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ドリトル先生と京都の狐

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第二幕その七

「あの人だったね」
「ノーベル文学賞だったよね」
「それを受けた人だよ」
「その人の言葉だったんだね」
「本当にそうだよ」
 美しい、まさにそうだというのです。
「とてもね」
「そうですね、この場所は」
 トミーもうっとりとして周りを観ながら先生に応えます。
「幻想的ですよね」
「そうだね、これが幽幻というのかな」
「いや、幽幻はまた違うと思うよ」
 王子は先生にこのことは断りました。
「またね」
「違うんだね、また」
「うん、これはね」
 どういったものかといいますと。
「幻想的だろうね」
「そちらなんだね」
「そう思うよ、僕は」
「では幽幻は何かな」
「能かな」
 王子が幽幻とは何かをお話する時に出したのはこれでした、日本の演劇の一つでお面をつけてするものです。
「あれが幽幻かもね」
「能だね」
「能は京都が本場だけれど八条学園でも観られるよ」
「ああ、能部ってあったね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「今度観るといいよ」
「うん、それじゃあね」
 先生は学園でその能を観ようと思うのでした、そしてです。
 先生達は清水寺の後は銀閣寺に来ました、するとジップはお水と草木の間にある銀閣寺を観てこんなことを言いました。
「あれ、銀じゃないんだ」
「銀閣寺だけれどね」
「銀はないよね」
 このことをです、ポリネシアとトートーも言いました。
「木だよね」
「普通の建物だよね」
「日本のね」
「ごく普通の」
「これの何処が銀閣寺なのかな」
 ジップは首を傾げつつ先生に尋ねました。
「先生もおかしく思わない?」
「そうだね、僕も銀閣寺については調べているけれど」
 それでもだとです。、先生もこうジップに答えます。
「最初は銀を使おうっていう意見もあったらしいよ」
「それで何で使われなかったの?」
「当時建てた幕府にお金がなかったらしいよ」
「銀を使うだけの」
「それか建てた足利義政さんがこれでいいと言ったとか」
 こうした説もあったというのです。
「その辺りは諸説あるんだ」
「そうなんだ」
「うん、まあ金閣寺は金を使ってるけれど」
「この銀閣寺はなんだね」
「そうだよ、銀閣寺だけれどね」
 銀はあってもだというのです、先生もその木造のもの静かな趣の建物を眺めながらジップ達にお話します。
「銀はないよ」
「そうした建物なんだね」
「そうだよ」
 こうお話するのでした、そしてです。
 王子がです、ここでまた言うのでした。
「じゃあ次はね」
「次は?」
「次はっていうと?」
「南禅寺に行こうね」
 次に行く場所はというのです。
「そこでお昼も食べようね」
「お昼御飯は何なの?」
 ガブガブが尋ねます、そのお昼御飯は何かと。
「京都の食べものだよね」
「そうだよ、湯豆腐だよ」
「湯豆腐なら普通にあるんじゃないの?」
 ガブガブも日本のことがわかってきました、それでこう王子に言葉を返したのです。 
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