は防ぎきれずに偃月刀を二本とも弾き跳ばされる。

「らぁっ!」

ゴスッ!

「あぐっ・・・」

霞の蹴りが当たり、愛依が転がる。

『さ、咲さん・・・』

「・・・ああ!手が滑ったぁ!」

俺はわざとらしくリパルを愛依に投げる。

「!」

愛依はリパルをキャッチし、そのまま一閃。霞は防ぎながら下がる。

「ちょいまちぃや!なに手助けしとんねん!」

「いやー、手が滑って」

「思いっきり振りかぶっとったやないかワレぇ!?」


「余所見しないで下さい!」

愛依が今度はスピードで攻める。


「やぁぁ!」

「まだまだ遅い!破壊者の能力とやらを使ったらどうや!」

「アタシにある力は・・・これだけです!」

刃に闇が灯され・・・

「走れぇ!」

衝撃破のように地面を砕いていく。

「闇?・・・んなもん」

再び刀身に気が集まる。

「見慣れすぎて飽きとるわぁ!」

同じように衝撃破を放ち、相殺・・・いや、二発目を放ち、愛依が吹き飛ぶ。

『愛依さん!』

「ま・・・まだ負けない・・・諦めない・・・!」

「・・・」

恋が方天画戟を取り出し・・・

「・・・」

ブンッ!

愛依に向かって投げた。・・・射線上には霞がいたが。

「危ぅっ!?」

「わっ!?」

霞がしゃがんで避け、愛依が受け止める。

「コルァッ!何してくれとんのや!てかまず手助けし過ぎやバカ親!」

「・・・手が滑った?」

「疑問系やないかぁぁっ!!」

「隙ありです!」

左手に持った方天画戟を振り下ろす。

ガキャン!

「重っ・・・」

「闇の補助で充分振れる・・・母さんと父さんの武器を使ってみっともない真似はできない!」

『攻めるッス!』

リパルで捌き、方天画戟で攻める。それをしばらく繰り返した後・・・霞が気を放出した。

「全力でぶちかましたる!」

高速で走り、勢いののった突きを放つ。

「でやぁぁぁぁぁ!!」

「っ!?きゃあああ!」



渾身の一撃が愛依を吹き飛ばした。そして・・・

「・・・終わりや」

・・・首元に偃月刀を突きつけた。

「・・・!」

だが愛依は未だ霞を見続ける。

「もう一回・・・もう一回お願いします!」

「はぁ?何言って・・・」

「これじゃ・・・認めて貰えない・・・アタシが生きなきゃ・・・アタシをかばってくれた父さんと母さんが無駄死にになっちゃうから・・・!そんなの嫌だから!」

愛依の目に涙が浮かぶ。

「・・・もういいよ、愛依」

「ああ、よく戦ってたよ、お前は」

俺と恋が愛依に近付く。

「でも・・・でもぉ!」

「第一・・・負けたら認めない、なんて言ってないだろ?なぁ霞」

霞は偃月刀を担いで笑う。


「せやな。何時から気付いとった?」

「二発目から。霞、楽しくなってただろ」

「だって中々いい動きするんやもん。てか本気で殺る気がないって分かったから愛依に武器貸したんやろ?」

「・・・まあな。霞には悪いけど、愛依を殺す気なら全力で止めてた」

「ウチかて倒すべき相手を間違えるほどアホやない。今は愛依は倒す相手やない・・・ってことや」
「えっと・・・え?」

愛依が首を傾げる。対する霞は笑顔で・・・

「試すような真似してすまんかったなぁ。安心せい、咲の家族ならウチの家族。家族は助け合いや。ウチも愛依のこと助けたる」

「ちょ、張遼さん・・・」

「“霞”や。咲と恋ちんの娘なら遠慮はいらん。ウチの真名預けたる」

「あ、ありがとうございます・・・霞さん」

「んで・・・もう一戦やらへん?」

「え?」

「愛依からもう一回って言ったやん。ウチも長い間知り合いとしかやっとらんから暇やったし・・・」



「・・・だってさ、愛依」

「お・・・お願いします!」

・・・ちなみに、直後に椿が来て霞が同じ方法で試し・・・泣かせた。・・・亮と明命が笑顔で霞に倍返ししたのは別の話・・・ 
 

 
後書き
椿
「台詞・・・なかった」

明命
「そうですね・・・」


「いや・・・まぁ元気出してな?」

椿
「・・・次回もお楽しみに」

明命
「それでは!」 
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