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久遠の神話

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第九十五話 中田の決断その五

「あの方が私に弓を教えてくれましたから」
「そう、それ故に」
「私一人では」
「勝てないよ」
 アルテミスである彼女ではというのだ。
「三人でないとね」
「アテナ姉様とペルセポネーで」
「やっとかな」
 その三柱の神々でようやくというのだ。
「勝てるかな」
「左様ですか」
「気をつけてね」
 戦う場合はというのだ。
「僕が参戦しようか」
「いえ、お兄様は」
 聡美はアポロンの言葉には穏やかに断って返した。
「お気持ちだけを有り難く」
「いいんだね」
「はい、月のことですから」
「太陽はだね」
「月と太陽はお互いに助け合いながらも交わってはなりませんね」
「昼と夜が完全に分かれているからこそ」
「ですから」
 アポロンだけはというのだ。
「申し訳ありませんが」
「この世の摂理だね」
「月は昼には出ていても」
「白く、輝くことはね」
「ありません」
「太陽もね」
 例えだ、夜の空にあってもだ。
「輝くことはない」
「ですから」
「月のことに太陽は関わってはならない」
「太陽のことにも」
「そう、月はね」
 関われない、それ故にだというのだ。
「ではね」
「はい、それに私にはアテナ姉様とペルセポネーがいてくれていますので」
 太陽は関わることが出来ない、だがというのだ。
「ですから」
「では見守らせてもらうよ」
「そうして頂ければ」 
 こう言うのだった、それでだった。
 アポロンはこれで言うことは止めた、そうしてだった。
 後は家に帰った、そして中田に朗報が届いた。彼は電話で病院からの言葉を聞いてまずはこう言ったのだった。
「それ本当ですか!?」
「はい、手術は成功しました」
「じゃあ親父達は」
「後は明日の朝です」
 その時にだというのだ。
「明日の朝来られれば」
「ひょっとしたらですか」
「いえ、先生が仰るには」
 そのだ、明日の朝になればだというのだ。
「ご家族は目覚められるとのことです」
「そうなんですか」
「病院に来られますね」
「当たり前ですよ」
 中田にはこの返答しかなかった、そう聞いては。
「それは」
「では明日の朝いらして下さい」
「いや、奇跡みたいですね」
「はい、まさに」
 中田に電話で報告するその医師もこう言う。 
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