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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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Between Times 同居人たちの対話

 
前書き
え~お久しぶりです。
だいぶ間隔が空きました。
ざっと4、5ヶ月というところでしょうか?

いろんなことがありました。
センター試験、そして本試験。
結果として第一希望は逃しましたが第二希望の大学の法学部に進学しました。

というわけで連載再開します!
もし待って頂いていた方がいらしたならとても嬉しく思います!
新生活に慣れるまで更新のペースは遅いかもしれませんが、気長に待って頂けると幸いです!
ではどうぞ! 

 
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

時は現代に舞い戻る。

サヤナと彩斗は帰路につく。
それも少し小走りで。
あの記念碑のある公園での彩斗は自分の過去を話した。
出来れば話したくないことまで話す羽目になったが、幸いなことにサヤナは自分に対する態度を変えることをしなかった。
自分が殺人を犯したと告白した、早い話が自分の横で一緒に歩いている少年がかつて殺人鬼だったということを知っても驚くこともなくいつも通りなのだった。

「ねぇ?僕の過去を知って、僕のことを嫌いになった?」
「え?だって、過ぎたことだし仕方ないじゃん?実際、サイトはそれだけのことをされてたわけだし」
「でも...」
「いいんだって。私はサイトがどんな人かちゃんと分かってるから。絶対に見捨てたりしないよ」
「!?...ありがとう」

彩斗は恐る恐る質問するが、サヤナは笑顔で返した。
だが彩斗恐れていた最後の可能性があった。
それはサヤナが自分を傷つけないためにわざと笑顔で振舞っているということだった。
しかしそれは誤りだった。
それにサヤナは彩斗がかつて言われたのと同じセリフを口にした。
アイリスやミヤ、そしてメリーに言われたセリフと。
嘘偽りのない本心から出てくる言葉を。

「じゃあ...もう少し急ごう。話してたら夕飯の時間過ぎちゃったし」
「え!?ちょっと!!遅れたのはサイトのせいでしょ!?」
「君が話してくれって言ったから!?」
「サイトには簡潔にまとめて話す要約力が足りないんだよね!それだから国語の成績が伸び悩むんだよ!」
「うっ....そんなことないよ!」
「じゃあ過去の助動詞『けり』の活用形を未然形から行ってごらん?」
「.....」

彩斗は少し考える仕草を見せたがサヤナの手を取り、スキップするように走り始めた。
そしていつもの通りに軽く親しみのある口喧嘩。
傍から見れば、実に身長差が実に30センチメートル程の兄妹の微笑ましい光景に見えた。
マンション街で帰宅しようとするサラリーマンやOLの避けながら、その一角にある家の門をくぐった。
そこには豪邸があった。
『コトブキ町』というベッドタウンには似つかわしくない高級住宅。
4階建てにクリーム色の外壁、広めの庭には手入れされた草木に地下水の湧き出る池、ガレージ。
一般人の住宅にしては相当な金持ちの物件としか思えない家のドアを彩斗とサヤナは躊躇うことなく開いて靴を脱ぎ捨てた。


「たっだいま!!!」

「ただいま」

「おかえりなさい!」

彩斗とサヤナに上から声がかけられた。
1階は広い空間で主に書斎や倉庫がある。
そして吹き抜けになっており上の階から覗けるようになっているのだ。
声の主は2階のリビングからエプロン姿で見下ろしていた。
彩斗とサヤナはゆっくりと螺旋階段を登りながら2階へと辿り着く。

「遅かったですね?もうご飯できてるのに...」
「ごめんなさい。ちょっとサヤナを探すのに時間が掛かって」
「あ!人のせいにするの?自分の要約力の無さのせいでしょ?」
「君のせいでもあるよ!」
「まぁまぁ...でもこれで全員揃ったわ」

2人の間に割って入ったのはアイリスだった。
4年前と同じく蝶の髪飾りに人形と勘違いしそうなまでに美しい顔立ちに甘音色のロングヘア、ロングスカートに大きなリボンのワイシャツ姿。
優しく包容力のあり甘く艶っぽい声だ。

「今日はカレーです。人参多め、玉ねぎ少なめです」
「...人参かぁ...」
「お?好き嫌いかぁ?サイトォォ...?」
「君は玉ねぎが減って嬉しいくせに...」

サヤナはニヤニヤとオヤジ臭い声で彩斗をバカにする。
だが彩斗は小さな声で愚痴りながら特に反論することもなく席に着いた。
そしてエプロン姿の少女、『城戸舟子(きどしゅうこ)』が持ってきたカレーをテーブルに乗せていく。

「いつもありがとう舟子さん」
「いえいえ」

舟子は半年ほど前からこの家に住み込みで働いている。
舟子とその双子の弟は両親に先立たれ、極貧生活を送ってきたのだ。
そんな不幸な境遇にもめげることなく、舟子は小さい頃から年齢をごまかして働いてきた。
高校に進学したものの、「貧乏人」とイジメられながらも弟たちのため、自分の学費を払うため、生きていくために働いてきたのだった。
だがとうとう体が悲鳴を上げた。
バイト帰りに空腹に耐えられずに倒れたのだ。
正直、三途の川の向こうで天使が手招きしているのが見えたという。
だがその場に偶然、彩斗が居合わせた。
救急車を呼ぼうとするも止められ、取り敢えずその場のファミレスで食事をおごった。
「大丈夫です。ありがとうございました!」と笑顔で別れた舟子だったが、20メートルほどで再び倒れた。
今度は過労だ。
救急車も呼べない状態で出来ることは自分の家に運ぶことだった。
目覚めた舟子から詳しい事情を聞くうちに彩斗はところどころ共感を覚えた結果、彼女を雇うことにした。
時給1200円、学費、借金、生活費は負担、住む場所も与え、弟たちの家賃も受け持つという破格の条件だった。
ただ条件が2つあった。
それはイジメを受けるようなことのない平和で教養のある学校に転校し、今やっている労働基準法スレスレのバイトを全て辞めることだった。
正直、彩斗はイジメられる人間を見たくもないし、人の努力を踏みにじって金儲けしているような人間は大嫌いだったし、何よりこの時のこの家の食生活が崩壊寸前だったからだ。
食事はインスタント食品とトーストしたパン、コンビニで買ってきたサラダ。
もし誰かが食事を作ろうとすれば、ご飯はベチャベチャ、目玉焼きはピータンに変貌するという恐ろしい状態だった。
彩斗を筆頭にアイリス、メリー、スズカの4人は誰も料理など出来ないのだった。

「いつも美味しく出来るのってなんでですか?舟子さん?」
「最初は料理本を見ながらやっていって、慣れてきたら独自のアレンジを加えるっていうのがおすすめかな?」
「でもこれって舟子さんがいなかったら、私たち、またインスタント生活に戻る....っていうことを意味してるよね?」
「!?...それは遠慮したいです...舟子さん、ずっとこの家にいてください!!」
「あっ...はい」

奥でテレビを見ていたメリーと仕事で歌詞を書いていたスズカもテーブルに座るなり、舟子の凄さを思い知るのだった。
メリーは4年の間に身長が伸び、今では155センチメートル程で可愛らしくなり、スズカも芸能生活の中で美しさに磨きがかかり、4年前までの茶髪ではなく黒いショートボブになっている。
特にスズカは役作りでよく髪の色や長さが変わる。
ウィッグを多用することが多いため、彩斗も正直言って本当の髪型と色が分からない程だった。
しかし2人に限った話題ではなく、つい数カ月前までの彩斗、アイリス、メリー、スズカの4人だけで生活している時の荒んだ食生活は思い出すだけでも背筋が凍った。

実際、皆幸せだった。

彩斗はこの3人の友と共に一緒に生活できる、アイリスもメリーもスズカも憧れの想い人と生活できる、しかし食事の時間だけは顔がひきつっていた。



「じゃあいただきます!」

「「「「いただきます!」」」」


6人はスプーンを握り食べ始める。
辛さは甘口と中辛のブレンドといった感じで水をそこまで要求するような辛さではないためにサクサクと食べ進められる。
そんな中で皆、それぞれ今日あったことを話している。


「今日の撮影はTKタワーでだったんだけど、やっぱり高いところってコワイ...」
「ところで彩斗くん?今日はどうだった?」
「そうだね....学校も街もハロウィン気分だよ。学校の女の子たちがハロウィンパーティーを開くから来ないかって言ってくれたけど、返事をしたらいきなり断られた」
「?何で?」
「何人か友だちを連れて行ってもいい?って言ったら、男か女か聞かれて....」
「....なるほどね」
「え?なるほどって...ハロウィンパーティーって女の子禁制じゃないはずだし....だから、言おうと思っていたんだ。良かったら家でパーティー開かないかって。スバルや熱斗やみんなも呼んで」
「いいわね」
「賛成です!」
「うん、私も仕事早く切り上げて帰ってくるよ!」
「じゃあ、フライドチキンとかパーティー用の食べ物を用意しておきます」

話は何気ない話からハロウィンパーティーの話題に移っていく。
どんどん誰を呼ぶか、何を注文するか、仮装はどうするかなど具体的な話し合いが広がっていく。
だがそんな中でふとアイリスがずっと疑問に思っていたことを口にした。


「そういえば....彩斗くん?さっきサヤナちゃんを迎えに行った時、随分と遅かったけど、何かあった?」
「....いや、ちょっと色々あって」
「ラブホ探したりとか色々あったりねぇ」
「おい」
「!?ほんとなの!?彩斗くん!?」
「サヤナの冗談だよ」

サヤナの誂った発言に驚いたアイリスたちは彩斗を問い詰める。
だが彩斗はいつものローテンションのまま流す。
当のサヤナも「てへ♪」とでも言わんばかりに軽く自分の頭にげんこつするような仕草をしながら舌を出す。

「本当は彩斗のスターダスト・ロックマン誕生秘話を聞いてたの」

「え?」
「あの...事件のこと?」
「そういえば私も聞いたことなかったです。よかったら話してくださいよ、彩斗くん!」

いきなりアイリスとメリーが凍り付く。
スズカも何か言いかけたが口をふさぐ。
アイリスもメリーもスズカも当事者だ。
だからこそ知っている悲しい結末を思い出せば、どう反応するべきか分からなくなるのだ。
しかし舟子は全くその内容を知らないために好奇心旺盛な子供のようになる。
その中でスズカはようやく口を開いた。


「私も....まだ聞いてないこと、あったよね?あの『市民戦争』の後....何があったのか....どうして彩斗くんは1年間も姿を消したのか....」

「お!スズカも舟子も興味津々だねぇ...。次から次へと『市民戦争』とか『1年間失踪』とか新しい事実が聞こえてきますよぉぉ?というわけでサイト!続きプリーズ!!」

興味津々の2人を味方につけ、サヤナは彩斗に迫った。
もはや暴走特急もいいところだ。
知識欲に駆られ、全てを知るまで止まらない。
だが彩斗にはこれ以上、話す気など無かった。


「舟子さん!お風呂湧いてる!?」

「え?はい」


少々大きな声で舟子に声を掛け、逃げこむように風呂に向かった。
カレーは既に完食済みだ。
普段なら彩斗は自分以外が女性という家であることを気遣ってか、風呂は一番最後に入るというのに珍しい。
だがその行動はますますサヤナたちの知識欲に拍車をかけることとなった。



「さぁて、じゃあアイリスとメリーに聞こうかな?当事者みたいだし?」

「.....サヤナちゃん。いい?人には誰しも聞かれたくないことの1つや2つくらいあるのよ?」

「兄さんにとっては辛いことづくしの事件だったから....」
「...でも私は知りたい。サイトはきっと辛いことづくしだから隠してるわけじゃない。きっと...自分の痛みを誰かに共感させて苦しませたくないんだと思う...」
「え?」
「辛いことあったけど、今は笑顔で頑張ってるんだぜ?って無理してるみたいに思われて、下手に気を使わせたくないから話さない...そんな気がする」

サヤナは駄々をこねるかと思いきや、意外に真っ当な決意を持っていた。
アイリスとメリーはサヤナの目に嘘は無いことを悟る。
サヤナはコップの水を飲み干すと続けた。

「だから私はその痛みを少しでも背負ってあげたい。それはきっとスズカもシューコも同じだと思う」

スズカと舟子はそれを聞いて頷いた。
それと同時にスズカと舟子も水を飲み干す。

「...じゃあ...私が話します。いいですか、アイリスさん?」
「...分かった。でも絶対に彩斗くんには言わないこと。約束して」
「うん」
「分かったよ」
「分かりました」

メリーはアイリスの同意を得て、3人の意思を再確認するとテーブルの上のリモコンでテレビを消した。
そして深呼吸をしてから口を開いた。

「えっと...どこまで聞いたんですか?サヤナちゃん」
「えっとね...サイトが屋上でカッコイイセリフ言って、変身して、クインティアとジャックをボッコボコにして、もう誰もオレをとめらんねぇ!!ってなった辺りまで?」
「え?ボッコボコ?」
「とめらんねぇ?...え?」

サヤナのざっくりしつつも若干、ズレた説明に舟子とスズカはポカンとした。
だがアイリスとメリーはだいたい理解できていた。

「うん...なるほど。ディーラーから逃亡してプライムタウンに向かったところまでね」
「じゃあそこから。彩斗くん、いえスターダスト・ロックマンはプライムタウンに向かった。初めてウェーブロードを走る感覚に興奮を覚えながら。そしてそこで思い知ることになる。自分の心の根底にある憎悪、拭い去れない恐怖を...」

メリーとアイリスは語り始めた。
彼女たちの説明はまるで見ていたのではないかと思うまでに鮮明で生々しいものだった。
全くそれまでの話の流れが分からないスズカと舟子でもハッキリと光景が想像できてしまうほどに。
 
 

 
後書き
最後までお付き合いいただき有難うございました。

今回は新章の導入として一旦、現代に戻りました。
本編から4年後の平和な世界です。
ガールズトークに主軸を置きました。
サヤナは比較的、ギャグ要員の感じを織り交ぜていますw
次回からは再び過去編=本編に戻ります。

新生活に慣れるまで若干の時間がかかると思うので更新のペースはゆっくりですが、まっていていただけると嬉しいです! 
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