稲荷の祟り
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第六章
「何か恐ろしいものを見た様な」
「恐ろしいもの?」
「そうしたものを見た様な顔で死んでいたそうです」
「急性アルコール中毒だね」
岳田はその話を聞いて眉を顰めさせて秘書に問い返した。
「いまそう聞いたけれど」
「その通りです」
「それで苦しんで死んだ」
「ちょっとおかしいですかね」
「そうだね、まあ食べているものが喉に詰まってとか」
岳田は考えながら述べた。
「それかな」
「そうですかね」
秘書も応える、そのうえでこうも言うのだった。
「ですが死んでもらうと、折角招いたというのに」
「全く、気をつけてくれないとな」
「困りますよね」
「私としてはな。しかし私と彼等の関係は」
「消してあります」
秘書はこのことにははっきりと答えた。
「そうしたものは」
「証拠はだね」
「証拠さえ消していれば」
それでだというのだ。
「何も問題はありませんね」
「うん、証拠がないとね」
それでだとだ、岳田も一食で数十万はする料理を食べながら答えた。
「何を言われてもシラを切れるから」
「マスコミも報道しませんし」
「問題はないね、それだと」
「はい、ご心配なく」
「では別の人達を招こう」
岳田は彼等のことは置いておいてこうも言った。
「それではね」
「はい、それでは」
こうした話をしてだった、二人で馳走と酒を楽しんでいた。その彼等の部屋の場所は料亭の者以外は誰も知らない。
筈だった、しかし。
ここで部屋の襖が音もなく開いた、そしてだった。
そこに白い神主の服を着た何者かが立っていた。開けられた場所に。
髪の毛は白い総髪だ、長いのがわかる。
だが顔は見えない。その顔には面がある。
面は白い狐の面だ、その面を被っていた何者かが立っていて変に甲高い声で岳田と秘書に言ってきた。
「後はうぬ達だけだ」
「?何だね君は」
「誰も呼んでいませんが」
「呼ばれてはいない」
謎の者もそれは否定する。
「来たのだ」
「料亭の催しか?」
「いえ、聞いていませんが」
二人は謎の者に言われて顔を見合わせて話した。
「何も」
「そうだね。じゃあ一体」
「はじめるとしようか」
謎の者はその二人をよそに狐の面に手をかけた。そのうえで。
翌日新聞の一面に大きく岳田の急死が伝えられた、料亭において。
秘書も一緒だった、そこには急性アルコール中毒かと書かれていた。
その記事を読んでだ、公園を作った業者の社長は血相を変えて出勤してきていた社員達に対して言った。
「おい、今新聞読んだんだがな」
「はい、知事さん死にましたね」
「急死だそうですね」
「何だ、これは」
その血相を変えた顔で言う社長だった。
「料亭で二人共か」
「はい、閉店時間になっても出て来ないんで不思議に思ったお店の人が部屋を覗いてみますと」
「知事さんが秘書の人と一緒に死んでたそうで」
「心臓麻痺だったみたいですよ」
「病院で死亡が確認されたとか」
「それで今夜お通夜です」
そうなっているとだ、社員達も社長に言う。
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